Monday, October 31, 2011

放射性テルルと放射性銀はしっかり東北、関東、中部にも降っていたことをお忘れなく

文部科学省が10月31日に発表した、福島第一原発から100キロ圏内の土壌中の放射性テルルと銀の濃度について、各社が11日1日付けのニュースで報じています。(リンクはNHKニュース)

6月から7月にかけて測定していたのを今更発表するまぬけさというか卑怯さはいったん措いておくとして、ここで忘れてならないのは、放射性テルル(テルル129m)、放射性銀(銀110m)は、3月の時点で東北関東と中部の一部の地域にまで広く降っていたことです。(もっとも発表されたのは8月近くになってからですが。)

「環境放射能水準調査結果(月間降下物平成23年3月分)」のデータを文部科学省がやけに静かに公表したのが7月29日午後2時。銀110mのシンボルは Ag-110m、テルル129mは Te-129m です。表を見ると、秋田、岩手、山形から長野、静岡まで、広い範囲で検出されています。


さて、最初にリンクしたNHKニュース、放射性テルルとセシウム137の割合に触れ、こう言っています。

『このうちテルルは、原発の北西方向や南方向に拡散していて、セシウム137との比率は原発からの距離に関係なく5分の1程度とほぼ一定でした。ただ、南方向の沿岸部では高くなる傾向があったということです。』

高くなる傾向どころか、実際高いのです。セシウム137との比率がNHKの言うとおり5分の1、つまり0.2だとすると、いわき市から茨城県北部に伸びる黄色、オレンジ色、赤色の点は、この比率が0.8以上(黄色)、1以上(うすいオレンジ)、2以上(濃いオレンジ)、3以上(赤色)の場所を示しています。つまり、テルル129がセシウム137の3倍あった場所がある、ということです。NHKも、『といううことです』、などと寝ぼけたことを言っていないで、文科省の発表を見れば分かります。(下の地図参照。)

群馬大の早川先生の放射性物質拡散ルートマップを見ると、3月15日午前の帯と重なる感じでしょうか。

テルル129mの半減期は約34日、銀110mの半減期は約250日。文科省は、セシウムの50年間積算実効線量よりはるかに低いため、セシウムの沈着量に注目すればよい、と言っています。

そう今更言われても、4月、5月に裸足、素手で田植え体験学習をした幼稚園児、保育園児、小学校児童が東北、関東に数多くおり、その子供たちはヨウ素、セシウム、ストロンチウム、テルル129m、銀110mの入った水田で体験学習をしてしまった可能性があるわけですね。しかも、放射性テルルとセシウム137がほぼ同量以上で沈着した地域は福島南部から首都圏まで延びる広い地域である可能性(早川ルートマップ3月15日午前ルート)も。半減期の比較的短いテルル129m、銀110m入りの田植え当時の土壌の放射線量は、現在よりよほど高かったことでしょう。

文科省の能書きによると(5ページ目):

『ヨウ素131、放射性セシウム、放射性ストロンチウム、プルトニウム以外の放射性核種の測定結果や放射性物質の移行調査の結果については、これまでも専門家の意見を踏まえて測定結果の妥当性の検証や成果の取りまとめ方等について検討を行っており、今後、検討結果を踏まえて、本調査の結果を集約した報告書を作成し、公表する予定である。』

とのことですので、これからも福島原発から放出した核種の調査結果が小出しに出てくるのでしょう。とき既に遅しとはよく言ったものです。放射性銀は、6月に保安院が発表した「大気中への放射性物質の放出量試算」の表には含まれていません。

(そういえばこの表に載っていない核種のなかには、ウラニウムがありますね。)

Sunday, October 30, 2011

京都大学: 全学連 対 復興のひかり

まずは京大の全学連

Youtubeですでにご覧になった方もいらっしゃると思いますが、10月1日、「京都大学原子炉実験所。放医研の御用学者、島田義也の講演会開催に対する、京大生らによる抗議行動」として、実験所の高橋千太郎教授に詰め寄って抗議する京大生。

関西弁はさすがド迫力。茶とらさん曰く、「さすが京大生、言葉はめちゃくちゃ怖いが理路整然としている。」


抗議の一部が『原発業界御用学者リストウィキ』に掲載されていましたので、転載しておきます。

ほんまにさ、いったいどれだけのことをしている人なん、彼はさ。
100mSvが安全だって言われているせいでな、何人の子どもたちが逃げれずにさぁ、今福島にいんの。
福島の子どもたちの45%が甲状腺被ばくしてるって言われてんのやで。なぁ。
甲状腺から放射性物質検出したって言われてるんやんか。せやろ。
高橋「ええ。あなたもしてるでしょうね、甲状腺被ばくは」
お前、また揚げ足取りするつもりか!
自然被曝あるって言いたいんやろ、お前。
揚げ足とりやろーがそれは!この情勢において、自然被ばくの話すんのは研究者なんか!
福島の子どもたちは自然被曝以上の被曝してへんのか!
自然被曝の話して何ごまかそうとしとんねん!ふざけんなよ!
いいかげんにせえよほんまに!原発事故の話しとんねんこっちは!
なんで自然被曝の話しとんのや。「あなたもしてますね」って。

あのね、科学者が人殺してんのや。ええかげんにせいや、はっきりせいや、そこんとこ。
島田義也のせいで逃げられへんねん。それが問題思うから俺ら来たんや。

高橋「だから申し上げているように、今回の講演は私どもとしては特段問題がないと思って…」
問題ないか見せてみいや。問題ないんやったら入れろや。問題ないって言ってるだけやんけ。
問題あると思ってる人間が見るから問題があるかどうかわかるんやろうが。
問題ないとハナから思ってる奴が見たって問題ないと思うやろう。

一般の人にな、京都大学の原子炉から放射線の権威呼んできて、放射線について話させますと。
一般の人はようわからんから、学者がね、権威持って、教えますと。
そういうことやっとるわけやろ?その権威を使って、今福島の子どもたち被曝させとるわけやろ?
その権威を俺ら問題にしているわけやん。その権威を使う以上権威に責任があるやろ
っつってるわけや。京大原子炉をつかっとるんやろ。

お前、大阪の自治体今避難者に対して出てけ、言うとるやん。公営住宅から出てけ言うとるやん。
理由わかるか?「安全やから」言うとんのや。「放射能は大したことない、もう大丈夫や」
「避難区域も解除されました。だから大丈夫です」言うてんねん。
それで島田支持してるやん。それが正しいと思っとるんや、お前は。
正しいんか。職もない、帰ったら放射能被曝する、計画的避難準備区域の外側で500ベクレルの
米出て、出荷停止になってるやんけ。生活できへんやん。なんで戻らなあかんねん福島に。
しかも子どもやぞ。
この講演会で言われてることが、避難者が、福島に帰れって言われてる根拠になってんねん。
お前それでええんかい。ええんかどうか聞かしてくれ、ぜひ。
開催したんやから、内容に責任持てよ。その社会的影響に責任持てよ。
そんなん知らん、言わさんぞ。

ああ痛快。

一方、京大にも、『復興のひかり』なるNPOの支部というのでしょうか、学園祭で福島の野菜を使って学園祭の参加者に食べてもらい、福島の復興を応援しよう、という活動を行っています。

朝日新聞の10月30日付け記事より:

東京電力福島第一原発事故の風評被害に苦しむ福島県の農家を応援しようと、大学の学園祭で同県産の野菜や果物を使う取り組みが広がっている。首都圏の大学生が、福島のJAと全国の学生をつなぎ、各地の学園祭で来場者に福島の野菜をPRしてもらう。復興に役立とうと若者たちが手を結んだ。

 22日、「工大祭」があった東京工業大学大岡山キャンパス(東京都目黒区)。模擬店で学生たちが「福島の野菜で作った豚汁です」と声をあげると、訪れた人が早速買い求めた。

 複数の大学の学生でつくるグループ「復興のひかり」が企画した「福島復興学祭プロジェクト」。初日のこの日はメンバーら7人が、福島産のゴボウやサトイモを使った豚汁とリンゴや柿などを販売した。ブースには「この店舗は福島県の野菜を使っています 私たちは福島県の農家の方を応援します」の文字。食べた人たちの笑顔を写真に収め、はがきやポスターにして福島の農家に送る計画もある。

 プロジェクトでは、「ひかり」が各店で必要な品を一括してJA新ふくしま(福島市)に発注。検査で安全性が確認されているものをJAが各大学に宅配便で送り、模擬店で売る食べ物の材料に使ったり販売したりする。いずれも29、30両日の福島大、石川県立大学、11月3~5日の東北大、同23~26日の京都大など約20の学園祭の約30店がすでに参加を決めた。

英語で言うと、”Do-gooder”。「良かれと思って物事を行うんだけども...」といった感触で、「...」の所に含んだ意味を汲み取っていただこう、という言葉です。福島JAの検査を丸ごと信じるところなど、ナイーブな学生さんです。

全学連1、復興のひかり0。

Friday, October 28, 2011

コープふくしまの除染ボランティア募集要綱: 普通の作業服、昼食、水持参、ボランティア保険加入、交通費交通手段自己負担

福島市大波地区、ボランティア110人と住民による除染、という記事が読売に載っています。他の新聞、メディアにも載っています。

福島市大波地区は、8月に市が除染モデル地区としていわゆる「除染」(またはお掃除)を行った場所です。除染後の線量はほとんど下がらず、5箇所で除染前より線量が上がった、というポストは9月25日付けでお出ししました。

そのときの除染は市が委託した業者が行いましたが、今回の除染は業者が高圧洗浄機で屋根と壁に水をかけてから、全国から集まったボランティアと住民が土を入れ替えたり草をむしったり落ち葉を拾ったりするそうです。

要するにお金でしょう。全部業者に任せると費用が莫大なものになるので、ボランティアと住民にやらせよう、という。

読売新聞に出ている写真を見る限り、この「除染」風景は伊達市で7月に行われた市民ボランティアによるモデル除染と、作業といい装備といい、まったく変わらないように思えます。まるで被曝するためのような作業風景。

7月の伊達市の除染をまとめたのは福島県の生協コープふくしま。コープふくしまは放射能除染ボランティアを急募しています。どうもここで福島での除染ボランティアのとりまとめを行っているようで、ボランティアをここでまとめて各自治体のニーズに合わせて派遣する、と言う形をとっているようです。

ボランティアの登録画面をみてみると、そこには

住所、電話番号、氏名、性別、放射線測定経験の有無

以外に記載事項はありません。年齢、病歴なども記載する欄はなし。

また、ボランティアの皆さんにお願いすること、として、

◆服装など
  • 普通の作業服や運動着で結構です(防護服は不要です)。
  • 長靴を用意できる方は持参してください。
  • 日差しが強いので日除けの帽子、汗ふきタオル、飲料水など、熱中症対策をして下さい。
◆各自に持参していただきたい道具等
  • 軍手やゴム手袋(家庭用のもので十分です)
  • 防塵マスクは軽作業用のものがよいが、普通の花粉対策マスクでも十分である。使い捨てできるようにそれぞれ数組用意してください。
  • 作業後の汚れ物を収納するビニール袋などを持参してください。
  • 絆創膏、塗り薬、消毒液、虫除けの予防薬など。
◆昼食等
  • 近くにはコンビニがありませんので、昼食や飲料水等は各自で用意してください。
◆放射線測定器等
  • 直読式の個人線量計などをもっている方は、持参して測定してみてください。
  • 放射線主任者等の専門家は、可能であればNaI線量計やGM計数管を持参して作業の支援や指導にご協力下さい。
<ボランティア保険へ加入のお願い>
ボランティア活動中の様々な事故によるケガや損害賠償責任を保障する保険があります。活動場所と自宅の往復途上の事故も補償の対象となります。ボランティア自身の食中毒や特定感染症、熱中症も補償されます。
居住地等の社会福祉協議会で「ボランティア保険(天災付)」に加入いただきますようお願いいたします(自己負担が原則です)。災害復旧作業に尽力している被災地の負担を少しでも軽減させるため、ご理解とご協力をお願いいたします。

つまり、一切合財負担は昼食から保険の果てまでボランティア側の負担。また、放射線被曝の危険性について注意を喚起するような記載はどこにもありません。ただ一言、

「なお、具体的作業の安全確保に関しては、NPO放射線安全フォーラムが全体管理を行いますので安心してご参加いただけます。」

何が全体管理で、どこが安心なのか、さっぱり分かりません。フォーラムの田中俊一氏(元原子力委員会委員長代理)の要請文を見ても、さっぱり分かりません。要請文の最後の2段落:

ボランテイアの皆様には、地域の皆様と協力して除染作業を行なっていただくことにしており、ボランテイア作業を通して高い放射線環境の中で生活を余儀なくされている住民の実態を体感し、様々な風評被害に苦しんでいる状況を理解することで、大きな支援になっていただけることも期待しております。

  放射能除染作業の安全管理には当NPOが責任をもつこととしますので、安心して放射能除染ボランテイアにご参加いただくことを心からお願いいたします。

なんだか、住民と一緒になって高い放射線下で被曝してみろ、と言っているような気がするんですが、気のせいですね。安全管理にどのように責任を負われるのかわかりませんが、ボランティアが作業中に急性放射線被曝で倒れない限り責任はないのでしょう。

ボランティアの方々は福島の人たちの手助けが出来た、と喜び、地域の人々もいかにも「除染」した気になり、市と県は余計なお金を使わなくてすむ。すべてハッピーで丸く収まる、というわけ。

むなしい気分です。

Thursday, October 27, 2011

食品安全委員会の答申「生涯累積被曝量100ミリシーベルト」のいいかげんさ

内閣府の食品安全委員会が、食品に含まれる放射性物質からの内部被曝の生涯累積線量を100ミリシーベルトとする答申を正式に提出したニュースはご存知かと思います。(まだの方は、読売新聞10月27日付け記事ご参考。)

メディアは、これで暫定基準値が大幅に引き下げられ厳しい基準値になる、と報道しています。とくに読売などは、セシウムの暫定基準値が年間5ミリシーベルトの内部被曝を前提にした値だ、と(おそらく新聞としては初めて)認めています。(ちなみにヨウ素の暫定基準値は2ミリシーベルト被曝を前提です。このブログの読者の方々はご存知でしたよね。念のため、4月25日ポストご参照。)

福島事故前の日本では、食品からの自然内部被曝(主にカリウム40)は年間平均0.41ミリシーベルトでした。今回の食品安全委員会の答申は、この自然内部被曝に付け加えての数字です。しかも、自然内部被曝の半分を占めていたラドンの吸引による自然内部被曝年間0.45ミリシーベルトに付け加えて、原発から出た放射性物質の吸引はまったく考慮に入れていません。(日本の平均放射線被曝量については、9月4日のポスト『日本の人工放射線被曝、世界平均の5倍以上』をご参照。)

従来の食品(カリウム40)、ラドン吸引からの自然内部被曝はそのまま、それプラス年間ベースで1ミリシーベルト以上、しかも外部被曝、医療被曝は考慮に入れていない、となると、年間で

従来の自然被曝: 1.45ミリシーベルト(日本平均)
人工被曝(食品のみ): 1.43ミリシーベルト(今回の答申による限度; 70年の余命として計算)
人工被曝(福島原発事故由来の放射性物質吸引): ???
人工被曝(福島原発由来の放射性物質からの外部被曝): ???
医療などの人工被曝: 2.35ミリシーベルト(日本平均;世界平均の5倍以上、工業国平均の2倍近く。法律で決められた限度は現在ではまだ年間1ミリシーベルトです)

限度まで食品からの被曝をする、と仮定すると、今回推定すらされていない吸引による内部被曝、追加の外部被曝を加えた年間の被曝は、結構大変な数字になりそうです。

福島原発由来の放射性物質による外部被曝、吸引による内部被曝の推定値すら出さず、食品だけで生涯100ミリシーベルトまでOK、というのは、無責任、としか言いようがありません。

加えて更に無責任なことに、子供は放射能の影響を受けやすい「可能性」がある、としながらも、子供の被曝量については触れず、厚生労働省などの政府機関が検討すべきこと、と逃げています(読売新聞)。

食品安全委員会は、答申の考え方、根拠をまとめた1ページの資料を出しています。

これをベースにした答申で、食品からだけで生涯100ミリシーベルト(非常時、平常時共通)の被曝までOKになるわけです。

資料を見た私の疑問:

  • インドの高線量地帯にずっと住んでいる人々に発ガンリスクの増加なし

いったいどこと比べて増加なしなんでしょうか?インドの他の地域?それとも、同じ場所の経年比較?ずっと住んでいる人々の経年比較しても意味が無いので前者だとは思いますが、そうだとしても、「だからどうした」が私の反論。ガンにさえかからなければOKなのでしょうか?また、この地域の人の平均寿命はどれくらいなのか、ガン以外の病気はどのように発生しているのか、一切情報なしで、ただ高線量地帯にすむ外国人に発ガンリスクが増加していない、といわれて、ああそうですか、と安心する人はよほど情報が無い日本人です。

  • 100ミリシーベルトで統計的に有意な[がんによる死亡リスク]増加は見られない(原爆被ばく者)(左下の図)

ここでもがんだけが考慮に挙がっています。また、統計的に、と言いますが、原発事故から発生した放射性物質の中で生活を続ける中での健康への被害が統計的に捕らえられたのはチェルノブイリ事故後の調査でしょう。原発ではなく。

更に、この図は生涯全被曝量であるはずです。委員会の答申は食品による人工内部被曝のみ。この図をみると、委員会の答申の100ミリシーベルトがいかにも害がなさそうに思えますが、食品からの内部被曝だけで100ミリということは、ほかを付け加えたら生涯全被曝量はインドの高線量地帯をおそらく越えるでしょう。

  • 100ミリシーベルト未満の健康影響について言及することは現在得られている知見からは困難

専門家が投げ出したら一般人はお手上げ。もう専門家に頼る必要はないと言うことですね。頼りようがないですから。健康影響がある、と言ったら各方面にまずいけれども、健康影響がない、と言って万が一影響があった、となると将来問題になるから逃げる、という姿勢でしょうか。それは政治家の姿勢であって科学者ではない気がするのです。

ちなみに、食品安全委員会のメンバーはこの方々。常勤4名、非常勤3名、合計7名の方々による答申が、新たな日本の法律になります。

インドの累積被曝量500ミリシーベルトを何気なく出していることを見ると、委員会のメンバーの方々も、人工内部被曝、人工外部被曝、自然被曝、医療被曝、全部合算した数字はこれに近いのではないか、と潜在的に思っていらっしゃるのかもしれません。(だったらそうはっきり言うのが科学者ではないかとは思いますが。)

Wednesday, October 26, 2011

英ネイチャー誌記事日本語私訳:ノルウェー研究、『福島第1原発放出のセシウム137は日本政府発表の2倍以上、地震直後キセノン放出』

ノルウェー大気研究所の研究者の発表した研究論文をネイチャー誌がまとめています。この研究所の公開した放射性物質拡散予測は、日本政府からの情報がほとんど無かった福島第1原発事故の初期に多くの日本人が参考にしました。

記事の中で、日本政府の数字が低い理由の一つとして、政府の推定値は国内に降下した放射性物質のみを計算に入れた値であることを挙げています。

セシウム137の放出量(推定値)は、

日本政府: 1.5×10^16ベクレル
新研究:  3.5×10^16ベクレル 

と、2倍以上になっています。福島原発由来のセシウムは134と137がほぼ同等存在するため、セシウム134の値もおそらく2倍、そのほかの核種も2倍出ているのではないかと、私の素人考え。

(となると、原発事故で大気中に放出された放射性物質はヨウ素131換算で77万テラベクレル、レベル7、というこれまでの日本政府の評価ですが、この新しい研究によってレベル7には変わりありませんが放出量がぐっとチェルノブイリレベルに近づきますね。汚染水、汚染水処理後の高放射能汚泥となって福島第1原発に毎日溜まり続けている放射性物質は、6月の汚染水処理を始める前の時点で72万テラベクレル、それもヨウ素131換算しないで単にヨウ素とセシウムを合算した状態の数字です。それも含めると...)

キセノン133(希ガス)の放出量も日本政府発表の1.5倍で、チェルノブイリ事故のレベルを超えます。更に重要なのは、キセノン133の漏洩が津波が来る以前に既に始まっている、としていることでしょう。地震で原子炉が既に損傷されていた証拠となるからです。

また、4号機の使用済み燃料プールから放出されたと見られる放射性セシウムの量が予想以上に大きかったことなども研究者の方々は挙げています。4号機の燃料プールは東電のビデオで見る限り損傷がほとんどなさそうで、また4号機上階のオペレーションフロアは他の原子炉建屋に比べて線量も低く、実際に大量の放射性物質が使用済み燃料プールから放出されたとするとこれは謎です。

Atmospheric Chemistry and Physicsにオープン・ピアレビューとして掲載されている研究論文の原文はこちら

以下、ネイチャー誌記事全訳(私訳)。(H/T東京茶とら猫

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オンライン版Nature(Nature 478, 435-436 (2011))
2011年10月25日

新研究が放射性物質の放出量を上方修正
福島原発に関する世界のデータが日本政府の推定値に疑問を投げかける

記事:ジェフ・ブラムフィール

3月に起きた福島第一原子力発電所の大事故からは、日本政府の発表よりはるかに多量の放射性物質が放出されていた。そう結論付けるのは、世界中のデータをつなぎ合わせて破壊された原発からの放出物がどれくらいの範囲にどのように広がったのかを推定した、ある研究[注1:Stohl, A. et al.
Atmos. Chem. Phys. Discuss. 11, 28319-28394 (2011)
]である。

この研究はまた、日本政府の主張とは裏腹に、セシウム137が放出されるうえで使用済み核燃料プールが大きな役割を果たしたことを示唆している。これは早急に手を打てば防ぐことのできた問題だ。セシウム137は半減期が長く、環境を汚染する。この研究論文は『Atmospheric Chemistry and Physics(大気化学物理学)』誌のオンライン版に掲載され、現在オープン・ピアレビュー(論文に対して誰もが公開でレビューをつけられるシステム)を受けている。

この研究を率いたのは、ノルウェーのシェラーにあるノルウェー大気研究所の大気科学者、アンドレアス・ストール(Andreas Stohl)。ストールによれば、この分析は福島第一原発から放出された放射性物質の量をこれまでで最も総合的に把握しようとしたものである。ストックホルムのスウェーデン防衛研究所で大気モデルを作成しているラーシュエリク・ドゥイェールは、ストールの研究にはかかわっていないものの、「この研究はきわめて価値ある貢献だ」と語った。

放出過程を再現するには、日本国内および世界中に何十とある放射線モニタリングステーションのデータが必要だ。モニタリングステーションの多くは、ウィーンの包括的核実験禁止条約機関が核実験を監視するために構築した世界的ネットワークの一部として設置されている。今回の研究では、それ以外にカナダ、日本、ヨーロッパにある独立ステーションのデータも加え、それを欧米が保管している膨大な量の世界の気象データと組み合わせた。

こうしてできたモデルだが、完璧とは程遠いので注意してほしいとストールは言う。事故直後は計測データが少なかったうえ、一部のモニタリングポストは放射能に汚染されすぎたためにデータの信頼性に欠ける。それ以上に問題なのは、原子炉内で具体的に何が起きたのかという、放出物を把握するうえで不可欠な情報がいまだ明らかになっておらず、今後も謎のままで終わる可能性があることだ。「チェルノブイリ原発事故のときの推定値も同じで、25年たった今でも不明な部分が多々ある」とストールは語る。

それでも、ストールたちの研究からは福島の事故の広範囲な影響が概観できる。「彼らは本当に世界規模の視点から事故を眺め、手に入るあらゆるデータを利用した」とドゥイェールは語る。

疑問を投げかける数字

すでに日本の研究者は、3月11日の地震から原発事故に至るまでの一連の流れを詳細な時刻付きで再現している。福島第一原発の6基の原子炉が地震で激しく揺れてから数時間後、津波が到着し、緊急時に原子炉を冷やすうえでなくてはならない補助ディーゼル発電機を破壊した。事故当時に運転されていた3基の原子炉は、数日のうちに過熱して水素ガスを発生させ、それが大爆発につながった。4
号機では数ヶ月前に原子炉から燃料が取り出されていて、地震時には使用済み燃料プールに保管されていたが、3月14日にプールが過熱し、その後数日にわたって建屋内に火災を起こしたたと見られる。

しかし、原発から放出された放射性物質の量を明らかにするのは、出来事の一連の流れを再現するよりはるかに難しいことがわかった。6月に発表された日本政府の最新の報告書によると、原発からは1.5×10^16ベクレルのセシウム137が放出したとされている。セシウム137は半減期が30年の同位体で、原発事故による長期的な汚染はほとんどこのセシウム137が原因となる[注2:www.kantei.go.
jp/foreign/kan/topics/201106/iaeahoukokushoe.html
]。キセノン133については、それよりはるかに大量の1.1×10^19ベクレルが放出されたというのが政府の公式な推定値だ。

今回の新しい研究はこれらの数字に疑問を投げかける。研究チームが独自のモデルで推定したところ、事故によって放出されたキセノン133は約1.7×10^19ベクレルとなり、チェルノブイリ事故で放出された合計推定値1.4×10^19を上回る。福島で膨大な量のキセノンが放出されたのは、3基の原子炉が爆発したためだとドゥイェールは説明する。

キセノン133は人体や環境に吸収されないので、健康への重大な脅威とはならない。しかし、セシウム137の降下物は環境に数十年間留まり続けるので非常に厄介である。ストールが発表した新しいモデルは、福島から放出されたセシウム137が3.5×10^16ベクレルであることを示している。これは日本政府の公式推定値のほぼ2倍、チェルノブイリの場合の2分の1である。住民への健康リスクを正確に見極めるには現在進行中の地表面測定の結果を待つしかないが、放出量が多ければ多いほど明らかに心配だとドゥイェールは指摘する。

なぜ今回の研究と日本政府の発表が大きく食い違っているのか。理由のひとつは、使用したデータの量が今回のほうが多いからだとストールは考えている。日本政府の推定値はおもに日本国内のモニタリングポストからのデータをもとにしたものだ[注3:Chino, M. et al. J. Nucl. Sci. Technol. 48, 1129-1134(2011)]。したがって、太平洋を越えて最終的には北米やヨーロッパに達した大量の放射性物質はいっさい記録されていない。「太平洋上に流れ出た放射性物質も考慮に入れなければ、事故の規模と特徴を正確に把握することはできない」と神戸大学の放射線物理学者で福島県内の土壌の放射能汚染を測定している山内知也は語る。

日本の公式推定値がこのようになったことにストールは理解を示す。「彼らは短期間で何かを出したかったのだ」。やはり福島原発からの放射性物質の飛散モデルを作成している群馬大学の火山学者、早川由紀夫はこう指摘する。「両者の隔たりは大きいように見えるが、どちらにも不確定要素があることを思えば、2つの推定値は実際はかなり近いと言っていい」。

新しい分析は、4号機のプールに保管されていた使用済み燃料から大量のセシウム137が放出されたとしている。日本の原子力当局は、燃料プールからは放射能がほとんど漏れていないと主張してきた。しかしストールのモデルを見ると、燃料プールへの放水によってセシウム137の放出量が目に見えて下がったことがわかる(【図2】参照)。だとすれば、燃料プールへの放水をもっと早い段階で行なっていれば放射性降下物の量をかなり減らせた可能性がある。

日本の原子力当局は、4号機の使用済み燃料は重大な汚染源ではなかったと今も主張している。プール自体に大きな損傷を受けた様子がないからだ。茨城県にある日本原子力研究開発機構の科学者、茅野政道はこう語る。「4号機からの放出はたいした量ではないと思う」。茅野は政府の公式推定値を定める作業にかかわった。しかしドゥイェールは、燃料プールの関与を示唆する今回の新分析には「説得力があるように思える」と言う。

新分析はまた、津波が来る前の地震の直後にキセノン133の放出が起きていたことを明確に示している。つまり、津波で破壊されなくても、地震の揺れだけで原発が損傷するには十分だったことがうかがえる。

日本政府は、揺れの強さが福島第一原発の耐震設計を上回るものだったことをすでに報告書で認めている。反原発の活動家が以前から懸念していたのは、日本政府が原発を認可する際に地質災害に関する審査を十分に行なってこなかった点だ(Nature 448, 392-393; 2007参照)。このキセノンの一件は、原子炉の安全審査のあり方を大幅に見直すきっかけになるかもしれない、と山内は指摘する。

ストールのモデルからもうひとつわかるのは、この事故によって東京都民がもっと壊滅的な被害を受ける可能性が十分にあったということだ。事故後数日は風が海に向かって吹いていたが、3月14日の午後には風向きが変わって陸に向かって吹き始めたために、セシウム137の放射能の雲が戻ってきて日本の広い範囲にかかった(【図3】参照)。雨が降った地域のうち、本州の中央を走る山脈に沿った地域と原発の北西部では、のちに土壌から高レベルの放射能が検出されている。幸い、首都東京とその他の人口密集地域では雨が降らなかった。「かなり高レベルの放射能が東京の上空にかかった時期もあったが、雨が降らなかった」とストールは言う。「そうでなければ事態ははるかに悲惨なことになっていたかもしれない」


【図1】

福島の原発事故により、南相馬など近隣の町では大勢の住民が避難した。

【図2】
放射能危機
福島の原発事故後1週間の放出量推定モデル。
原子炉と使用済み燃料プールから大量の放射性同位体が爆発的に放出されたことがわかる。

(グラフ内)
1号機爆発
3号機爆発
2号機爆発
4号機火災
4号機の使用済み燃料プールに放水

(縦軸)
セシウム137の推定放出量
(単位:ギガベクレル s^-1対数スケール)

(横軸)
3月10日
3月17日
3月24日

【図3】
放射性同位体飛散状況の再現
3月11日に巨大地震と津波が日本を襲ったあと、福島第一原発の3基の原子炉が爆発し、4号機が火災を起こした。放射性同位体が原発からどのように流れ出て日本に広がったかをモデルで再現する。

3月12日から15日までのあいだに3基の原子炉が爆発したが、爆発の前にすでに放射能漏れが起きていた可能性がある。

3月11日から14日にかけては風が放射能の大半を太平洋側に吹き飛ばした。

3月15日に天候が変化して放射性同位体が内陸に戻り、東京上空にかかった。

本州の中央を走る山脈に沿って雨が降り、空中測定からわかるように汚染地域が線状に連なった。

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Monday, October 24, 2011

必読:輸出できない高放射能汚染中古車、日本国内に出回っている?

Savechild.netのウサギ1号さんの記事の中に、10月24日付け朝日新聞紙面(34面)の記事の一部が書き起こしてありました。

このブログでも、柏市にあった車を売ろうとしたディーラーがガソリンスタンドでの「除染」(洗車)にもかかわらず線量が下がらず苦労している、というポストを以前に出しましたが、朝日新聞の中古車の線量はなんと110マイクロシーベルト時。何度洗車してもやっと30マイクロシーベルト時までしか下がらず、結局、

輸出できなかったので、何とプレートを外して国内に流したのだそうです。

30マイクロシーベルト時も出る車に1日2時間乗ったら、1年で22ミリシーベルトの外部被曝。110マイクロシーベルト時のままだったら、1日2時間乗って1年で80ミリシーベルト。(これをまったく安全と言いきれるのは、あのオクスフォードの名誉教授ぐらいか。)

以下、朝日新聞10月24日記事掲載(Savechild.netより):

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基準越え輸出できず

高い放射線量の中古車が、全国を転々としている。うわさの車を追った。中古車業者の間で広まっている、ある情報を耳にした。高い放射線量で輸出できなかった中古車が、国内で流通しているという。その車の車体番号を聞き出し、運輸支局で記録を調べた。直近の所有者は、岡山県内の輸出業者だった。その会社を訪ねた。うわさの車、「いわきナンバー」のミニバンを購入したのは7月下旬。業者が車を売買する千葉県のオークション会場で143万円だった。

東南アジアに輸出するため大阪府に運び、8月に港で放射線検査をすると、国が定めた輸出コンテナの通報基準値(毎時5マイクロシーベルト)を超える毎時110マイクロシーベルトを検出した。「検査後は何度も除染して測定したが30マイクロシーベルトまでしか下がらなかった」と業者。その後どうしたのか。「国内で売ることにしたんです。うちも損するわけにはいかないですから」運輸支局で一時抹消登録をしてナンバープレートを外し、9月に大阪市内のオークションに出品したが売れず。翌週、神戸市内のオークションで121万円で売れた。

その後、関西周辺の業者の間で「手を出してはいけない車」(別の業者)として、車体番号がマークされるようになった。かりに毎時30マイクロシーベルトを1日2時間浴びたら、年間被爆線量は国が避難を促す目安の年間20ミリシーベルトを超える。

どこで汚染されたのだろう。記録を調べると、最初の所有者として福島県の自動車販売会社の名前が出てきた。東京電力福島第一原発から40キロ離れたいわき市にある、この会社の販売店が取り扱った車だという。店長に話しを聞いた。「いわき市内の男性が3年前に購入し、震災当時は仕事で原発近くに駐車していたと聞いた。男性は7月にローンの残金を払って、別の中古車業者に売ったらしい」今、この車はどこにあるのか。今月上旬、埼玉県内のオークションに出品されたが売れず、翌週、千葉県内で落札されたのが目撃されていた。オークション会社に落札業者を聞くと、「規則上、回答できない」と断られた。それを最後に、手がかりは途絶えた。

ナンバー外し 再登録・販売

輸出できない車が国内で流通していることについて、ある輸出業者は「氷山の一角」と断言する。「高い線量が出ると除染が大変なので、規制のない国内のオークションで売りに出す」こうした車を購入した業者がナンバーを再登録すれば、他地域のナンバーが店頭に並ぶ。過去のナンバーは車検証に記載されず、運輸支局で詳細記録を調べない限り分からない。

中古車輸出の規制はより厳しくなり、国内市場に舞い戻る車はさらに増えるという。8月以降、全国の港湾で全大検査が決められ、0.3マイクロシーベルト以上の車は貨物船に積めなくなった。日本湾運協会(東京)によると、全国で9月に基準値を超えたのは輸出社全体の約1%にあたる660台だった。

福島県内では中古車の安全確保の動きがある。福島市でオークション会場を運営する「JU福島」は全車の放射線量を検査し、毎時1マイクロシーベルトを超える車の出品を断っている。高い線量が検出されなくても福島県ナンバーが避けられる「風評被害」もある。福島市の中古車業者は「福島、いわきナンバーは県外で売れないので、車検期間が残っていてもナンバーを外し、関東に出品している」と明かす。

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うーん。関東に出せば売れるから売るんですか。

Savechild.netの記事には、高放射線が検出された中古車関連の記事へのリンクなどもまとめられています。

ドイツWDR(西ドイツ放送局)、Weltweitの番組:「死の地域に生きる」

Sievert311さんアップの、西ドイツ放送局(Westdeutscher Rundfunk)の番組のビデオです。

南相馬市に住み続ける人々とその人々を支えるボランティアを追ったドキュメンタリー。

個人的には、ここまでして住むようなところではない気がします。危険を承知して住んでいる、と言うよりは、危険が無いという行政の言葉を頼って住んでいる、という感が。また、行政も「安心」のイメージを住民に売り込むべく、ホールボディカウンター、「除染」などの事業を行っているような。

書き起こしがこのサイトにあります。そこから大いに気になったところを抜粋:

いずれにせよ、福島産の食品は南相馬よりも他県での方が売れると店主は言う。
「福島から遠い所の人ほど、あまり深く考えていません。
東京では福島産の食品はよく売れます。
福島を応援しようと言うのです。
ここではみんな放射能の恐ろしさをよく知っていますから、福島産の食品を買うお客さんはほとんどいません。」

南相馬の週末
町はロックコンサートを催した。
人々が毎日の不安を忘れ、楽しめるように。
短い間でも

「いつも家にばかりいて、他の人に会うことがほとんどありません。
すごく楽しいです。」
南相馬の市長も参加して、
市民を守る約束をした
しかしどうやって? 三浦万尚さんは懐疑的だ。

「市長は人々の味方のように振舞っていますが、何も行いません。
子供達の検査もひどいものです。もっと正確に行わなければいけません。
ここでは誰もマスクをしていません。何も問題がないかのように見せたいからです。」

三浦さんはマスクを配った。人々に危険を教える義務を感じているのだ。
しかし主催者にパニックをふりまくなと抗議される。せっかくの晴れた楽しい日なのに…

そして、

羽田さんは絶望している。

繰り返し家の除染を試みてきた。
屋根も洗ったし、庭の土も取り除いた。
木の幹まで洗って、線量は数週間下がっていたが、
再び上がり始めたのだ。

何故逃げないかって? 私の家族は千年もここに住み続けて来ました。
「逃げるわけにいきません。死ぬまでここに留まらねれば…」
「やるせないです。ここの人々は土地との精神的な絆が深いのです。
早く逃げなければいけないのに逃げられないジレンマがあるのですね。」

国敗れて山河も破れ(放射能汚染)、残っているのは「人」だけなのだと思いますが、その破れた「山河」に固執して、その後に残るのは、何でしょうか?

(ああ忘れるところでした。年間1.2シーベルトの被曝でもまったく安全、という学者の方もいらっしゃるのでしたね。)

ビデオで、ドイツ語ナレーションのの日本語翻訳は合っているように思いますが、ところどころ、ビデオ中の人物の発言のドイツ語の翻訳が発言内容と必ずしも合っていない箇所が見受けられます。ドイツ放送局の意図はまあ分かりますが、発言内容を素直にまとめてくれても効果は同じだったろうにと思います。(もっとも、私のドイツ語は初級のZDが取れた程度ですから、単なる勘違いかも知れませんね。)


Saturday, October 22, 2011

オクスフォード大学ウェード・アリソン名誉教授「年間被曝限度1.2シーベルトでも安全」(外国特派員協会講演資料日本語私訳)

ミリじゃないですよ、みなさん。1.2シーベルト(1200ミリシーベルト、1200000マイクロシーベルト)の被曝でもまったく大丈夫、とおっしゃるのは、オクスフォード大学名誉教授(粒子物理学専門)のウェード・アリソン博士。

先日(10月3日)東京の日本外国特派員協会での教授の講演資料が、米国商工会議所のサイトに上がっています。ざっと翻訳してみましたのでご参考になさってください。厚生労働省放射線審議会の年間人工被曝許容量20ミリシーベルトに引き上げ勧告、なんて目じゃありません。アリソン教授の提案で行くと、6日で20ミリシーベルトの被曝をしてもまったくOK、と言うことになります。

教授は福島でチェルノブイリの教訓が生かされていない、とし、その例として、次のようにおっしゃっています。(スライド12ページ):

避難すること(および放射線による健康被害のリスクがあると住民に知らせること)のほうが、放射線自体よりはるかに大きな害を住民の健康に及ぼす[国連(2011年)およびIAEA(2006年)の報告書]。福島ではこの報告書が読まれていないのだろうか? 教訓が生かされず、過ちが繰り返されている。

しかしなんといっても驚くのは17ページ目。博士が提案するのは、「比較的安全な最大レベル」の被曝量の設定。その数字は、

1回の被ばく限度 100mSv
1か月の被ばく限度 100mSv
生涯の被ばく限度 5,000mSV

これに続けて、年間で現行の1ミリシーベルトの1000倍以上(1200倍ですね)の緩和を提案。月100ミリシーベルトx12で1200ミリシーベルト、つまり1.2シーベルトとなります。生涯で5シーベルト、とおっしゃっていますから、この1.2ミリシーベルト年間被曝はおそらく緊急の数字だとはお考えなのだと思います。

また、放射線審議会が例に出した「ノルウェーのトナカイの肉」を教授も例に出して、食品基準を大幅に引き上げることを勧めています。教授の講演(10月3日)は、放射線審議会が被曝許容量の見直しを言い出した日に先立つことわずか3日

教授の主張は、ガンの治療などで使われる大量の放射線をベースにしているようです。あれだけ浴びても大丈夫なのだから、と言うことらしいですが、茶とらさんも私も、読んでいて脳細胞が機能停止したため間違いがあるかもしれませんので、コメント欄でご指摘ください。

元の英語のプレゼン資料はこちら。http://www.radiationandreason.com/uploads/FCCJ_ALLISON_100311_FINAL.pdf

以下、プレゼン資料全ページ日本語私訳。(H/T東京茶とら猫

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p.1
放射能と理性
福島とその後

2011年10月3日
日本外国特派員協会(東京)にて
講演者:
オックスフォード大学 ウェード・アリソン教授
アイダホ大学 徳弘明教授


p.2
ウェード・アリソン
英国オックスフォード大学、物理学名誉教授
核物理学者および医学物理学者(原子力産業との関係はなし)
http://en.wikipedia.org/wiki/Wade_Allison
ウェブサイト: http://www.radiationandreason.com
メールアドレス: w.allison@physics.ox.ac.uk


p.3
説明項目

1.低線量から中線量の放射線には害がない。

2.放射能を恐れることが個人にはストレスを、社会には損害をもたらし、そのことが大きな弊害を生む。

3.現行の食品基準値は科学的に見て合理性を欠き、チェルノブイリのときと同様に住民を苦しめている。

4.現行の避難基準値は科学的に見て合理性を欠き、チェルノブイリのときと同様に住民を苦しめている。

5.達成可能なレベルまで被ばく量を低減するという考え方に基づく国際「安全」基準は、大幅に緩和する必要がある。

6.放射能にまつわる誤解が生じたのは、冷戦時代に世間が騒ぎ立てたことに原因がある。

詳細は右サイト参照:http://www.radiationandreason.com


p.4
放射能への恐怖

根拠:
1.核兵器による大破壊、ホロコーストが起きたあとを恐れる気持ち。この冷戦時代のメッセージはまんまと当時の人々を震え上がらせた。

2.我々は放射線を感じることはできない。だが体の細胞は放射線を感じることができ、そのダメージを修復することもできる。

3.様々な規制によって放射能の危険が叫ばれている。こうした誤解が生じたのはある程度はわれわれ全員に責任がある。


p.5
放射線は生物にとってどれだけ危険なのか? そこがすべての出発点

第一
放射線は生物にどんな影響を及ぼすか。
データと理解

第二
リスク評価。
世間の受容。
安全規制。
労働慣行。
廃棄物。コスト。

最終
テロリスト。
ならず者国家
汚い爆弾(核汚染をひき起こす爆弾)の脅威。
核兵器による脅し


p.6
放射線の影響は量と期間しだい

・例:パラセタモール(解熱鎮痛薬)の場合、量と期間が両方重要(1人が一度に100錠飲んだら致命的だが、数週間かけて定期的に服用していれば頭痛が治る。)
・放射線の場合、量はミリシーベルト(mSv)であり、期間は月当たりのmSv。

医療で使われる放射線量は信頼できる

・今日では、放射性物質を使った画像診断によって大勢の人が利益を受けており、がんの治療に放射線が用いられる場合もある。
・CTスキャンを1回受ければ5-10mSvの外部被ばくをする。
・PETスキャンやSPECTスキャンでは、放射性物質を体内に注入することにより同程度の被ばくをする。
・CT-PETスキャンを1回受けたら全身が15mSvの被ばくをする。
・医療で使われる放射線や放射能は外部被曝、内部被曝とも福島で放出されているものと本質的には同じ種類である。


p.7
誤った食品基準(牛肉に含まれるセシウムの場合)
「牛肉の安全を確保するため、放射性セシウムの暫定基準値を超える牛肉を規制する対策を政府が講じる」2011年7月27日発表

・基準値上限の500Bq/kgの牛肉を1kg食べると0.008mSvの被ばく[12ページ第4項。この数字はチェック済み]
・被ばくが続くのは、セシウムの排出に要する4ヶ月
・放射性セシウムは、PETスキャンで使用される放射性フッ素と同様に体内で均一に拡散する。PETの放射性フッ素の場合、2、3時間で15mSvの被ばくをする。
・したがって、1人が汚染牛肉を4ヶ月で2000kg食べるだけの被ばくをスキャン1回でする。この食品基準値は非合理的である。
・チェルノブイリ後、ノルウェーとスウェーデンはこの過ちを認めた。
・こうした規制の根拠となる国際安全基準(ICRP)は大幅な改正が必要だ。
・15mSvは危険な線量ではない。


p.8
チェルノブイリ後のノルウェー

1986年、ノルウェー保健局はセシウム137とセシウム134の放射線レベルの介入基準値を定めた。介入基準値は牛乳と乳児の食物が370Bq/kg、それ以外の食品はすべて600Bq/kgだった。ノルウェーにおけるトナカイ飼育の伝統を維持し、サーメ
(ラップ人)のトナカイ飼育者への社会的影響を低減するためには、トナカイ肉の介入基準値を引き上げる検討が必要だった。1986年11月、トナカイ肉の介入基準値は6000Bq/kgに引き上げられ、1987年7月には野生の淡水魚と野生の鳥獣肉の
介入基準値も6000Bq/kgに引き上げられた。Harbitz, Skuterud and Strand, Norwegian Rad Prot Auth (1998)

肉やその他の食品が6000Bq/kg
-つまりノルウェーでは福島の基準値の12倍に引き上げた。
-この数値では、汚染肉を170kg食べてようやくCT/PETスキャン1回分の被ばく量になる。
-このレベルなら農家も飼育者も肉を売ることができ、誰も困らない。
-なぜ福島でこれができないのか。


p.9
スウェーデン放射線防護局
[記事要約]

もともとの記事は2002年4月24日にストックホルムの主要朝刊紙『Dagens Nyheter』に掲載された。この記事の目的は、チェルノブイリ事故に対する科学者の評価が1986年に比べてどれくらい進歩したかを世間に説明することにある。記事は国内外からの大きな注目を集め、この問題に関する新たな議論に火をつけた。そこで、スウェーデン放射線防護局は、世界の人々に自らの結論を知らしめるために英語の翻訳の提供を求められた。

チェルノブイリ事故から16年、スウェーデン放射線防護局が認めた

「われわれは何トンもの肉を不必要に汚染肉にしてしまった」

1986年4月26日のチェルノブイリ原発の事故を受け、スウェーデンは最高水準のトナカイとヘラジカの肉を何トンも不必要に処分した。当局が定めた肉に対するセシウムの介入基準値が低すぎたためである。同年のと畜場ではトナカイ肉全体の78パーセントが廃棄され、納税者に多大な負担を負わせるとともにトナカイ飼育者を一時的に困窮させた。この介入基準値を設定した背景には、個人が被るリスクを非常に低くすることで消費者が何を買えばいいかを迷わないようにする、という考え方があった。
「もしかしたらわれわれは消費者に対して責任を負いすぎたのかもしれない」と放射線防護局長の幹部たちは書いている。

[署名]
局長
Lars-Erik Holm
部門長
Ulf Baverstam
主任科学者
Leif Moberg


p.10
放射線の本当の危険レベル

十字マークはチェルノブイリ事故時の消防士の死者数(曲線はラット)。
数字はそれぞれの線量域での死者数/全体数。

(グラフ左)
チェルノブイリ作業員の死亡率
(グラフ右下)
線量/mSv

4000mSvより高線量の被ばくで42人中27人が急性放射線症候群(ARS)で死亡。がん死ではない。
4000mSv以下では195人中1人が死亡。

p.11
チェルノブイリの作業員
-被ばく量2,000mSv未満の作業員が急性放射線症候群(ARS)で死亡した例はない。

福島の作業員
-事故後6週間で被ばく量100-250mSvの作業員が30人。
-したがって福島ではARSによる死者は出ない。

がん治療のための放射線療法
ー放射線療法を受けるがん患者は、がん細胞を破壊するために6週間にわたって毎日2,000mSvの放射線を腫瘍に照射される。
ー患者は同時に、健康な臓器や組織の多くにも毎日1,000mSvの放射線を照射されている。一か月では20,000mSv以上になる。
-これは急性致死線量(4,000mSv)の5倍以上に相当する。
-信頼できるデータか?たいていの人には、この種の治療の恩恵を受けた知人がいる。
-どうやって放射線傷害から回復するのか。日々の治療を受けたあと、健康な臓器には放射線障害を修復する時間がある。腫
瘍細胞にはそれがない。


p.12
福島での住民避難
-避難基準は年間20mSvに設定されている。
-放射線療法の例から、人間は毎月20,000mSv以上の線量に耐えられることがわかっている。
-これは現行の避難基準の1,000年分に相当する。したがって避難基準は非合理的である。
-一般に、避難をすれば放射線療法による障害と少なくとも同等の害を受ける。
-現行の避難基準は、個人の健康と社会・経済的な健康をまったく考慮していない。
-心の健康とコミュニティの健全性をないがしろにして放射線の安全を考えるのは正当とは認められない。

福島で無視されているチェルノブイリの経験
-避難すること(および放射線による健康被害のリスクがあると住民に知らせること)のほうが、放射線自体よりはるかに大きな害を住民の健康に及ぼす[国連(2011年)およびIAEA(2006年)の報告書]。
-福島ではこの報告書が読まれていないのだろうか? 教訓が生かされず、過ちが繰り返されている。


p.13
放射線による発がん

・人体には免疫を含む何重もの修復機能が備わっている。

・免疫系がうまく働かないと(たいていは高齢になって健康状態が悪くなるため)がんになる可能性がある。

・普通は放射線によるがんとそうでないがんを区別することはできない。

・大勢の人々を対象に、かなり被ばくした人と被ばくしていない人の生涯の健康状態を比較して初めて放射線による発がんだったかどうかがわかる。

・たとえば、広島と長崎の被爆者のうち、1950-2000年のあいだにがんで亡くなった人がどれくらいいたか。

・平均被ばく量160mSvで、発がんリスクは平均して15人につき1人の割合で増えた。

・浴びた放射線量が大きいほど発がんリスクの増加が明確に見られるが、100mSv未満については明確なリスクの増加が見られない。


p.14 [グラフは原文のPDFをご覧ください。]
広島と長崎から何がわかっているか

総人口             429,000人 100.00%
1945-1950年の死者数   103,000人 24.01%
1945-1950年の行方不明者(死者)数  43,000人 10.02%
1950年まで生きた人の数   283,000人 65.97%
被ばく量がわかっている人の数   86,955人
1950-2000年のがん死者数  32,057人 7.47%
1950-2000年の放射線によるがん死者数 1,865人 0.44%

(円グラフ左)
1950-2000年の間がんで死ななかった

(円グラフ右)
早期死
行方不明
1950-2000年のがん死者数
1950-2000年の放射線によるがん死者数


p.15 [表のフォーマットはしておりませんので、数字は恐れ入りますが原文をご覧ください。]
広島・長崎被爆者のうち、1950-2000年の間に確実にがんで死亡した人の被ばく
線量別内訳(Preston et al., 2004)

被ばく量  生存者数 1950-2000年に確実にがんで死亡した人数 余分なリスク
              実際   予想
0- 5     38507   4270  4282  -2.0- 1.4
5- 100    29960   3387   3313  0.0- 3.5
100- 200   5949    732   691   3.5-12.5
200- 500   6380 815 736 9-18
500-1000   3426 483 378 25-37
1000-2000 1764 326 191 63-83
2000- 625 114 56 72-108
合計      86611   10127  9647  5.0-5.2

「予想」とは他の都市で予想される死者数
-緑色の被ばく量[0-5、5-100]では、右端の列のリスクがほぼゼロ。


p.16
なぜ規制が間違っているのか。誰の責任か。

・各国の規制は国際的な委員会(ICRP)の勧告に従っている。

ICRPの勧告は、放射線以外のリスクを無視して「合理的に達成可能なレベルまで被ばく量を低減」(As Low As Reasonably Achievable, ALARAの原則)し、自然のレベルに近づけることを目的としている。安全上の理由ではなく社会的な理由を考慮したものである。

・ALARAの原則は、放射線恐怖症となった国際社会が冷戦時代に要求したものである。われわれはこの過ちを正すべき。

・安全なレベルは「比較的安全な最大レベル」(As High As Relatively Safe、AHARSの原則)とすべきである。
「比較的」とは、ほかのリスクと比べて、という意味である。

・AHARSのレベルは、放射線療法の成功によって示された放射線障害からの修復能力を考慮して設定すべきである。

・AHARSの原則に基づくレベルはどれくらいか。


p.17
ALARAの原則とAHARSの原則による月間被ばく量の比較

腫瘍への放射線照射
>40,000mSv/月
細胞死

健康な組織への放射線照射
>20,000mSv/月
許容線量!

新しい安全レベル案
100mSv/月[大事をとって上記許容線量の200分の1]
現行の避難基準2mSv/月[20mSv/年]の50倍

ALARAの原則によるICRPの公衆被ばく限度
0.1mSv/月[1mSv/年]

AHARSの原則に基づく新しい安全レベル案:
1回の被ばく限度 100mSv
1か月の被ばく限度 100mSv
生涯の被ばく限度 5,000mSV

ALARAの原則に基づく現行の公衆被ばく限度の1mSv/年を約1,000倍緩和


p.18
福島では放射線によってどれくらいの人ががんになるか

今後50年というスパンで見ても、放射線による死者が出るとはまず考えられない。理由は以下の通り。

事故後6週間で100-250mSvの被ばくをした作業員は30人。チェルノブイリでは、被ばく量2,000mSv未満の作業員が140人いたが、急性放射線症候群(ARS)で死亡したのは1人もいない。

広島と長崎では、それと同程度の被ばくをした市民5,949人のうち、50年以内に放射線によるがんで死亡したのは150人に1人の割合。

福島の作業員が1人でも放射線によるがんで死亡する確率は25%未満。市民の被ばく量は作業員よりはるかに小さいのでリスクはない。

日本では海草を食べる習慣があるうえ、子どもたちはヨウ素剤を支給されている。どちらも小児甲状腺がんの予防になる。

チェルノブイリはヨウ素が不足乏している地域なので6,000人の子どもが甲状腺がんにかかったが、死者は15人だけである。

福島では放射線による予想死者数がゼロである。


p.19
結論

-福島では、食品の厳しい規制と避難規制により、何十万人もの人々の心の健康と自信と生計が危機に瀕している。

-チェルノブイリのときと同様に、厳しい規制によって放射線への不安を緩和しようとすることがむしろ裏目に出ている。

-放射線と放射能は毎年何千件ものがんを治療し、低線量であれば無害である。

-地質学[?地殻変動のことか?]、気候変動、社会経済の安定、人口、水と食料の供給といった問題とは違って、放射線は人類にとっての大きな脅威ではない。

-放射線の汚名をそそぐために、わかりやすい言葉でより多くの人に放射線を説明するためのまったく新しい教育があらゆる地域で必要とされている。

-私たちは健康になるためにすでに放射線を利用している。そのときと同じ配慮と敬意をもって、あらゆる地域で放射線を社会のために役立てていくべきである。

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年間1.2シーベルト。これはもう国民全員で福島第1原発でフルタイムで働けるレベルでしょうね。特に最後のスライドなどは文科省の放射線副読本がそのまま引用したような文章です。

(多くのこどもがヨウ素剤を配布された、というのはいったいどこの話なのでしょう?)

Friday, October 21, 2011

福島第1原発3号機上階(だったところ)のビデオ

ダストサンプリングのクレーンの先につけたビデオで捕らえた、もうむちゃくちゃに壊れた鉄骨が間近に見れます。遠くには、晴天の下広がる平和な景色。ものすごいコントラストですね。

東京電力がつい先ほどアップした、10月12日撮影のビデオです。


東電社員が10ミリシーベルト近い被曝をして撮った1号機原子炉建屋内部ビデオ、行方不明になる前にクインス(ロボット)が撮った2号機原子炉建屋内部ビデオもお見逃し無く。

福島第1原発1号機原子炉建屋4階のビデオ(10月18日撮影)

東京電力が10月18日に撮影して21日にサイトにアップしたビデオのスクリーンショット。崩れた天井から外の光が入ってきています。非常用覆水器の具合を見るのが目的だったようです。ビデオのほとんどは4階部分のもので、最後の方で3階と2階が写ります。

作業員のコメント: 「[天井]、前より崩れているみたいだなあ」

4階フロアの様子はまったくすさまじいとしか言いようがありません。線量はどの階も高そうです。作業員の一人が線量を読み上げているのが聞こえますが、2階で「189!」というのを聞きました。

毎日新聞によると、この作業での被曝は最高9.44ミリシーベルト。作業員の方々は東電の社員の方々だそうです。お気の毒です。

そういえば、1号機の2階は確か4シーベルト時以上の箇所がある階です。

ビデオはちょっとお待ちください。(記録に残したい方は、ダウンロードこちらです。)


ビデオアップ:

Thursday, October 20, 2011

共産党市議団による、千葉県松戸市1732地点放射線測定結果: 1280の地点で毎時0.3マイクロシーベルトを上回る

Savechild.net(ツイッターでピンクのうさちゃんマーク)さんで出されていました。松戸市お住まいの方々はご参考になさってください。

http://miwa-3838.jp/html/menu09/index_4.pdf

日本共産党のみわ由美議員がHPで公表した千葉県松戸市の144ヵ所1732地点を測定した資料、とのことです。最高の7マイクロシーベルト時を記録したのは公園ではなく、ビニールハウスの脇とのこと。「風評被害」を避けるために場所は特定しない、との市議団の談話が毎日新聞に載っています。(毎日新聞リンクはこちら。このリンクが死んだら、こちらに全文出ています。)

測定結果は放射能の程度によって色塗りされ、1280地点、全体の約74%で0.3マイクロシーベルト時を上回る結果になっています。原発事故後7ヶ月以上経ち、感覚も麻痺しがちですが、0.3マイクロシーベルト時の地点に24時間、1年間立ち続ける(まあ座り続けるでもいいのですが)とすると、1年で2.6ミリシーベルトの外部被曝、となります。放射線審議会が何と答申を出そうが、現行の法律は、医療などの必要性のある人工被曝は年間1ミリシーベルト、とされています。

同じところに24時間、一年中立ち続ける人はまず居ませんが、このような地点は市内に数多くあると見てよく、これらの地点だけを避ければ大丈夫、という代物ではありません。スポット的な除染はあくまで緊急のものではないかと思います。

Wednesday, October 19, 2011

【記録】保安院が3月12日に発表していた福島第1原発1号機炉心溶融(メルトダウン)の可能性

最初にぽろっと出てくるニュースがもっとも真実に近い、良い例が福島第1原発の炉心溶融、メルトダウンのニュース。まだ地震、津波から一晩明けたばかりの、まだ人々の心定かでない時期にでたニュースです。読み逃した皆様のため、記録のために、私が読んだのとほぼ同内容の日本経済新聞の記事を下にお出ししておきます。

私はこの一つ前のバージョンの記事(午後2時18分)を見て、日本語をコピーすることなく肝心なところだけを英語にして、「1号機、メルトダウンが既に起きている可能性」、と英語ブログに出していました。(時差のため3月11日。)保安院が発表したのは1号機の爆発前の3月12日午後2時です。保安院の審議官は最初の中村審議官。この会見が元で更迭された、との噂を聞きましたが、そうなのでしょう。

保安院の発表が午後2時、ベントが午後3時(日経の記事では3時半になっていますが、ライブカメラの解析によると3時の時点で排気塔から煙が出ています。東京新聞10月6日記事ご参照)、爆発したのが東電発表によると午後3時36分。(たしか管首相の記者会見の真っ只中だったような。)

この後、3号機が2日後に爆発し、2号機と4号機が3号機の翌日に爆発し、炉心溶融はいつの間にかないことになり、せいぜい「損傷」に留まることになりました。1~3号機が炉心溶融していて、おそらく圧力容器から出ているだろう、とおおっぴらに認めたのは、やっと5月になってから。4月29日に日本原子力技術協会最高顧問の石川迪夫さんがテレビでそのように発言なさり、結構うれしそうにイラストつきで説明なさった後のことです。

(私は個人的にはこの方に好感を持ちました。これは戦争なんだ、横っちょのこと(窒素だの水棺だの)やっていないで、とにかく原子炉がどうなっているのかを何としてでも調べて対処すべきだ、と言う見解にはまったく賛成。また、この方がテレビでこう発言なさったのを見て、ああこれは政府がメルトダウンを公式に認める布石だな、と思いましたがまさにその通りになりました。)

日本経済新聞3月12日付け(午後3時30分)記事

経済産業省の原子力安全・保安院は12日午後2時、東京電力の福島第一原発1号機で原子炉の心臓部が損なわれる「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発表した。発電所の周辺地域から、燃料の核分裂に伴うセシウムやヨウ素が検出されたという。燃料が溶けて漏れ出たと考えられる。炉心溶融が事実だとすれば、最悪の原子力事故が起きたことになる。炉心溶融の現象が日本で確認されたのは初めて。

保安院は同日午後3時半、圧力が高まって爆発による放射性物質の大量放出を防ぐため、格納容器内の減圧作業を実施した。圧力が「午後2時を境に急激に下がりはじめた」(保安院)という。

 周辺地域から検出された種類は、いずれも本来は金属容器で封じ込めている物質。炉心溶融で大量に放射性物質が出れば、被曝(ひばく)の被害が広がる恐れもある。

 保安院は今回の炉心溶融について「放射性物質の広がりを計算した結果、現時点では半径10キロを対象とする住民避難の範囲を変更する必要はないだろう」と話している。

 震災にあった1号機は、核燃料棒を冷やしていた水位が下がり、露出していたとの報告もあった。

燃料を包む金属容器は高温に耐えるとされる。溶けたとなれば、燃料周辺が相当の高温にさらされたとみられる。金属容器ばかりか原発の圧力容器や格納容器を溶かせば、放射性物質が外に漏れ出す。

 原発の運転中は、炉心で核燃料が核分裂を起こしている。発熱反応が連鎖し、冷却水を蒸気に変えてタービンを回し、発電している。

 冷却水があるうちは熱が一定に保たれるが、本来の水位が下がると燃料が生む熱の行き場が無くなる。最悪の事態では、原子炉の心臓部である炉心溶融が起きる。

 この事態を受け、保安院は自衛隊に給水支援を要請した。大量の水を使って熱を冷ますためだ。

 過去の大きな原子力災害も、炉心溶融が原因のものがあった。1979年には、米ペンシルベニア州のスリーマイルアイランド原発にトラブルが発生。緊急炉心冷却装置が働かず、高温になった燃料が炉心を溶かす大事故につながった。

やっぱり。岩手県のがれきを東京都で焼却処分する業者は例の東電の子会社

10月1日付けのポストで、岩手県からの災害(放射性)がれきを処分する業者を東京都が公募している件に関して、「東京都内で1日100トン以上の処理能力を持つ産業廃棄物焼却処理業者は東京電力の子会社」、とお伝えしましたが、やはり、その会社、東京臨海リサイクルパワー株式会社が燃えるがれきを扱うことになったそうです。

まず、企業名を出せないNHKニュースから。

10月20日付けNHKニュース

東日本大震災で出た岩手県宮古市のがれきを、都内で処理することにしている東京都が、処理に当たる業者を選んだ結果、燃えるがれきについては、東京港にあるゴミの埋め立て処分場に隣接する、処理業者の施設で焼却されることになりました

東京都は、東日本大震災の被災地で大量に出たがれきについて、被災地を支援するため、平成26年3月までの2年半にわたって受け入れ、処理することを決めています。東京都はまず、岩手県宮古市で出たがれき1000トンを、来月までに鉄道を使って都内に運び込む予定で、それに先立って、がれきの処理に当たる、都内の4つの業者を選びました。これらの業者は、がれきのうち、金属などの燃えないものについては細かく砕いたうえで、東京港にあるゴミの埋め立て処分場に埋めることにしています。一方、木くずなどの燃えるものについては、埋め立て処分場に隣接する産業廃棄物の処理業者の施設に持ち込んで焼却したうえで、最終的に埋め立て処分場に埋められることになりました。東京都は「がれきを処理する過程で、そのつど、放射線量や放射性物質を測り、安全性を確認しながら処理を進めていきたい」と話しています。

選ばれた4つの業者とは、東京都環境局の10月19日付け発表によると次の通り:

公募区分1 (建設混合廃棄物破砕処分)

番号 業者名称 所在地及び施設所在地
有明興業株式会社 所在地:江東区若洲二丁目8番25号
施設所在地:同上
株式会社リサイクル・ピア 所在地:大田区城南島三丁目4番3号
施設所在地:同上
高俊興業株式会社 所在地:中野区新井一丁目11番2号
施設所在地:大田区城南島三丁目2番15号


公募区分2 (廃機械・機器類破砕処分)

番号 業者名称 所在地及び施設所在地
有明興業株式会社 所在地:江東区若洲二丁目8番25号
施設所在地:同上
株式会社リーテム 所在地:千代田区外神田三丁目6番10号
施設所在地:大田区城南島三丁目2番9号
そして、

『先行事業分から発生する可燃性廃棄物の焼却施設は、募集要領に示された要件を満たした焼却施設を選定することになっています。今回は、すべての処分業者が東京臨海リサイクルパワー株式会社(江東区青海三丁目地先)を選定しました。』

何しろ、募集要件を満たす焼却施設(一日100トン以上の焼却能力を持つ施設)はここしかないんですから、ほかに選びようもありません。

この、東京電力、清水建設、その他計5社による出資の会社については、10月1日のポストを再度ご参照ください。

Monday, October 17, 2011

世界に冠たる日本政府の借金、国民一人当たり8万6千ドル、国内総生産比200%でダントツ1位

英国の経済誌『エコノミスト』が、刻々と増え続ける世界の国家負債を地図にしています。リンク先のエコノミストのサイトで、マウスのポインターを地図上の国にあわせると、国別の負債総額、国民一人当たりの負債額、人口、国家負債の国内総生産(GDP)比、前年比の伸び率が表示されます。

エコノミスト誌によると、日本政府の負債総額はアメリカとほぼ同じ、人口はアメリカの約4割(で減少中)、国民一人当たりの負債額は何と

8万6262ドル、日本円で6百63万円。

負債対国内総生産比は、200%を超えています。つまり、政府の借金は国内総生産の2倍以上ある、ということです。

更にすごいのは、総額。日本だけで世界の全国家負債の約4分の1です。日本とアメリカを足すと世界の国家負債の半分をこの2国でまかなってしまうという、恐ろしい話です。

日本、アメリカ、そしてヨーロッパの Basket case、ギリシアを比較したスクリーンショットです。


この借金は、まず返せません。国が踏み倒すしかないでしょう。アメリカと違って、日本の国債はほとんど日本内で保有されていますから、踏み倒されて大損をするのも日本国民。(おまけにアメリカが踏み倒したら大量の米国国債を保有する日本は文字通り踏んだり蹴ったり。)

G20で誰に要求されたわけでもないのに日本政府の代表が消費税の5%引き上げを「公約」したとか。G20は日本が何をしようと別に関心も無いはずです。そんなことを承知で「公約」したのは、あくまでも日本国内向けのジェスチャー。「諸外国に約束したから、実行しないわけには行かない」、という筋書きでしょう。

それもこれも、国内総生産の2倍以上という返すあてもないとんでもない借金をかかえているおかげです。

Sunday, October 16, 2011

環境省の災害がれき受け入れ調査:ノーと言えない地方自治体。文字通り選択肢なし

もうご覧になった方も多いと思いますが、環境省ががれき引き受けの市町村名を公表しない方針、というのにはまだ続きがあったのでした。

この、市民の抗議をかわすかのような姑息な方針だけでもとんでもないことですが、今回(10月7日付け)で環境省が全国の「関係都道府県廃棄物行政主管部」に送った事務連絡、「東日本大震災により生じた災害廃棄物の受入検討状況調査」には、受入検討状況を次のうち3つから選ぶようになっています。

A:既に受け入れを実施している
B:被災地への職員派遣や検討会議の設置等の具体的な検討を行っている
C:被災地への職員派遣や検討会議の設置等は行っていないが、受入れに向けた検討を行っている

受け入れることが前提の選択肢しかないのです。

上記のリンクには、実際の書面をスキャンした画像もアップされています。ABCの選択肢の部分はこれ:

また、原則として地方公共団体の名前は出さない、と言うのはこれ:



また、住民がうるさいようだったら環境省から専門家を派遣してくださるそうです。


何としてでも放射性がれきを全国に、という、新たな政府の「国策」、環境省が強力に推進するようです。何としても原発を全国に、という「国策」は当面頓挫かもしれませんが、政府は新しいネタには困っていないようですね。

茨城県下妻市、瓦がれきをチップ化、ガーデニングに

熱心なリサイクリング、時と場合を全く考慮していない模様。

文科省の放射能汚染マップでは下妻市はちょうど汚染を免れているかのようですが、同じように汚染を免れているはずの東京、神奈川などで高放射線量、高汚染の地域(単に地点に留まらず)が市民の計測によって発見され続けています。

下妻市は茨城県の西に突き出した格好になっている地域にありますが(下の地図の赤丸)、やはり汚染の無いはずの坂東市(下妻市の南)では、お茶から高濃度の放射性セシウム(生茶葉-乾燥した製茶ではありません-で830ベクレル)が検出されています。(今年5月、小学生に雨中の茶摘み学習をさせたところです。)

茶葉の高濃度セシウムは、やはり下妻市の南に位置する常総市からも検出されています。

瓦がれきチップ、建設資材となっているコンクリートがれきなどを下妻市が放射能測定したかどうかは記事では明記なし。

東京新聞茨城版10月15日付け記事

下妻市は、東日本大震災で市に持ち込まれたがれきの瓦を砕いて「瓦チップ」に再資源化した。ガーデニングの資材などにも活用でき、市は「ごみ問題を考えてもらえれば」と市民に無料配布する。この取り組みは県内では初めてという。

 市生活環境課によると、市は地震発生直後の三月十四日から、旧千代川中学校跡地を災害廃棄物の仮置き場として、市民からがれきの搬入を受け入れた。八月末までにブロック塀、瓦など計六千百トンが持ち込まれた。

 瓦は当初、埋め立て処分する計画だったが「防災意識の継続になれば」と、リサイクルすることにした。

 これまで搬入された二千五百トンの瓦が破砕処理され、砂粒大から四センチの「瓦チップ」千二百六十トンに再資源化された。一方、コンクリートのブロック塀などのがれきは砕石処理し、農道などの建設資材に利用されている。がれき受け入れは、本年度いっぱい。

 市に協力して自宅前の庭に「瓦チップ」を敷き詰めた市嘱託職員鈴木栄さん(56)は「雑草が生えなくていいし、見た目も落ち着いた雰囲気で気に入りました」と話す。市民への配布は二十日から。問い合わせは、市生活環境課=電0296(43)2111=へ。 (原田拓哉)

Friday, October 14, 2011

3月12日の夜、浪江町に来た謎の防護服の男

「なんでこんな所にいるんだ! 頼む、逃げてくれ」

『防護服の男』と題された連載記事は、朝日新聞朝刊に数ヶ月にわたって掲載される予定の『プロメテウスの罠』シリーズ(前田基行記者取材)の第1部なのだそうです。私はこんな記事があることは知りませんでした。

まだお読みでない方、是非下記のリンクでお読みください。(薔薇、または陽だまりの猫ブログ) 全部で11話あります。
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/e623ea60d0c7288f4c4fd6f68c00f230

最初の記事は10月3日付け、朝日新聞のデジタル版にも出ています。以下、10月3日付朝日新聞より:

防護服の男(1)

 福島県浪江町の津島地区。東京電力福島第一原発から約30キロ北西の山あいにある。

 原発事故から一夜明けた3月12日、原発10キロ圏内の海沿いの地域から、1万人の人たちが津島地区に逃れてきた。小中学校や公民館、寺だけでは足りず、人々は民家にも泊めてもらった。

 菅野(かんの)みずえ(59)の家にも朝から次々と人がやってきて、夜には25人になった。多くが親戚や知人だったが、見知らぬ人もいた。

 築180年の古民家を壊して新築した家だ。門構えが立派で、敷地は広い。20畳の大部屋もある。避難者を受け入れるにはちょうどよかった。門の中は人々の車でいっぱいになった。

 「原発で何が起きたのか知らないが、ここまで来れば大丈夫だろう」。人々はとりあえずほっとした表情だった。

 みずえは2台の圧力鍋で米を7合ずつ炊き、晩飯は握り飯と豚汁だった。着の身着のままの避難者たちは大部屋に集まり、握り飯にかぶりついた。

 夕食の後、人々は自己紹介しあい、共同生活のルールを決めた。

 一、便器が詰まるのを避けるため、トイレットペーパーは横の段ボール箱に捨てる。

 一、炊事や配膳はみんなで手伝う。

 一、お互い遠慮するのはやめよう……。

 人々は菅野家の2部屋に分かれて寝ることになった。みずえは家にあるだけの布団を出した。

 そのころ、外に出たみずえは、家の前に白いワゴン車が止まっていることに気づいた。中には白の防護服を着た男が2人乗っており、みずえに向かって何か叫んだ。しかしよく聞き取れない。

 「何? どうしたの?」

 みずえが尋ねた。

 「なんでこんな所にいるんだ! 頼む、逃げてくれ」

 みずえはびっくりした。

 「逃げろといっても……、ここは避難所ですから」

 車の2人がおりてきた。2人ともガスマスクを着けていた。

 「放射性物質が拡散しているんだ」。真剣な物言いで、切迫した雰囲気だ。

 家の前の道路は国道114号で、避難所に入りきれない人たちの車がびっしりと停車している。2人の男は、車から外に出た人たちにも「早く車の中に戻れ」と叫んでいた。

 2人の男は、そのまま福島市方面に走り去った。役場の支所に行くでもなく、掲示板に警告を張り出すでもなかった。

 政府は10キロ圏外は安全だと言っていた。なのになぜ、あの2人は防護服を着て、ガスマスクまでしていたのだろう。だいたいあの人たちは誰なのか。

 みずえは疑問に思ったが、とにかく急いで家に戻り、避難者たちにそれを伝えた。(前田基行)

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(英語ブログにさっとやった英文翻訳(私訳)を出しています。ただいま(1)(2)(3)まで。随時出しますので、日本語を解さないお知り合いにもお勧めください。ここです。日本語も出してあります。)

Thursday, October 13, 2011

傑作アート! 「お米は20歳になってから」

kingo999さんの作です。

(H/T 東京茶とら猫

河北新報: 『複数産地のコシヒカリをブレンドすれば「国内産コシヒカリ100%」の表記が可能』

「流通サイドにとっては福島産と明示しないで済む」とのこと。

なるほど。そういう手があったか。

割安感で外食産業などの業務用としての売れ行きは好いとか。

河北新報10月13日付け記事より:

福島米の放射性物質検査の結果、作付けのあった福島県内48市町村でコメの出荷が解禁となった。しかし、放射能汚染に対する消費者の不安を拭い切れたとはいえず、販売苦戦は否めない。
 
ことしの福島産のコシヒカリは、これまで同程度の評価を受けた北関東産より60キログラム当たり1000~1500円低い価格で取引されている。米価は全国的には上昇しており、福島米の価格低迷は市場の目の厳しさを物語る。

 特に販売不振になる可能性があるとみられているのが家庭向け。「福島の農家には申し訳ないが、ことしは福島米は一粒も扱わない」。従来、福島産のコシヒカリやひとめぼれを主力商品としてきた首都圏の米穀店はそう言い切る。

 店頭には栃木産や茨城産の新米コシヒカリが並ぶ。だが福島県に近い点がマイナス材料となり、売れ行きは振るわないという。「千葉産でさえ嫌がる客もいる。福島産では勝負にならない」と話す。

 生産、流通、消費の関係者が決定的なダメージになったと口をそろえるのが、予備検査で二本松市小浜のコメから暫定基準値と同じ1キログラム当たり500ベクレルの放射性セシウムが検出された問題だ。

 「本検査で基準値を下回っても、いったん500ベクレルが出た事実は消えない。二本松産、それが混じっているかもしれない福島産を買う消費者がどれだけいるだろうか」と福島県内の米穀業者は懸念する。

 一方、業務用は低価格が受けて引き合いが予想外に強まっている。複数産地のコシヒカリをブレンドすれば「国内産コシヒカリ100%」の表記が可能となり、流通サイドにとっては福島産と明示しないで済むという。

 大手のコメ仲介業者は「福島米の品質の高さは業界では常識。それが今、日本一安い。検査も通っているから安全性もお墨付き。割安感があり、外食産業には魅力的だろう」と指摘する。

 本来の品質に見合った価格を付けられず、福島産を名乗ることをはばかる状況がいつまで続くのか。県内の農協幹部は「ことしは全量売り切ることが大事だ。ある程度、買いたたかれても仕方がない」と苦しい胸の内を明かす。

記事はまだ続きますが、福島の米はもともと業務用として人気があったものだそうですね。

「福島米は良質な割に手頃な価格で、もともと全体の出荷量の6~7割が業務用として出回っている。ことしは風評被害で割安感が増し、業務用の売れ行きは堅調だ。」

NHKのニュースによると、飲食店、学校給食などに積極的に売り込むそうです。(NHKニュースのビデオには福島県によるコメの調査風景がちらりと出てきます。お見逃しなく。)

Wednesday, October 12, 2011

福島のコメ農家: 「離れて暮らす孫には『ほかで買ってくれ』と言うしかない」

キロ当たり104ベクレルの放射性セシウムがコメから検出された地区でコシヒカリを作る男性。孫にも、娘にも親戚にも、今年のコメは送らないそうです。

そんなおコメも、暫定基準値を下回ったので「安全」、ということで、一般消費者向けに、福島から出荷されます。消費者としては割り切れませんね。

放射線審議会が奉じるコーデックス委員会をベースにしたICRPの指針についてはポストをおだししてありますが、何しろ

  • 共同体全体の経済にとって必要不可欠な地域産物を存続させるためにも、汚染基準を高めに定めてもよい

  • 汚染された食品の販売に対して制限を課すことによる地域経済の混乱、消費者の選択や汚染されていない食品の提供による市場占有率の喪失は、線量低減に有益という観点から正当化されてはならない

なのですから、もうどんどん売りまくって当たり前、買わない消費者が攻撃されるでしょう。線量低減に有益でも汚染食品の販売を制限してはいけないんですから。

福島農家の「苦悩」についての朝日新聞記事(10月13日付け):

コメ出荷OK

 コメの出荷が、作付けしている県内全市町村で認められた。ただ、消費者の不安は計り知れず、農家は打つ手を探しあぐねている。

 12日夕、県の安全宣言を受け、JA福島五連の庄條徳一会長は「安堵(あんど)している。消費者の皆さんには安心して購入していただきたい」とコメントを出した。

 予備検査で基準(1キロあたり200ベクレル)を上回る500ベクレルが検出された二本松市・旧小浜町地区。同市の三保恵一市長は「今日まで緊張の連続だった。基準値を下回ったと聞き、ようやく安心できた」と顔をほころばせた。同時に、農家の間の値崩れを心配する声について、「販売に影響が出れば、JAなどと連携しながら、東京電力への賠償請求も検討したい」と話した。風評被害を避けるため、引き続き国に対し、コメの全袋検査を求めていくという。

 基準を下回ったとはいえ、消費者の信用は得られるのか。県内の農家の表情は晴れない。

 本検査で104ベクレルを検出した福島市水原地区でコシヒカリを作る男性(69)は「離れて暮らす孫には『ほかで買ってくれ』と言うしかない」と話した。

 毎年、札幌市の次女の一家に1年分のコメを送ってきた。ほかにも福島市内の親戚や知人ら十数人に送るのが慣例だったが、今年は難しいと考えている。

 半世紀にわたって、コメを作ってきた。できたコメは粒が大きく、食味がよいとの自負があった。「放射能の味がするわけでねえ。30年後を考える必要はないし、自分たちは食べるよ。かえって長生きするかもしれん」。軽口のなかに無念さがにじんだ。

消費者の信用? 野菜も牛肉も果物も牛乳も、汚染が出ているものをこの7ヶ月売ってきたわけですから、今更信用を心配してもちょっと無理なような気はします。放射能汚染を心配する消費者は「風評被害を煽る」と攻撃されてきましたし。

ストロンチウム検出の横浜市、根岸の米軍住宅はもぬけの殻?


太田正孝横浜市会議員の掲示板ポストです。

根岸の米軍住宅は・・もぬけの殻
投稿者:M機関・情報収集班 石井 投稿日:2011年10月12日(水)17時44分46秒

● 根岸の米軍住宅は・・もぬけの殻・・今も続く米国人の避難

横浜市長は「放射能など大丈夫・・セシウム肉を少しくらい食べても大丈夫」と言っているが

同じ横浜の根岸の米軍住宅住民は、原発事故以来本国に避難して戻ってこないのである。

広島に原爆を落として、その放射能の恐ろしさは痛いほどわかっているアメリカ政府の判断で多くのアメリカ住民が避難したままとなっているのに、市民の命を預かる市長は、おっとりして放射能などどこ吹く風。

同じ横浜の住民なのに、米国と横浜の対応がここまで違うとは…驚きではないか


根岸の米軍住宅地域は、中区、磯子区、南区にまたがる地域です。

横浜市港北区のストロンチウム90検出の報告書

横浜市港北区マンション屋上の堆積物の放射能測定、同位体研究所による検査報告書です。「黒猫の戯言」ブログの情報です。

ストロンチウム90: 195 ベクレル/キロ

同じサンプルからは、以前に放射性セシウムも高レベルで検出されています。

セシウム134: 29,775 ベクレル/キロ

セシウム137: 33,659 ベクレル/キロ

セシウム合計: 63,434 ベクレル/キロ

同位体研究所が放射性ストロンチウムの検査を開始したのは8月20日から、とのこと。(同研究所のサイト参照)それで時間に多少の開きが出たのでしょう。

同研究所では、ストロンチウムの検査は1件あたり65,000 円(税前)、検査には1週間掛かります。

ストロンチウム90とセシウム137の割合は今回のケースでは0.58%。文科省が行った福島での検査では、割合は0.1%以下から8.2%と幅広い値になっているようです。平均を出すには余りにばらつきが大きいですね。調査のサンプルを増やすしかないのですが、ストロンチウムの検査を行える研究機関は日本にどれだけあるのでしょうか?原発事故以来7ヶ月が過ぎてやっと原発付近以外の場所でのストロンチウムの検出が話題になるところを見ると、ほとんどない、が現状なのでしょうか?

横浜市は、同じマンション屋上から取った別のサンプルを使ってストロンチウムの検出を依頼中、とのことです。この別のサンプルからはセシウム合計で105600ベクレル/キロ出ていますが、横浜市からの公式発表は無かった、とのこと。(私は英文ブログに書いていましたが、情報はTwitterからでしたね、確かに。)発表が無かった理由が、マンションが「私有地」だったから、というわけの分からない理由だったそうですが、さて今回のストロンチウム90の検査結果、市は公表するでしょうか?

まあ見ものです。このニュースをブレークした岩上安身さんが記者会見に参加するのを拒否したそうですが、さてどうでるか。

ストロンチウム検出もなんのその、横浜市でも他の関東の都県の学校、幼稚園と同じく、秋の落ち葉、どんぐり拾い、サツマイモ掘り(学校によっては素手で)、落ち葉を集めて焚いて焼き芋作り、と、福島原発事故などまるでよその国で起こったことのように、まったく例年と変わらない年中行事の数々を消化しているようですね。春に放射性降下物がまだ降っているさなかに田植えをしたコメを収穫して脱穀する、という社会勉強まであります。

Extend and Pretend. いつまで続くか。

Tuesday, October 11, 2011

静岡の茶園、キロ当たり175ベクレルセシウムの証書で「安全宣言」

安全です、海外にもばんばん輸出しています、とのことです。

証書は茶園のサイトでご覧になれます。サイトからの情報は、

一番摘み深蒸し茶

セシウム134: 83ベクレル/キロ
セシウム137: 92ベクレル/キロ
ヨウ素131: 不検出 (10ベクレル/キロ未満)

『大蔵園の掛川産深蒸し茶をご愛用頂いておりますお客様に一日も早く安心して頂きたいと願い、今年度生産された全てのお茶の放射能検査を独自に行いました。
 
 春に摘採される一番摘み深蒸し茶、初夏に摘採される二番摘み深蒸し茶、全て国の定める食品衛生法に基づく暫定規制値を下回る結果となり、健康への影響が全くない事が確認されました。』

というメッセージです。

要するに国のセシウムの暫定基準値キロ当たり500ベクレルを大幅に下回ったので安全、という論理ですが、これが変だと思うのは今やどうやら消費者だけのようですね。先日の江東区の小学校で、セシウムが検出されたとわかっていた栗を給食に出したケースと同じです。

どうやらコーデックス委員会を引き合いに出して事故直後にでっち上げた放射性物質の暫定基準値がしっかり独立独歩、生産者、卸売業者、販売者、それと学校などの公的機関では、この基準値を下回っている限り安全だ、ということになっているようです。安全どころか、「健康への影響が全くない」、と自信を持って断言できるほど、この暫定基準値に生産者は深い信頼を寄せているようです。

この茶園は証書を出しているだけまし、とも言えますが、セシウムが入っていないお茶も西日本以西には存在するわけですし、また隣県の神奈川県横浜市で放射性ストロンチウムが検出されたこともあり、わざわざ放射性セシウムが入っていると分かっているお茶を購入して消費する一般消費者の方はいるんでしょうか?

(H/T William Milberry

Monday, October 10, 2011

横浜市の放射性ストロンチウム続報: 横浜市会議員の方々の反応

さて市の対応はいかに、と思って今日のTwitterを走査していましたが、横浜市はまったく静かなもの。それでも、横浜の市民の方が市会議員の方々にツイートを出して対応を尋ねているのに対する答などを見つけました。

その中で面白かったのが、この方のツイート。

まずその1

『9月初旬から事実として扱っています。私たちの会派にとってSrは過去の事です。9/13常任委員会でも私自身が触れています。Srは水溶性が高いという特性がありますので。但し、降り注いだのか、ボランティア等(人・車)が媒体になったのかは不明。』

その2

『放射性物質、、福島に行けばどこでも手にいる物です。人為的に持ち込む事も可能です。人為的に持ち込まれたとしたら、市会議員はそれを追及する事は仕事ではないと思っていますので、私はしません。』

福島に行けば放射性物質はどこでも手に入る物??マンションの屋上の側溝に、ボランティアの人または車がストロンチウムを人為的に持ち込んだ??しかもそれを追求するのは市会議員の仕事ではない??

なんだかよく分かりませんが、もうすこし理解可能な方のツイートによると、

『現在、検体を採取し横浜市で調べています。』

もうすこし詳しい方のツイートによると、

『【横浜市のストロンチウム】今日の決算委員会、自民党の高橋さんが「その他」の項目として最後に、ストロンチウムの人体への影響や「市内でストロンチウム が見つかったとの情報があるが確認しているか」と質問。豊澤保健所長が「公式な検査結果ではないが確認している。市として現在検査中」と答弁。』

とのことでした。さて公式発表はいつのことか。

Sunday, October 9, 2011

横浜市で福島原発由来のストロンチウム90検出

(10月12日アップデート: 検出結果の報告書、出しました。)


岩上安身さんの有料メールマガジン最新号のスクープ記事。

読者の方が寄せてくださった情報によると、横浜市港北区のマンション屋上からストロンチウム90がキロ当たり195ベクレル検出されたとのこと。過去の核実験などからのバックグラウンド値はせいぜい1、2ベクレルです。

横浜まで飛んできたストロンチウムが東京をバイパスしたはずは無いと思いますが、東京都はまず何の検査もしてないしするつもりもないのでしょうね。証拠を突きつけるしか方法はなさそうです。

さて、9月30日のNHKの番組での放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療研究センター長の杉浦紳之さんのコメント、お見逃しになった方はどうぞ。首都圏にはストロンチウムは飛んできていない、セシウムだけだ、と断言なさっています。もっとも、その表情や動作の方が正直に真実を語っていたようですが。(話をまとめようとするNHKの男性アナウンサーも非常に心地悪そうにまとめています。)

プルトニウムは飛ばない、ストロンチウムは飛ばない、と言い続けた専門家の方々とマスコミの方々、さあなんとおっしゃるか。

Saturday, October 8, 2011

ドイツZDF "Frontal21": 「福島原発労働者の実態」

ドイツZDFテレビが福島原発20キロ圏内に侵入、作業員にインタビュー。sievert311さんアップのビデオです。オリジナルのドイツ語のビデオをみると、10月4日のFrontal21からのセグメントのようです。(オリジナルビデオの26分過ぎです。)

元の日本語訳はこのサイトで: http://kingo999.blog.fc2.com/blog-entry-336.html

「ナレーションでは、山下氏の発言は、「動物実験はありませんが」になっていますが、彼は、「これは明確な動物実験でわかっています」とはっきり言っています。」

という但し書きが、Youtubeビデオのページには入っています。たしかに山下教授はあの講演会でそうおっしゃっていました。

(書き起こしより抜粋)

「私の測定器はマイクロシーベルトしか測定できません。原子炉建て屋に入るとエラーが出ます。測定器が測定しきれないくらいの高い数値なのです。」 (作業員の一人)

「男性の精巣が高い被曝を受けると、生まれる子供の染色体が損なわれ肩から指が生えるというような手足の奇形や、中枢神経の異常、知能障害などを引き起こすことがあります。」 (岐阜環境医学研究所所長 松井英介 放射線医学・呼吸器病学専門)

「危険特別手当を受けますか?それではサインして下さいと言われる。一時間千円の手当てです。他に選択肢はないのでサインをします。それは 後で病気になっても訴えを起こさないという。同意書のサインなのです」 (作業員の一人)

こうした苦情が事実かどうか確認しに我々は東電本部を尋ねた。広報担当者は無関係を主張する。「作業員は現場でリスクの説明を受けていると聞いています」と言う。それに契約書は東電の出したものではないと。「下請け会社が作業員と結んでいる契約の内容は知りません」

我々が知りたいのは、東電が自分の事故を起こした原発で働く人間に責任を感じないのかということだ。

「すみません、契約内容を存じませんので、コメントもできません」 (東電本店社員)

事故を起こした原発の汚い仕事をダンピング価格で請け負わされる作業員。
責任逃れの一点の雇用者
笑えば放射能から身を守れるとアドバイスする医者

これが日本式の人権蹂躙である。

(抜粋終了)

あの東電本店社員を1号機の格納容器の水素の詰まった配管切断に送り込みたいと思うのは私だけでしょうか。格納容器に入っていただいてもいいんですが。

下請け作業員の待遇については、ふくいちライブカメラで指差しをした作業員の方もブログで書いていらっしゃいます。ZDFに出てきた作業員の方の話とダブりますね。ここに出てきた作業員の方は契約書があるだけまだましなんでしょうか。



(ビデオ開始後1分ぐらいのところでJ-ビレッジ(20キロ圏内)のバス停のようなところが写りますが、左側の方が女性のように見えるのですが、20キロ圏内で女性が働いていていいんですか?)

Thursday, October 6, 2011

食品汚染ガイドラインレベルについての文科省放射線審議会の考え方も結構ひどい

文科省の放射線審議会が年間の一般人の人工被曝限度を1~20ミリシーベルトの間の値に当面引き上げる、という案を発表した、とのニュースは皆様もご存知かと思います。

何を根拠に、と思って文科省のサイトをうろついていたら、今回(第41回)の基本部会ではなくてひとつ前の第40回の資料がアップされていました。文科省放射線審議会基本部会第40回は8月31日に開かれましたが、提出資料の中に「国際放射線防護委員会(ICRP)2007年勧告(Pub.103)の国内制度等への取入れ(現存被ばく状況関連)に係る論点整理」 というPDFファイルを見つけました。

どんな論点だろうかと読み出したら、ICRPの勧告の具体的な条項を挙げていかに日本の現状に無理やりにでも当てはめるか、という苦心の論点のようですが、興味深い点がいくつかあります。まずこのポストはその一点目、食品汚染に関する考え方です。文書の最後に出てきます。3番目のポイント以降にご注目。

(解説の骨子案)
1.放射性物質を含む食品の防護方策に用いられる参考レベルについて

  • 現存被ばく状況における食品を含む参考レベルの設定の考え方は、「2.参考レベルの範囲(1~20 mSv/年)の設定の考え方について」が基本となる。

  • 食品等の防護方策を実施するための参考レベルの単位としては、直接測定できるBq/kg、Bq/Lで定めるべき。(Pub.111 para86)

  • 食品に関する参考レベルについては、国際貿易用のものとしてコーデックス委員会のガイドラインレベルを用いることが考えられる。同ガイドラインレベルは食生活のうち放射性物質を含む食品が最大10%を占めると想定した場合に、線量レベルが1mSv/年になることを基準としている。食品の10%が汚染されているという想定は地域社会によっては適切ではない可能性があるため、食品の参考レベルは同ガイドラインより低い値に定めると良い。逆に、汚染が影響する食品がごく少数の品目である場合には、汚染基準をもっと高い値に定めても良い。また、伝統の中に深く組み込まれているものや、共同体全体の経済にとって必要不可欠な地域産物を存続させるためにも、汚染基準を高めに定めてもよい。(Pub.111 para86)

  • 同ガイドラインレベル無期限に適用されるものである。コーデックス委員会によると、食品は同ガイドラインレベルを上回らない限り、人間が消費しても安全とみなすべきであるとしている。(Pub.111 para89)

  • 汚染された食品の販売に対して制限を課すことによる地域経済の混乱、消費者の選択や汚染されていない食品の提供による市場占有率の喪失は、線量低減に有益という観点から正当化されてはならない(チェルノブイリ事故後のノルウェーにおけるラップ民族が生産するトナカイ肉に関する参考レベルの事例参照)(Pub.111 para87、付属書A.7.)

え?無期限?

それに、最後のポイントでは、『線量低減に有益でも、汚染食品の販売に制限をかけてはいけない、消費者が汚染されていない食品を求めたり、それを提供することによって汚染食品の市場占有率が下がるようなことは、許されない』、とそう言っているんですか?

ということは、消費者が汚染食品を買い続けて市場占有率を保てるようにしなくてはいけない、というのが審議会の考え方なのです。それも無期限に。

東北、関東の広い地域から生産される食物が放射能に汚染されている状況と、ノルウェーのラップ民族が売るトナカイの肉を比べるなど、ちょっと呆れて物が言えません。ラップ民族が売るトナカイの肉はノルウェー中に販売され消費されていた食品だとでも言うのでしょうか?

また、上から3番目のポイントは何を言いたいのか良く分からない表現ですが、とどのつまりは生産を守るために何とか汚染基準を高く保つための方便方策を探し出しているように思えます。

コーデックス委員会CODEX Alimentarius)には日本は1966年に加盟、国連のFAO(Food and Agriculture Organization)、WHOが設置した国際機関です。農林水産省と厚生労働省が協力して日本のコーデックス委員会を運営しているようですが、食品に関する基準、規制ばかりでなくサプリメントなどの規制まで、国の権限を越えて、国際機関の官僚が強い発言権を持つ、という、なんとも不透明な機関です。

コーデックス委員会に反対する人々も多く、アメリカでは小規模、有機農法の農場を経営する人々、有機農法で作った食品を食したい消費者が断固反対しています。コーデックス委員会の「勧告」を成文化することで利益を得るのが、モンサントのような、遺伝子組み換え作物と農薬を大量に使う大規模農業形態を推し進めるビジネスだからです。モンサントの元副社長を米国食品医薬品局に送り込んだオバマ大統領ですから、国の姿勢は明らかです。

コーデックス委員会の「勧告」はあくまで勧告で、従わなくてはいけない義務はないのですが、実際には各国政府が「勧告」を自国でなしくずしに法制化している状況です。放射線審議会もそのようにする意図を、上から3番目のポイントで明確にしています。

放射線審議会のメンバーも別に公的に選ばれたわけでもなんでもなく、それでもこの方々のご見解がやがて法律となる。まあコーデックス委員会の放射線版、といったところでしょうか。

日本国憲法(第1条)の「主権在民(国民主権)」とやらは、まあ「うそも方便」の類だったんでしょう。

厚生労働省まとめの食品放射能検査で検出限界値のみ記載してある府県

10月6日発表分から。

青森県: 検出限界セシウム134が20または25ベクレル、セシウム137が20ベクレル

宮城県: 検出限界20ベクレル。牛肉で300ベクレルを超す値が出ています。



群馬県: 検出限界25ベクレル

長野県: コメの検出限界20ベクレル、野菜果物5、20、30、35ベクレル、牛乳3ベクレル



京都府: 検出限界50ベクレル(セシウム134,137合計)



島根県: 検出限界50ベクレル(セシウム134、137合計)

10月6日分のまとめにはありませんが、岩手県も牛肉の検出限界25ベクレルで、たとえセシウム134が24ベクレル、137が24ベクレルだったとしても、数字となって出てきません。

これとは全く対照的に、山形県の牛肉などは小数点以下の数字まで報告しています。茨城県の検査も1ケタ台の数字がちゃんと報告されています。静岡県の検出限界は10ベクレルですが、それでも上記の県の検出限界よりは格段に低い。

もっとすごいのは栃木県。牛肉に関しては暫定基準値以下、としか発表しません。500ベクレル以下のセシウムならすべて安全。実際、つい先日も、鹿沼市の小学校給食をPRに利用して、県産の牛肉を小学生に食べさせていましたから。

結構気になったのは静岡県の牛肉。富士宮産のものだそうですが、セシウム合計で数十ベクレル、多いものは80ベクレルを超えています。栃木、群馬の牛肉が静岡と同等以上に汚染されていないことは無いだろうと思いますが、群馬はセシウム合計で50ベクレル未満、栃木にいたっては500ベクレル未満は表示もしないので、確実なことは分かりません。

Tuesday, October 4, 2011

キロ当たり30万ベクレルのセシウムが発見された福島市渡利地区はこんなところです

福島市の「桃源郷」とも呼ばれるところだそうです。1万7千人の人が住む場所だ、と福島市のサイト

このような美しい場所を破壊したのが福島第1原発事故だったわけです。キロ当たり30万ベクレルのセシウム検出のニュースはこちらでどうぞ



(写真の著作権: Shejapan.com このブログに使用する許可をいただいています。ありがとうございます。)

東京都が岩手県宮古市のがれき引き受けを決定した根拠

災害がれき3割、残りの7割を一般ごみにして混ぜて燃やした灰の放射性物質が133ベクレル/キロだったためらしいことが東京新聞10月5日付けの記事から窺えます。

東京都の住民無視、議会無視のがれき処分協定については先日ポストでお出ししました(ここここ)。協定についての記事(産経新聞)の中には「133ベクレル」という数字は出ていますが、それが一般ごみと混ぜて燃やした結果だったとは。

東京新聞の記事は川崎市長の、被災地の放射性を帯びたがれきの川崎市での処理について、「心配する人たちの心配のタネが全然ない形で取り組んでいる」という、楽観的な、見ようによっては市民を馬鹿にしたような市長のコメントがメーンですが、その中に東京都が9月30日に岩手県と交わした協定にも触れています。(赤字強調部分)

『東日本大震災の被災地の廃棄物処理をめぐり、川崎市の阿部孝夫市長は四日の記者会見で、協力表明をした四月に市民から抗議が出たことに関連して「心配する人たちの心配のタネが全然ない形で取り組んでいる」と述べた。 (山本哲正)

 『会見では、東京都が九月末に岩手県宮古市のがれきを受け入れ都内で処分すると発表したことに関連して、報道陣から質問があり、市長は、川崎市は都 のように単独では進んでいないとしつつ「全国的に協力する第一歩になることを期待。都を核に、周辺が協力ということはあり得る」と述べた。

 『都の場合は宮古市で九月に調査し、約三割の災害廃棄物をほかのごみと混焼した焼却灰の放射性セシウム濃度が一キロ当たり一三三ベクレルだったこと が背景にある。ただ、災害廃棄物の広域処理を推進する環境省は、岩手県陸前高田市、宮古市の七月の焼却灰算定値を、多くても同四八九五ベクレルで「埋め立 て処分が可能な同八〇〇〇ベクレルを下回り、受け入れ側に焼却灰の一時保管といった負担をかけることなく、埋め立て処分ができる」と評価している。

 『川崎市の焼却灰(飛灰)は九月に最大で同一七六〇ベクレル。同環境局職員は受け入れた場合の影響について「入れてみないと分からない部分は正直ある」と語る。

 『環境政策シンクタンク「環境総合研究所」の鷹取敦調査部長は「汚染のひどさに地域差があり、被災地の廃棄物だから高度に汚染されていると一律には 言えない。宮古市の場合、都と比べて高いわけではない」としつつ、「ただ放射性セシウムが含まれていることは事実。首都圏も汚染され、ごみを燃やすことの リスクが高まっていることを認識した説明をしないと、言葉が足りない」と話している。』

放射性がれきを全国津々浦々で処理させたい環境省のデータは、宮古市のがれきの焼却灰の汚染度は4895ベクレル。東京都で測った汚染度は放射性がれきが3割で133ベクレル。全部が放射性がれきだったとして、443ベクレル。環境省のデータが最高値だったとしても、その開きは10倍以上。

調査が適当としか言いようがありません。一般ごみを混ぜていない焼却灰は測ったのか、また、別の箇所でも測ったのか。受け入れるために低い値を探した、と勘ぐりたくなるほどの、環境省データとのギャップです。

川崎市長の言う、「都を核に、周辺が協力」する体制は着々と、住民が何をほざこうと、整えられつつあるようです。

Monday, October 3, 2011

南相馬市の幼稚園除染:放射線量は下がったか?

東京大学アイソトープ総合センター(児玉龍彦教授)の協力で市内の除染作業を独自に進めている南相馬市ですが、厳しい現実は神戸大の山内教授が福島市渡利地区の除染を評価した結果とどうも同じことになりそうです。

つまり、除染は汚泥を取り除くにとどまり、放射能を取り除く、という本当の意味での「除染」は出来ていない。

南相馬市のサイトに、市職員が7月30日に行った石神第二幼稚園の除染作業について、除染前と除染後の評価をまとめた結果が載っています。

まず「除染作業調書」をみると、

  • 屋上の排水溝は33マイクロシーベルト時の高線量だった(7月30日の作業時点で既に除去済み)

  • 室内の放射線量は1cmより2mのほうが高い

  • 放射線量が下がった箇所は屋上の排水溝、滑り台の下

  • 建物の洗浄は放射線量の低減にはつながらなかった

  • アスファルト素材は高圧洗浄機による洗浄でも放射線量は下がらず

  • 近くの住民から除染作業の水しぶきが敷地内に掛かった、と苦情、連絡が徹底していなかった(というより事前に通知していなかった模様)



そして、実際の放射線量測定地図を見ると、

  • 除染前と除染後の放射線量に違いが見られるのは雨樋の下、排水溝など

  • 除染後、放射線量が上がった箇所(園庭中央、駐車場)

  • 大きな差がなかった箇所(園庭の遊戯具、室内)


室内の放射線量が変わらない、しかも50cm高よりも2m高の放射線量が高い、というのは、まさに山内教授が指摘されるとおり、コンクリートの屋根は高圧洗浄機を使っても除染できないので線量が下がらず、従って室内の、それも高いところの線量が下がらない、ということなのでしょう。

このときの除染はあくまで「緊急除染」ということで行われたはずですが、いわゆる「本格的な除染」というものが一体どのような作業なのかすら、現時点では模索中、というのが本当の所ではないでしょうか。この幼稚園に園児が通いだしているのかどうかは存じません。通っていないことを望みます。

原発20~30キロ圏内の避難準備地域は一斉解除になりました。「除染」とやらが出来ようが出来まいがお構いなしに、住民は帰還することが前提となっています。

国家財政が破綻している、ということは何とも情けないことです。肝心なときに使うお金が無いために、あの手この手で基準を作り基準をいじって本来安全でもなんでもないものを安全と呼び、人を原発の放射線管理区域よりも汚染された広い地域に住まわせ続ける。そのくせ国は、ない金をいくらでも使って(とりあえず5000億円)福島県の産業振興に努めるとか。

(ちなみに福島県の本年度予算は当初予算約9000億、補正予算をあわせると現在約1兆6千億円ほどです。10月3日に新たに2000億円計上されています。)

どうせ借金を重ねてつけを国民に回すのならば、住民の方々を避難させるのにお金を使ってもらいたいと思うのですが、それでは利権の取り合いも談合もできませんからね。面白みがないのでしょう。

Sunday, October 2, 2011

フェアウィンズ、アーニー・ガンダーセン9月19日ビデオ私訳:「福島原発と同じ設計の原子炉に全て存在する問題点の概観」

ちょっと前のビデオですが、自分の英語勉強のためと記録用にざっと訳しておいたものです。よろしかったらどうぞ。いつもの通り、あくまで私訳です。

氏の英語はいつも非常に明確で簡潔、技術的な説明も平明でありながら正確です。(まあ先日の「ナトリウムが中性子捕獲」の言い間違いはご愛嬌。正解は塩素。)そのような英語を、正確かつ分かりやすい日本語にするのは、非常にいい翻訳の練習になります。(とはいえ、あまり時間をかけた訳ではないので、後で間違いを直すかも知れません。)

最新ビデオの中で、氏は福島原発で事故になったGEのマーク1型沸騰水型原子炉に関してごく初期の内から分かっていた欠陥を3つ挙げ、米国原子力規制委員会、および委員会を迂回する形でこの欠陥を(悪く言えば)ごまかしてきた原子力産業を批判しています。また、規制委員会、業界が使用する費用便益分析の欠陥を指摘、人命、財産の損傷を軽く見積もるシステムになっているため安全性改善が行われないのだ、と指摘しています。

原子炉の写真などもビデオで見られます。日本の皆様も事故以来格納容器、原子炉などの構造はだいぶおなじみになったかと思いますが、氏も分かりやすく解説しています。

以下、私訳:
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福島原発と同じ設計の原子炉に全て存在する問題点の概観


こんにちは、フェアウィンズのアーニー・ガンダーセンです。

最後にビデオを出してから3週間ほどたってしまいました。その間にラジオインタビューをいくつかアップしてはいましたが。だからといって、ここフェアウィンズは忙しくなかった、ということではありません。私は専門家としての証言で忙しかったのですが、マギーとケビン・ハーレイはもっと重要な、フェアウィンズの英語サイトを日本語でも立ち上げる作業に追われていたのです。私たちと共に、全てのビデオを日本語に翻訳してくださった、多くの献身的な日本人の方々にお礼を言いたいと思います。今日はフェアウィンズ日本語サイト(Fairewinds.jp)とフェアウィンズ英語サイト(Firewinds.com)が同時に同じビデオを紹介する始めての日です。ボランティアの皆さん、ありがとうございました。

過去数ヶ月間、米国原子力規制委員会(NRC)は、福島原発事故を受けて安全性の見直しを行っています。いくつかの重要な箇所について更に深く検討したレポートを出しています。このレポートはフェアウィンズのサイトに出してありますが、より重要なのは、「憂慮する科学者同盟」が原子力規制委員会の監視役として出した、原子力規制レポートを批判した文書です。この「憂慮する科学者同盟」の批判文書もサイトに乗せてあります。原子力規制委員会が挙げた福島事故からの教訓もさることながら、原子力規制委員会はただ安全性の問題を検討するだけでなく、有言実行、実際に安全性を高める方策を実行に移すことである、と「憂慮する科学者同盟」が認識したことは重要なことです。

さて、今日お話したいことは4つあります。原子力規制委員会の報告書には出ていないことですが、入っているべきと私は思います。その4つとは、格納容器、原子炉、爆発、最後に「シビアアクシデント緩和分析」と呼ばれるものです。

まずは、福島原発の沸騰水型原子炉、そしてそれと全く同じ型の35基の沸騰水型原子炉の格納容器についてです。今年の2月、事故のおよそ3週間前、マギーと私は散歩をしていました。マギーが聞いてきたのは、「私たちはずいぶんと沢山の専門レポートをやっているけれど問題がいたるところにある。次の事故はどこで起きると思う?」私は、どこで起きるかは分からないけれどもそれは絶対にマーク1型の沸騰水型原子炉の格納容器だと思う、と答えました。福島原発の原子炉はこれです。マーク1型の格納容器。この写真の沸騰水型原子炉格納容器は、1970年代に撮影されました。これは福島原発の原子炉と全く同一です。詳しく説明しましょう。

格納容器には2つの部分があります。上の部分はさかさまにした電球のような形をしていて、ドライウェルと呼ばれます。この中に原子炉が入るのです。その下にあるドーナツのようなものはトーラスと呼ばれ、ほとんど上まで水が入っています。理論では、原子炉が壊れると蒸気がさかさま電球部分[ドライウェル]からドーナツ部分[トーラス]に噴出されて沢山の泡を生じ、それで[ドライウェルの]圧力が下がることになっています。これ[ドーナツ部分、トーラス]は圧力抑制室と呼ばれています。写真の下のほうに写っているのは、格納容器のふたです。全部が組み立てられると、このふたが上にのります。

格納容器の厚さは約1インチ[2.54ミリ]です。中に入っている原子炉の厚さは約8インチ[約20センチ]。これについてはまた後ほど触れます。このタイプの格納容器は1960年代の後期から1970年代の初期にかけて設計されましたが、1972年には既に多くの人々がこの格納容器に懸念を表明しています。圧力抑制室の問題についての1972年の原子力規制委員会のメモを読んで見ましょう。

「圧力抑制室の構造を禁止しようというスティーブの案は魅力的だ。しかし、圧力抑制室は原子力業界の全ての人々に受け入れられており、その中には原子炉安全指針規制委員会、諮問委員会の面々も入っている。世間一般の通念として、しっかり根付いてしまっている。この神聖なポリシーを覆すことは、特に現時点では原子力の終焉ともなりかねない。操業許可が出ている原発の運転に疑問を投げかけることになり、それによって起こるであろう混乱に私は耐えられそうにない。」

つまり、1970年代の初期には、原子力規制委員会はこのタイプの格納容器には欠陥がある、ということを認識していたのです。1970年代の半ばには、下へ行くべき力が逆に上に行っていることに気づき、格納容器に大きなストラップが取り付けられました。更に80年代になると、また別の問題が発生しました。スリーマイル島事故の後、このタイプの格納容器は水素ガスの蓄積で爆発する恐れがあることに気が付いたのです。このような危険は1970年代の設計時点では考慮に入れてなかったものです。そこで考え出されたのが、格納容器の脇につけるベントでした。ベントは圧力を逃がすように設計され、格納容器は圧力を閉じ込めるように設計されているのです。

放射能を閉じ込める[という格納容器の本来の役割]どころか、もし格納容器を爆発に耐えうるようにするには格納容器の側壁に穴を開けて「格納容器ベント」を作らなくてはいけない[逆に言えば、ベントを作らないと格納容器が爆発するかもしれない]ことに気づいたのです。

これらのベントは1980年代の後半に付け足されたのですが、原子力規制委員会がそのように要求した結果ではありません。原子力業界がやったのは、原子力規制委員会が要求してくるのを避けるために、業界の自助努力とすることでした。ベントを自主的に取り付けたのです。そう言えばいかにも自発的に率先してやったことのように聞こえますが、実はそうではありません。もしベントが原子力規制委員会の要求として出ていたら、安全性を危惧する市民、科学者に対してベントの取り付けが必要な原発の操業許可を公開しなければならなかったからです。原子力業界が自主的にベントを取り付けたことで、2つのことが起こりました。1つは、本当に安全かどうかを検証するプロセスに一般市民が参加出来なかったこと、もう一つは原子力規制委員会自体がこれらのベントを検証して実際に安全かどうか判断することが出来なかったこと。つまり、検証プロセスが全く脱線してしまったのです。

これらのベントは福島事故まで試されることはありませんでした。このタイプの格納容器が試されることもありませんでした。実際、福島で3回のうち3回とも失敗しているのです。[爆発のあった1号機、2号機、3号機のこと。]振り返ってみれば、何も驚くには当たらないのですが。

電源が喪失した場合にこれらのベントを開ける作業の手順によると、誰かが放射線防護服に身を固めて原発の中心にある巨大な弁のところへ行き、クランクを200回まわして弁を開けることになっています。想像できますか?蒸気、爆発、放射能漏れ、原発事故の真っ只中で、従業員を原発に行かせてベントのバルブを開けるためにクランクを200回まわさせる。ベントは格納容器の構造で失敗した2つ目の応急処置でした。[一つ目は圧力抑制室。]そもそも格納容器は40年前の設計時点で小さすぎたのです。

以上のことを考え合わせると、こう質問しなければなりません。マーク1型原子炉の格納容器をこのまま使用することが許されて良いのだろうかと。原子力規制委員会の姿勢は、「ベントをより強固なものにする」というものです。これはいい考えとは私には思えません。

ここまではマーク1型原子炉格納容器に関することをお話して来ましたが、次にお話したいのはこの格納容器内に入っている原子炉のことです。[さかさまの]電球[の形のドライウェル]とドーナツ[の形の圧力抑制室]が格納容器で、その中に原子炉が入っているのです。

沸騰水型原子炉では、制御棒は原子炉の下部から挿入されます。加圧水型原子炉では上部から挿入されます。福島原発の原子炉全て、そして世界中に存在する同じデザインの原子炉35基では、制御棒は原子炉の下部から挿入されるのです。これはユニークな問題を提起します。この非常に重要な違いに原子力規制委員会は現在注意を払っていません。

加圧水型原子炉で炉心溶融が起こっても、原子炉の底には穴がありません。原子炉の底は8インチから10インチ[20~25センチ]の金属。炉心が底を貫通(メルトスルー)するにはこの厚い金属の底を破らなくてはならないのです。しかし、福島原発で起こったのは違います。福島の原子炉は沸騰型原子炉なのです。底には穴が開いています。福島原発にあるような、米国、日本のその他の原発にあるような沸騰水型原子炉では、炉心が原子炉の底にある場合、この60もの穴のために、炉心が底を貫通するのはたやすいのです。8インチ[20センチ]の鉄の底を貫通する必要は無いのです。薄い配管を貫通して原子炉の底の穴から出てしまえば良いのです。


沸騰水型原子炉の底の穴が問題だ、と考えるのは私だけではありません。先週、福島事故の直後に原子力規制委員会が書いたEメールが明らかになりました。それによると、もし炉心溶融(メルトダウン)が起こり溶けた炉心が原子炉の底にあるとしたら、原子炉の底に開いている穴から高温の溶融炉心が加圧水型原子炉の厚底のデザインの場合よりもずっと簡単に、ずっと早く原子炉の外に出てしまう、と委員会が認識していたことが分かります。これはどの沸騰水型原子炉にも共通する欠陥です。原子力規制委員会は、福島のような沸騰水型原子炉の炉心貫通の可能性は加圧水型原子炉に比べるとはるかに高い、ということを認めていないのです。[???すぐ前に認識していた、と言ってるのですが...]

3番目の問題は以前のビデオでも詳細に検討した問題です。それは、3号機の爆発が爆轟、デトネーションであり、爆燃、デフラグレーションではなかった、ということです。これは衝撃波のスピードと関係しています。3号機の爆発による衝撃波は音速よりも早く伝わりました。この違いに原子力規制委員会も原子力業界も目をつむっているのです。

格納容器は音速を超える速さで伝わる衝撃波に耐えることが出来ません。しかし、格納容器は全て、そのような衝撃波は起こらない、という前提で設計されています。福島の3号機では、それが実際に起こりました。これがどのようにして起こったのかを理解し、全ての原子炉でこのような衝撃波の影響を少なくするような方策を取らなくてはなりません。建屋の大きさと爆発のスピードを考え合わせると、衝撃波のスピードはおよそ秒速1000フィート[305メートル]です。音速は一秒間に約600フィート[183メートル]ですので、格納容器に大きなダメージを与えることになります。格納容器はこのようなダメージを想定した設計にはなっていないのです。それでも、原子力規制委員会はこのことに注目していません。

ということで、原子力規制委員会と原子力業界が人々に知って欲しくない問題が3つあることになります。一つ目は、マーク1型原子炉格納容器の運転すら許していいものなのだろうか、ということ。2つ目は、沸騰水型原子炉は加圧水型原子炉に比べて炉心貫通(メルトスルー)になりやすいのかどうか。3つ目は、格納容器は爆轟の衝撃波に耐えられるのかどうか。

原子力産業が安全性向上のための改良を行ないたい場合には、「費用便益分析」と呼ばれるものを実施する必要があります。分析の結果、改良によって社会にもたらされる便益が、改良にかかる費用を上回ることが示されなければ、改良はできません。

それに関連して今日最後にお話したいのが「SAMA」についてです。SAMAとは「過酷事故緩和代替策分析(Severe Accident Mitigation Alternatives Analysis)」のことです【※原子力安全委員会は"Severe Accident Mitigation Alternatives"で「過酷事故緩和代替策」というの訳語を使っています】。この分析を行なうには、非常に手の込んだコンピュータープログラムを使って、大事故が起きたときに社会がどれだけの損失を被るかを具体的に計算します。この場合の損失とは、失われる人命と、財産への被害を指します。

ところがこのコンピュータープログラムは間違っているのです。間違っていることはかなり前から知られているのに、依然として使われています。原子力規制委員会はワシントンDCの各省庁のなかで、最も低い値を人命の損失に割り当てています。また、事故後の除染の費用もわざと低く見積もっています。つまり、改良のための費用と社会が受ける便益を比べるときに、コンピュータープログラムがわざと便益を過小評価するようになっているのです。その結果、改良のための費用がかかりすぎ、あなたや私や社会が受ける便益が小さすぎることになって、改良を施す必要はないように見えてしまうのです。

福島の事故からはそれが間違っていることがわかりました。福島をきれいにするには何千億米ドルもかかります。最低でも2000億米ドルはかかるでしょう。ところが、原子力規制委員会が使用するコンピュータープログラムは、絶対にそういう高い数値を弾き出すことはありません。

費用便益分析のプログラムを修正しない限り、次のような事態が起こります。原子力規制委員会が改良すべき問題点を洗い出しても、コンピュータープログラムによって「そうするだけの価値がない」という答えが出てしまうのです。社会が直面しているリスクがあまりに小さすぎるので、費用をかけて改良する必要はない、と。

問題はコンピュータープログラムにあります。失われる人命と財産の被害に割り当てられる数値を上方修正しない限り、安全対策のための改良に伴う費用と便益を正しく判断する手立てが私たちにはありません。

今日お話したかったのはだいたいそんなところです。原子力規制委員会と日米双方の原子力産業が目を向けていない重要な問題は、少なくとも3つあります。格納容器の設計、沸騰水型原子炉容器、そして爆轟、デトネーションによる衝撃波です。しかし、かりにきちんと目を向けたとしても、費用便益分析を適切に実施して社会の損失を正しく評価しなければ、そうした領域で改良がなされることはないのです。

日本から見てくださっている皆さん、改めましてありがとうございます。そしてFairwewinds.jpへようこそ。この170日間Fairewinds.comを見てくださった皆さんにもお礼を申し上げます。

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(H/T東京茶とら猫

Saturday, October 1, 2011

東京都内で1日100トン以上の処理能力を持つ産業廃棄物焼却処理業者は東京電力の子会社

(UPDATE 10/19/2011 めでたく東電子会社、東京臨海リサイクルパワーが、岩手の災害がれきの焼却を行うことに。10月19日付けポストご参照。)

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東京都が岩手県とさっさと提携した災害がれき処理の協定についての新聞記事は前のポストでお出ししましたが、東京都環境局では、早速中間処理業者を公募しています。

先行事業として3社から5社の民間処理業者を登録するための募集らしく、先行事業での処理がれきは「破砕処分」にする「建設混合廃棄物、廃機械・機器類」とのこと。つまり、これらの廃棄物を叩き潰して細かく砕き、おそらく砕いたものを更に選別し、燃えるものは燃やしそうでないものはリサイクルか埋め立てる、という処分方法のようです。(ご参考までに、神奈川県平塚市の粗大ごみ処理工程をご参照。)

都の応募要綱を見ると、これら民間処理業者が備えていなければならない処理能力は次の通り

(資料の4ページ目。クリックすると大きくなります。)

ここで、表の一番右端の欄にご注目。可燃部分の残滓物をどのように処理するかを規定したものですが、この欄と、下の注意書きをみると、可燃部分の残滓物は「バグフィルター及び活性炭吹込装置若しくはバグフィルター及び湿式排煙脱硫装置」を備え、1日100トン以上の処理能力を持つ都内の産業廃棄物処理施設で焼却すること、となっています。

そこで都内の産業廃棄物焼却処理業者を検索したところ、100トン以上の処理能力を持つのは唯一1社、江東区青海の東京臨海リサイクルパワー(株)のみ。都の東京湾埋め立て処分場の中央防波堤内側埋立地内にある、東京電力が出資、設立した会社です。

東京臨海リサイクルパワーのサイトを見ると、9年前の2002年に5社の共同出資で発足。共同出資者は

  • 東京電力株式会社
  • 東電環境エンジニアリング株式会社
  • 清水建設株式会社
  • 荏原環境プラント株式会社
  • オリックス環境株式会社

2004年には東京都から中央防波堤内側の土地を購入し、プラントを建設。一日の産業廃棄物処理能力は550トン。

面白いのは「事業スキーム」、つまりどのように金を儲けるか、ということですが、中間処理業者である程度処理済の産業廃棄物を受け入れ、環境省、経済産業省からの補助金を受け、廃棄物を処理、リサイクルして儲ける、という形態。発電もあり、電気は東京電力に売却。


東電は原発事故の賠償制度のおかげで今後も会社は存続、そればかりか、東京都のがれき処理協定では都の指定する焼却処理の条件に唯一合致するような子会社を傘下に持っている。安泰ですね。現在の社長は2009年に東京電力から就任した方です。

国敗れて東電あり、でしょうか。

産経新聞:東京都の被災がれき受け入れ抗議は2日で445件

10月1日付けの産経新聞記事によると、東京都が議会にもろくに諮らず都民にも知らせず岩手県と9月30日に結んだがれき処理の協定について、次のように報道。 

東日本大震災で発生した岩手県の災害廃棄物(がれき)の受け入れを発表した東京都に対し、「放射能を拡散させないでください」などと反対する電話やメールが寄せられていることが30日、分かった。

 都環境局によると、受け入れが発表された9月28日夜以降、29日に162件(電話129件、メール33件)、30日に283件(電話222件、メール61件)の意見があった。大半が「被災地支援も分かるが、子供がいて不安」「放射能を入れてくれるな」などと受け入れに反対する内容という。

 来年3月までに岩手県宮古市のがれき計1万1千トンを処理する予定。鉄道で都内の民間破砕施設に輸送して処理後、東京湾に埋め立てる。このがれきを処理した焼却灰を岩手県が検査したところ、1キロ当たり133ベクレルの放射性セシウムが検出されたが、国が災害廃棄物の広域処理で定める基準値(1キロ当たり8千ベクレル)を大幅に下回っている。

 都は30日、岩手県などと災害廃棄物の処理基本協定を締結。今後は宮城県とも同様の協定を結び、岩手、宮城両県のがれき約50万トンを受け入れる方針。

さあ東京都民の皆さん、2日でたった445件の抗議でいいんですか?

東京都環境局

広報窓口
電話: 03-5388-3436
ファックス: 03-5388-1377

廃棄物対策部
電話: 03-5388-3576
ファックス: 03-5388-1381

もっとも、阿修羅の掲示板をのぞいたらこんなコメントが:

『都庁に電話しました。東京は宮古の瓦礫よりはるかに汚染されていますよ、と言われました。』

何だか妙な理屈ですね。この理屈を広げると、より汚染のひどい場所に汚染を持ち込めばよい、ということは東日本中の放射能汚染がれきや汚泥を福島県に持っていって処分するのがベスト、という理屈になりそうですが?

そんな汚染の東京都にオリンピックを誘致したがっている知事もいますが。