Tuesday, January 31, 2012

福島第1原発4号機、原子炉ウェル・使用済み燃料プールの水が漏洩していた

東京電力の2月1日午前の記者会見での情報です。日本語の記者会見を聞きながら英語で取ったメモを基にして書いた英語ブログポストをみて、日本語のポストを書く、という妙なことをやっていますが、記者会見のビデオは東電のサイト、ここで1週間分ご覧になれます。

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東電は、4号機原子炉建屋1階のジェットポンプ計装ラック内の計器テストラインから原子炉水が漏洩、と発表。少なくとも6リットルの水が漏れたものと思われる。建屋外部には漏れていない。

4号機の原子炉ウェル、圧力容器は水を張った状態(事故が起きた時、4号機は定期点検中だったため)で、現在原子炉ウェルと使用済み燃料プールの間は水が自由に行き来できる状況になっている。1月1日の地震で、原子炉ウェルと燃料プールの間のゲートが緩んだため。

つまり、漏れた水は使用済み燃料プールの水と混ざったものであり、検出された放射能濃度からも察することが出来る(1立方センチメートル当たり35.5ベクレル、つまり1リットル3万5500ベクレル)。

以下、東電の2月1日午前の記者会見からの情報。(ちなみに、会見にはいつもの松本さんはおらず、会見を仕切る広報の人はほとんど技術的なことが分かっていない様子で質問にも答えられず、記者がいらいらしていた。向かって左の人が技術が分かり、専らこの人が答えていた。)

  • 1月31日午後10時30分ごろ、4号機のジェットポンプ計装ラック内の計器テストラインから水が漏れているのを作業員が発見。この計装ラックは原子炉建屋1階の南西コーナーにある。

  • テストラインの弁が壊れており、鉛筆1本分の太さの水が流れていた。

  • テストラインは圧力容器内のジェットポンプにつながっている。
  • 圧力容器内にはジェットポンプが20あり、圧力容器内の水を攪拌するような働きをする。

  • 弁のダメージがどのようなものかは分かっていない。おそらく凍結によるものではないと思う。建屋が爆発したときのダメージかもしれない。建屋のフロアにはがれきが沢山あり、計測ラックも傷が付いている。

  • 漏洩は、31日午後10時43分、圧力容器からのメーンラインを止めた時点で止まった。

  • 漏洩した量6リットルというのは、がれきの中で分かる範囲、ということで、実際はこれより多いかもしれない。

  • 水は原子炉ウェルからのもの。原子炉には燃料は入っていないが、水を張ってある。

  • 漏れた水の放射能濃度は一立方センチ当たり35.5ベクレル。(それが何の核種を測ったものなのか、と記者が聞くが、結局答は無かった。)従って、これは使用済み燃料プールとつながっている原子炉ウェルから来たものだと推測。

  • 原子炉ウェルと使用済み燃料プールはゲートで仕切られているが、1月1日の地震でゲートに隙間が出来、「つーつー」(東電の言)になっている。

  • 東電は、何か問題が起こっている可能性があることを前日の1月30日から知っていた。30日の午後3時50分に、スキマーサージタンクの水位が急激に下がっていることに気づいたのである。そのときは、エアフィンクーラー(使用済み燃料冷却)を午後3時13分に再起動させたすぐ後だったので、その影響だろうということで、1日ほど様子を見て、原因を確かめることにした。

  • スキマーサージタンクの水位は毎時60ミリから90ミリのペースで低下していた。通常、現在の気温では、水位はほとんど一定している

  • 1月31日午後10時30分になって、作業員がジェットポンプテストラインのバルブが壊れており、そこから水が漏れているのを発見した。

  • 漏洩を止めた時点で、スキマーサージタンクの水位の低下は止まった。
  • 水は原子炉ウェルと使用済み燃料プールの間を自由に行き来する状態になっており、原子炉ウェルの水位が下がるということは使用済み燃料プールの水位が下がると言うことであり、それがスキマーサージタンクの水位に反映される。

  • 漏洩はおそらく建屋内に留まっており、地下の滞留水に合流したと思われる。

スキマーサージタンクの水位の低下が最初に発表されたのは1月1日の地震の後でしたが、そのときの説明は「地震によって原子炉ウェルと使用済み燃料プールの間のゲートに隙間が開いたため燃料プールから原子炉ウェルに水が流れ込み、その分スキマーサージタンクへ流入しなくなったため、自然の蒸発もあってスキマーサージタンクの水位が下がった、という説明でした。当時の低下量は一時間80ミリ、今回と同じレベルです。

それから1ヶ月近くたってやっと、東電は「スキマーサージタンクの水位が使用済み燃料プールの水位の指標になる」と認めたのです。

スキマーサージタンクの水が一時間に60~90ミリ低下しており、計装ラックのテストラインの漏洩が発見されて止まるまで29時間あったのですから、漏洩したのが6リットルであろうはずもありません。1月からの4号機のスキマーサージタンクの水位を注目していた(奇特な)方がいらっしゃればお分かりになると思いますが、水位は1月1日以降、かなり大幅に上下していました。水位が上がったときは東電が注水を行ったときではないかと思われます。ということは、29時間どころではなく、1月中ずっと漏れていたのに気づかなかった、ということになるのではないかとも思われます。

東電は、「計算してまたお知らせしたいと思いますので」、という例のせりふでした。

スキマーサージタンクの水位は、東電サイトのプラントパラメータのページに出ています。

Sunday, January 29, 2012

【苦笑】環境省ががれき広域処理推進のために作成した空間放射線量マップは汚染を過小評価

文部科学省の航空機モニタリング調査結果を元に、環境省で独自に作成したという空間放射線量地図が、環境省が放射能に汚染されている災害がれきの広域処理をますます推進するために立ち上げたサイトの中に出ています。

そこで、元の文部科学省の空間放射線量地図と比べてみることにしました。文部科学省の地図は、空間線量が毎時0.1マイクロシーベルト以下の場所は濃い青、環境省の地図は、0.23マイクロシーベルト以下の場所が白色。あれ、ちょっと単位が恣意的ではありませんか?

凡例を比べると、0.5~1.0マイクロ以上は両省とも単位が一致していますが、その下は文部科学省が「0.1マイクロ以下、0.1~0.2マイクロ、0.2~0.5マイクロ」の三段階に分けているところを、環境省では「0.23マイクロ未満、0.23~0.5マイクロ」の二段階。0.23マイクロは決して低い値ではありません。この線量の場所に1年間居ると、外部被曝量が単純計算で2ミリシーベルトになります。

環境省は、0.1マイクロも0.23マイクロも一からげにして、「安全」を示すのであろう白色で地図を描いています。

環境省の地図をざっと見た人は、なんだ、福島第1原発事故は原発のせいぜい30、40キロ圏内が問題で、あとは大したことなかったじゃないか、と思うのではないでしょうか。宮城、千葉、茨城もほとんど汚染されておらず、東京、埼玉、神奈川に至ってはまっさら。

東京都が既にがれきを焼却を開始している宮城県女川町のあたりの線量も、文部科学省の地図では分かりますが環境省の地図にはまったく出てきません。宮城県北部、岩手県南部(陸前高田市など)の海岸沿いの線量も、環境省の地図では0.23マイクロ未満としか分かりません。

さすが環境省、国民をここまでなめるかなあ、と感心しました。

Saturday, January 28, 2012

ケビン・メア: 「米国政府は福島第1原発の危機的状況に非常に強い恐れを抱いていた」

フランスのAFP通信社の記事で、元米国務省日本部長ケビン・メア氏はこのように述べ、更に、米国政府は駐米日本大使を呼んで、「一体何をしているのだ、もっと真剣に取り組まないと、とんでもないことになる」と通告した、と言っています。

AFP記事はメア氏が最近米国のヘリテージ財団で行った講演の様子をまとめたものです。その中で2点ほど目新しい発言がありましたが、オリジナル記事の英語と日本語の翻訳では結構語感が違うのにも気が付きました。その2点とは、

1つ目:

AFP日本語記事: 
次々と明らかになっていった原発事故の危機に、米政府の舞台裏は戦々恐々としていたと語った。

AFPオリジナル英語記事
the US government was privately terrified over the unfolding crisis

英語記事部分の私訳: 
米国政府は、表立っては表明しなかったものの、展開しつつある危機的状況に非常に強い恐れを抱いていた。(と言うか、恐ろしくてたまらなかった、という感触。)

舞台裏、は訳しすぎてかえって意味があいまいになっていると思います。

2つ目:

AFP日本語記事:
破壊された原発の上空からたった1機のヘリコプターが水を撒いているテレビの画面を、メア氏はぞっとした思いで見ていたという。「これが日本が尽くせる最善の手段なのか?――正直、何があったかといえば、米政府は駐米日本大使を呼びつけ、何をしているんだ、事態をもっと深刻に捉えるべきだと警告したのだ。何が起きるか予測はつかない、と」

AFPオリジナル英語記事:
Maher said that he watched in horror as he saw television footage of a sole helicopter dropping water on the stricken plant. "Is that the best Japan can do?" Maher said. "Frankly what happened is the US government called in the Japanese ambassador and said, look, you have to take this stuff seriously. We don't know what's going to happen."

英語記事部分の私訳: 
ヘリコプターが一機、破壊された原発の上に水を投下しているテレビ画像を見て、メア氏は恐怖で逆毛が立つ思いがしたという。「これが日本ができる最善なのか?今だから言うが、この後、米国政府は駐米日本大使を呼びつけてこう言った。いいか、事故に真面目に対応しろ、これからどのようなことが起こるか、我々にも分からないのだ、と」

Look, you have to take this stuff seriouslyは、意訳すると「おい、何をおちゃらけているんだ、真剣に取り組まないと大変なことになるぞ」、ということです。

Terrified、Horror。日本語になると、「恐怖」としかなりませんが、Terrifiedの原型のTerrorは「非常に強い圧倒的な恐怖」、Horrorは元のラテン語の語源を辿ると、「逆毛が立つような恐怖」なのです。実際、事故を日本の国外から見ていた人々も、底なしの恐怖(彼らは最初から画像を見ていましたから)を感じていました。日本政府、また大多数の日本人には、当時も、現在も、そのような恐怖感があるとは思えません。

ヘリからの水の投下は、確か管総理か海江田経産大臣が、「あれはアメリカ向けに、テレビ受けするからやった」とか言っていませんでしたっけ?それを見て、アメリカ政府は感心するどころか恐怖に駆られて駐米大使を呼びつけていたのです。

2012年1月26日付けAFP日本語版記事

沖縄発言で更迭の元米外交官メア氏、歯に衣着せぬ日本批判

【1月26日 AFP】米外交官といえば、自分が専門とする国にうやうやしく敬意を表し、引退後は研究職や企業ポストへ静かに身を退くのが通例だが、「沖縄はゆすりの名人」と発言したと報じられて更迭された元米国務省日本部長ケビン・メア(Kevin Maher)氏(57)は違う。

 日本語で自著『決断できない日本』を執筆し、福島第1原発の事故対応における日本政府のまひ状態を痛烈に批判した。30年にわたって日本で勤務し妻も日本人というメア氏本人も驚いたことに、同書は出版後数週間で10万部以上を売り上げノンフィクション部門のベストセラーとなった。

 2006年以降、交代した首相が6人に上る日本は、政治家が責任を引き受けないことによって機能不全に陥り、それゆえ難しい決断を下せなくなっているというのがメア氏の論旨だ。

■誰が日本をコントロールしているんだ?

 米ワシントンD.C.(Washington D.C.)のシンクタンク「ヘリテージ財団(Heritage Foundation)」で最近行った講演でメア氏は、12月に日本政府が原発は安定したとして出した「事故収束宣言」に異を唱え、「安定などしていない。東京は安全だが、福島第1(原発)の状況は相当悪い」と述べて一蹴した。

 メア氏は米国で学生を前に行った講演で「沖縄はゆすりの名人」などと発言したと日本のメディアに報じられ、米国務省日本部長のポストを更迭されたが、その翌日に東日本大震災が発生。その後1か月留任して、米国の対日支援タスクフォース調整官を務めた。

 講演でメア氏は、次々と明らかになっていった原発事故の危機に、米政府の舞台裏は戦々恐々としていたと語った。そして当時の菅直人(Naoto Kan)首相は責任を回避し、問題を東京電力(Tokyo Electric Power Co.、TEPCO)に転嫁しようとしたと非難した。「タスクフォースを率いながら『いったい、誰が日本をコントロールしているんだ』と何度も思った。政府は何もしていない。菅氏はヘリで視察に行き、邪魔をし、帰ってきた」

 破壊された原発の上空からたった1機のヘリコプターが水を撒いているテレビの画面を、メア氏はぞっとした思いで見ていたという。「これが日本が尽くせる最善の手段なのか?――正直、何があったかといえば、米政府は駐米日本大使を呼びつけ、何をしているんだ、事態をもっと深刻に捉えるべきだと警告したのだ。何が起きるか予測はつかない、と」

 東京は結果的に危険な状況にはならなかったが、米政府は一時、首都圏に住む約10万人の米国人を避難させるべきかどうかも検討していた、とメア氏は語った。

■昔は引責、今は責任回避が日本のカルチャー

 国務省日本部長を更迭された経緯については「過去のことだ」と述べた。現在はコンサルタントを行っていて不自由はないと言う。

 しかし更迭の決定の影には、ジム・スタインバーグ(Jim Steinberg)国務副長官(当時)とジョン・ルース(John Roos)駐日米大使がいたと非難した。「彼らはこの件について、ただ報道から消えて欲しかったのだ。だから、報道内容が真実かどうかを確かめるよりも、私をただポストから退けるほうが最適だと判断したのだ」

 日本に対する厳しい批判の一方で、多くの最近の米高官と同様にメア氏は、消費税引き上げや米国が後押しする環太平洋連携協定(Trans-Pacific Partnership、TPP)への参加を推進する野田政権に対しては明るい材料を見出している。

 また、『決断できない日本』への反発がほとんどない点に関しては、昔の日本はうまく機能していて、今こそその伝統に立ち返る必要があるというメッセージが、反感を持ち得た読者層にも受け入れられたと考えている。「私たちがかつて持っていた1980年代の(日本の)イメージは、日本企業で何かもし不祥事が起きたら会長が切腹するんじゃないかと心配するといったものだった。それが自分の犯したミスではなくても、彼は責任を取る、というイメージだ。しかし、今の日本では逆さまになってしまった」

 本の販促のため沖縄を訪れた際の驚きも振り返った。「抗議デモに集まったのは4人だけだった。在沖縄総領事だったときには、いつでも40人はいたのに」 (c)AFP/Shaun Tandon

Friday, January 27, 2012

【記録】2011年3月25日付けニューヨークタイムズ紙: 「3号機の原子炉容器には縦に大きな亀裂が入っている」「3号機作業員は放射線やけど」「放射能拡散パターンが普通ではない」

1号機、3号機が派手に爆発し、4号機がろくに報道されないうちにぼろぼろの姿になったものの、なぜか日本が「もう大丈夫だ、別になんてことはない」という雰囲気だった去年3月の下旬。海外では、これはとんでもない事故だ、という認識で、日本のメディアには出てこないニュースを出していました。それを取り上げて、日本政府、マスコミは、扇情的な記事で風評を煽る、けしからん報道だ、と抗議していました。

そのあまりのギャップに、このブログで福島原発事故記事を書き始めたのですが、当時は日本政府の言っていることと違うことを書くと必ず口汚くののしってくる方々が沸いて出ました。馬鹿らしくてやめようと思いましたが、今になればああいう手合いを「工作員」さんとお呼びするんですね。英語ブログにも、下手な、英会話学校の先生のような英語で、同様の方々が沸いて出ました。

それはともかく、そんな時期の3月25日、米ニューヨークタイムズ紙に福島第1原発事故の記事が出ました。その中に、匿名の原子力業界関係者の言として、

「3号機原子炉容器(圧力容器)には大きな亀裂が入っている」

という記載があったのです。その記事は数日後改訂され、その記載部分がごっそり落ちていました。ところが、ニューヨークタイムズの元の記事を転載していたニュースサイトから当該部分全文をコピーすることが出来、英語ブログで4月2日付けで記事にしました。

キャッシュには、該当部分は今でもちゃんと出ています。

日本語ブログでも書いた気になっていたのですが、書いてませんでしたね。今更ですが、その部分を訳してお出ししておきます。今改めてこの部分を読んだら、この匿名関係者は3号機圧力容器の亀裂の他にもとんでもないことを言っています。まずお読みください。

ニューヨークタイムズ紙2011年3月25日付け記事、”Japan Encourages a Wider Evacuation From Reactor Area”より、記事から消えた3号機の言及部分(英語ブログに保存):

Concerns about Reactor No. 3 have surfaced before. Japanese officials said nine days ago that the reactor vessel may have been damaged.

3号機に関する懸念は以前にもあった。日本政府は9日前、原子炉容器が損傷を受けたかもしれない、と発表した。

A senior nuclear executive who insisted on anonymity but has broad contacts in Japan said that there was a long vertical crack running down the side of the reactor vessel itself. The crack runs down below the water level in the reactor and has been leaking fluids and gases, he said.

ある原子力産業関連の役員は日本に広くコンタクトがあるが、匿名を条件に次のように語った。3号機の原子炉容器自体に、側面に長い、縦方向の亀裂が入っている。亀裂は原子炉の水位よりも下まではいっており、そこから液体とガスが漏洩している。

The severity of the radiation burns to the injured workers is consistent with contamination by water that had been in contact with damaged fuel rods, the executive said.

この役員によると、怪我をした作業員の放射線やけどのひどさは、損傷した燃料棒に接触していた水の汚染と合致するものだ、ということだ。

"There is a definite, definite crack in the vessel -- it's up and down and it's large," he said. "The problem with cracks is they do not get smaller."

「確かに、はっきりとした亀裂が入っている。上から下まで、大きな亀裂だ」、と彼は言う。「亀裂が問題なのは、いったん入ったら小さくなることはない、ということだ」

The contamination of the water in the basement of the turbine building where the workers were injured -- a separate building adjacent to the one that houses the reactor -- poses a real challenge for efforts to bring crucial cooling pumps and other equipment back online.

作業員が負傷したタービン建屋-原子炉建屋に隣接した別の建屋-の地下に溜まっている水の汚染は、冷却ポンプなどの機器を復旧する作業に大変な妨げとなる。

"They can't even figure out how to get that out, it's so hot" in terms of radioactivity, he said. A big worry about reactor No. 3 is the mox fuel. The nuclear industry has no experience with mox leaks, and it is possible that unusual patterns in the dispersal of radioactivity from the plant partly result from the mox, he said.

「水をどうやって排出するかすら見当がつかないのだ。水の放射能が余りに高い」。3号機の心配はMOX燃料だ。原子力業界はMOX燃料のリークに対処した経験がなく、原発からの放射能拡散のパターンが普通でない(異常)なのはMOX燃料のせいもあるのかもしれない、と彼は言う。

3号機圧力容器に亀裂が入っている、という情報だけでなく、

  • 3号機タービン建屋の地下水で被曝した作業員はかなりひどい放射線やけどを負っていた

  • 原発からの放射能拡散のパターンが普通でない(異常な)のはMOX燃料のせいかもしれない

  • (つまり、原発からの放射能拡散パターンは普通じゃなかった)

という、本当だったら日本には未だ出てきてない情報があるではありませんか。訳すために真面目に読んで、今になって気が付きました。

また、読んでいて思い出しましたが、当時は確かに東電も政府も、原子炉冷却ポンプなどは復旧できるようなことを言っていました。ポンプをどこかに特注している、というような話も出ていました。実際は復旧もへったくれも無かったわけですが。

もっとも、ニューヨークタイムズ紙が誤情報を訂正しただけ、という可能性ももちろんあります。ただし、ニューヨークタイムズ紙のような大手新聞では通常、誤情報の訂正は必ずそのように断って訂正が入ります。

福島第1原発事故の真相は未だ闇の中。これを闇のままにすると、国は国として二度と回復しない気がします。

Thursday, January 26, 2012

環境省による「除染」の定義(産経新聞): がんこな汚れを落とす掃除のようなもの、基本道具はスコップやタワシ

福島第1原発事故、およびそれによって引き起こされた広範囲の放射能汚染にまつわる記事を「放射能漏れ」と括って報道し続けている産経新聞に、20キロ圏内警戒地域の除染見通しに付いての記事が載りました。

記事自体は特にここで言及する意味は余りありませんが、記事の終わりに産経新聞が付け足した、「除染」の定義があります。これは記録の価値ありとみたので、以下にコピーしておきます。

「除染」が、「放射能汚染を取り除くこと」だと思っていらした方、残念でした。チェルノブイリ事故後の旧ソ連邦とは、確かに日本は全く違います。ハイテク技術立国の日本の「除染」は、要するに手作業による「大掃除」でした。

その「大掃除」を手作業でやっている最中に、既にお二人の作業員の方がなくなっています。(伊達市、広野町)

産経新聞2012年1月25日付け記事より、最後尾:

■除染 「がんこな汚れを落とす掃除のようなもの」(環境省幹部)で、基本は人手に頼ってスコップやタワシなどで行わ れる。環境省が昨年末に公表したガイドラインによると、落ち葉など容易に除去できるものは手作業で取り除く。屋根であれば高圧洗浄機で洗い流し、玄関など コンクリート部分であればタワシやブラシでこする。放射性物質が染み込んだ草地や土壌は、スコップやショベルカーなどで表面をはぎ取る。放射能を浴びない ように防護服を着るなど作業時の服装に注意しなければならない。

Tuesday, January 24, 2012

福島県「安全・安心フォーラム」パンフレット: がん以外の健康リスクは500ミリシーベルト以上の高放射線被曝でしか現れない

福島県の「安全・安心フォーラム~除染の推進に向けて~」を紹介する県のウェブページのリンクの一つを辿ると、郡山市で1月29日に開催予定のフォーラムのパンフレットに行き着きます。

お決まりの「がんばろう福島」のロゴが右上に、環境省の求人ポスターと同じ緑色、シルエットで犬を連れた子ども連れの家族、そして、福島ラジオのアナウンサーが司会をするフォーラムは福島県、郡山市、日本原子力学会が主催です。


県のページにあるとおり、このフォーラムは、除染作業を進めるにあたって、放射線についての県民の不安を解消して安心して福島に住み続けてもらうために行うものです。そのために、郡山のパンフレットでも分かるとおり、専門家を招聘し、市民の不安、疑問に答えます、と明記してあります。

ところが、このパンフレットの裏側には、既に想定問答が書かれています。質問の答はどれもこれも、まるで過去10ヶ月が存在しなかったかのような、非現実的な回答。

対話集会での質問事例:

Q: 除染によって本当に生活の場の放射線量は下がるのですか?
A: 効果的に除染をすれば下がります。汚染の状況を良く調べ、効率的な方法をとることが必要です。

Q: 除染後の土壌を埋設して保管した場合、地下水汚染や土壌汚染のおそれがないのか教えてください。
A: いったんセシウムが土壌に吸着すると、その表面に吸着し続けて容易に溶け出てこないことが知られています。そのため、地下水や周囲の土壌が汚染されるおそれは少ないです。

Q: 被曝によるガン以外のリスクはないのですか。
A: 心筋梗塞、白内障など、ガン以外の健康リスクについても、国際放射線防護委員会(ICRP)において議論されてきましたが、このようなガン以外の影響が現れるのは500mSv以上の高線量被ばくの場合であり、低線量被ばくでは考慮しなくてよいと考えます。



何を聞こうと、もう答は決まっているのです。

去年から、行政がしきりに使う「安全・安心」ほど嫌いな言葉はありません。市民の安全を実際に確保するのは行政の役目ですが、それをせず、言葉で安心感を持たせよう、という、いかにも金の無い国にふさわしい手段です。

去年3月の原発事故発生以来、福島県には国から6千億円を超える交付金が出ており、県の平成23年度補正予算は既に10回を数えています。また、事故発生は22年度だったため、昨年の3月にも236億円を超える補正予算が出ています。

国民の税金が、このような「安全・安心フォーラム」にもしっかり活用されているのでしょう。

Sunday, January 22, 2012

【記録】3月12日正午のNHKニュース「福島原発1号機燃料棒露出」、保安院会見「1号機炉心溶融」、枝野官房長官1号機爆発を5時間後に認め、「今後、深刻な事態に陥る可能性がほとんどない」

消えないうちにコピー。

まず、2011年3月12日正午のNHKニュース。オーディオは今のところYoutubeで、こちら

書きおこしは以下の通り。

アナ/そして原子力発電所に関する情報です。

原子力安全保安院などによりますと、福島第一原子力発電所1号機­では、原子炉を冷やす水の高さが下がり、午前11時20分現在で­、核燃料棒を束ねた燃料集合体が、水面の上最大で90センチほど­露出する危険な状態になったということです。このため、消火用に­貯めていた水など、およそ2万7000リットルを仮設のポンプを­使うなどして、原子炉の中に流し込み、水の高さを上げるための作­業を行っているということです。この情報繰り返します。

(しばらく無音…。)

ちょっとね、今の情報使っちゃいけないんだって

アナ/改めて原発に関する情報です。

福島県にある福島第一原子力発電所の1号機では、原子炉が入った­格納容器の圧力が高まっているため、東京電力が、容器内の空気を­外部に放出する作業を始めましたが、格納容器のすぐ近くにある弁­を開く現場の放射線が強いことから、作業をいったん中断し、今後­の対応を検討しています。

そして、炉心溶融、メルトダウンの可能性をはっきり言及していた、同じく3月12日午後二時の保安院の記者会見に関する日経新聞記事記事は1号機爆発6分前の3時30分に発表されています。(1号機は3時36分に爆発しました。)

経済産業省の原子力安全・保安院は12日午後2時、東京電力の福島第一原発1号機で原子炉の心臓部が損なわれる「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発表した。発電所の周辺地域から、燃料の核分裂に伴うセシウムやヨウ素が検出されたという。燃料が溶けて漏れ出たと考えられる。炉心溶融が事実だとすれば、最悪の原子力事故が起きたことになる。炉心溶融の現象が日本で確認されたのは初めて。

保安院は同日午後3時半、圧力が高まって爆発による放射性物質の大量放出を防ぐため、格納容器内の減圧作業を実施した。圧力が「午後2時を境に急激に下がりはじめた」(保安院)という。

 周辺地域から検出された種類は、いずれも本来は金属容器で封じ込めている物質。炉心溶融で大量に放射性物質が出れば、被曝(ひばく)の被害が広がる恐れもある。

 保安院は今回の炉心溶融について「放射性物質の広がりを計算した結果、現時点では半径10キロを対象とする住民避難の範囲を変更する必要はないだろう」と話している。

 震災にあった1号機は、核燃料棒を冷やしていた水位が下がり、露出していたとの報告もあった。

燃料を包む金属容器は高温に耐えるとされる。溶けたとなれば、燃料周辺が相当の高温にさらされたとみられる。金属容器ばかりか原発の圧力容器や格納容器を溶かせば、放射性物質が外に漏れ出す。

 原発の運転中は、炉心で核燃料が核分裂を起こしている。発熱反応が連鎖し、冷却水を蒸気に変えてタービンを回し、発電している。

 冷却水があるうちは熱が一定に保たれるが、本来の水位が下がると燃料が生む熱の行き場が無くなる。最悪の事態では、原子炉の心臓部である炉心溶融が起きる。

 この事態を受け、保安院は自衛隊に給水支援を要請した。大量の水を使って熱を冷ますためだ。

 過去の大きな原子力災害も、炉心溶融が原因のものがあった。1979年には、米ペンシルベニア州のスリーマイルアイランド原発にトラブルが発生。緊急炉心冷却装置が働かず、高温になった燃料が炉心を溶かす大事故につながった。

もう一つついでに、当時の枝野官房長官のコメント「今後深刻な事態に陥ることはない」。1号機爆発を5時間後に認めた記者会見を読売新聞3月13日記事でどうぞ。

「原子炉はコントロール下に置かれる。冷静に対応してほしい」。

東京電力福島第一原子力発電所1号機で12日に起きた原子炉建屋の爆発事故で、枝野官房長官は同日夜、この日2度目の記者会見を開き、爆発の事実を認めた上で、詳しい原因を説明した。ただ、爆発から約5時間後にようやく行われた説明に、識者らは「不安に思っている住民のためにも、もっと早く正確な情報を伝えるべき」と指摘する。

 「爆発は建屋の壁が崩壊したもので、中の(原子炉が入っている)格納容器が爆発したものではない」。午後8時40分頃、枝野官房長官は記者会見でこう切り出し、今後、深刻な事態に陥る可能性がほとんどない、と強調した。「水蒸気が、格納容器の外側の建屋との空間に出て水素となって、酸素と合わさって爆発した。ちなみに、格納容器内には酸素はないので、爆発することはない」

 この日午後5時45分から行われた1度目の会見では、「何らかの爆発的事象」などと表現するにとどめ、報道陣からは、重大な事故につながる可能性から、いち早い情報を求める質問が相次いだが、「分析をしっかり進めているところ」などと慎重な姿勢に終始していた。

 一方、政府は同日、住民の避難指示の範囲を、福島第一原発を基点に半径10キロから20キロ圏内にまで拡大したが、この点について、枝野長官は「具体的な危険が生じるものではないが、万全を期すため」と述べ、不安が高まる地元住民に、冷静に行動するよう呼びかけた。

事故の初期は枝野さんに同情が集まっていましたね。今となっては信じがたいことですが。

同じく読売の、爆発当時の南相馬市の混乱を報道した記事によると、爆発ははっきり否定され、念のために屋内避難するように、というとんでもない指示だったようです。

いずれも、日本の皆様が地震、津波被害のショック状態にあったであろう時のニュースです。英語ブログにのみ掲載していた(日経、読売のニュース)のが悔やまれます。

Saturday, January 21, 2012

米国CBSニュース: 福島県南相馬市の除染風景

2012年1月16日、米国のCBSニュースで放映された、南相馬市での除染の様子です。日本でも福島の除染風景はたまにテレビ、新聞等に画像が出ているようですが、実際の作業を間近でご覧になったことがない方もいらっしゃるかと思い、ビデオをお出しします。

小学校の校庭の表土を剥いでそれを校庭を掘り下げて埋め立てる、何の意味があるのか私にはよく分からない風景です。



ビデオ全訳:

福島第一原子力発電所の事故を引き起こした地震と津波から、すでに10か月です。今日、駐日アメリカ大使が原発を訪問しました。CBSのルーシー・クラフトが原発周辺の危険な立入制限区域に入り、なかなか目にすることのできない除染作業を見てきました。

政府が設定した立入禁止区域の中に入るには、バイオハザードに対応できるつなぎと、フェースマスクを身につけなくてはなりません。放射線量のとくに高いホットスポットを見つけられるように、ガイガーカウンターを持って行きます。

緩やかに起伏する草地と柿の木を過ぎていきます。ほぼ1年前に起きた原発事故のせいで9万人が避難したために、今は静かです。

私たちが向かうのは、福島第一原発から10マイル[約16km]北の地点。その場所で日本政府は、人間が戻っても安全なレベルにするために地域の大掛かりな除染作業をスタートさせました。

南相馬の町の除染現場に来ています。実際に土をどのように除染するかをここで見学します。

作業の目的は、建物から放射性粒子を除去するとともに、コネチカット州の面積[約1万3,000平方キロメートル]に相当する広さの土からその上部を取り除くことにあります。放射線量は依然として危険なほど高いレベルです。

彼は、この地域の線量が毎時約3マイクロシーベルトであると説明しています。ほかの地域と違って、ここはおもに住宅地です。

マイクロシーベルトは、空中の放射線量を示す単位です。3マイクロシーベルトであっても、許容レベルの75倍も高い数値です。

放射性セシウムは小枝や葉に溜まりやすいため、ぜんぶ取り除く必要があります。

高線量になりやすいもうひとつの場所が屋根です。高圧の水で洗浄します。しかし、行政が最も頭を痛めているのは小学校の除染です。

これらの袋には、上部数センチ分の高レベル汚染土が入っています。これから、ほかならぬ学校の敷地内に埋められる予定です。

今回は校庭に埋めます。捨てる場所がないので、危険な廃棄物を掘り出した場所に埋めることになります。それで空中の線量は下がります。

日本原子力研究開発機構の広報担当者は、「放射線量を下げることで、子どもとその親に一日も早く戻ってきてもらえるよう説得したいと思います」と語りました。

それは難しい説得になるでしょう。年配の夫婦はリスクがあってもたいていは家に帰りたがりますが、多くの家族は二度と戻るつもりがないと言っているからです。

立入禁止区域を出るときには、全員が入念な放射能チェックを受けます。異常は見つかりませんでした。

今回見学した除染は試験的なものですが、日本政府は今年中に本格的な除染活動を始める予定です。

CBSニュースのルーシー・クラフトが福島からお伝えしました。

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(H/T 東京茶とら猫)

Friday, January 20, 2012

武田邦彦:「役に立つ研究」で崩壊した日本の学問・・・苦しむ国民

中部大学武田邦彦教授のブログ、1月21日付けポストです。


「役に立つ研究」で崩壊した日本の学問・・・苦しむ国民

4号機の再爆発が懸念され(私はそれほどの危険は無いと思っています)、福島を中心としてセシウムが再飛散しているのに、これまで「原発は安全」と言って来た専門家からはほとんど情報が提供されません。

その基本的な理由は「お金だけの社会」にあるのですが、より直接的な原因は「役に立つ研究」、「国立研究所重視」の政策にありますが、それは1990年ごろ、日本社会が支持したものだったのです。

・・・・・・・・・
それまでの日本の学問は大学が主体となっていて、簡単に言うと大学の教授に「均等」に研究費が配られ、先生方が「勝手」にそのお金を使っていました。ある学者は夜の10時まで懸命に研究し、ある学者は適当に、そしてある教授は海外に「学会に行く」といっては外国でワインを飲んで帰ってくるという具合でした。

そこで、東大教授、文部省、そして一部のマスコミなどが連合して「役に立つ研究に研究費を出す」という運動がおこりました。その当時、「こんなひどい大学教授もいる」というような本を読んだことがありますが、大学教授も100人いれば、2,3人は変な人(大学教授はもともとやや変ですが)がいますから、その人たちを取り上げればどんなことも言えるという感じでした。

かくして「役人が決める「役に立つ研究」」にお金が出るようになったのです。もちろん、役人は形式は整えますから、科研費(かけんひ)と呼ばれるものを含めて、さまざまな研究費の分類を作り、それに東大教授を中心とした「審査システム」を作り上げました。

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その結果、簡単に言うと、まず第一に普通の研究費は大学の先生が文部省や経産省、厚労省、環境省などの申請をだし、それを東大教授が審査するというシステムができ、東大教授にゴマをするか、またはその時の国の政策にあった研究を申請することになりました。

第二には、「大型研究」でこれは、「偉い先生」が文科省、経産省、NEDO、JSTなどの外郭団体と親しくなり、「地球温暖化研究」、「DNA研究」、「ナノテク研究」、「太陽電池研究」などとして数10億円から数100億円のお金を獲得し、それを隠語で「青虫」として「配下の教授」に配るシステムです。

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20世紀の初めに「共産主義」の国家が誕生したときでも、未来はバラ色でした。なにしろ、国民が団結して上下もなく、私欲もなく、理想郷を作るのですから、それまで圧政の下で呻吟していた人たちにとっては素晴らしいものに感じられたのです。

でも、ソ連(ロシア)では、すぐに権力闘争が起こり、スターリンが「大粛正」という名前の殺戮を行い、後をついだ権力者も高級車を6台も保有するということになったのです。「素晴らしいシステム」があっても「人間がそれに応じるだけの人格があるか」の両輪が必要なのです。

「役に立つ研究」も同じでした。理想は素晴らしいのですが、現実には神様がおられたら神様に「役に立つ研究」を決めていただくことができるのですが、神様がおられないので、その代わりを東大教授、高級官僚、政治家などがやることになり、その人たちは「私利私欲」をもとで動きますから(人間としては当然かも知れませんが)、結局「御用学者」と「ごますり学者」が幅をきかせるようになったのです。

それに加えて、学問が大型化するとともに「国立研究所」などの力が大きくなり、環境問題では「地球温暖化計算のためのスーパーコンピュータ」、「環境観測の大がかりなシステム」などを国立研究所が進め、その結果、「政府が温暖化と言えば温暖化」、「東海地震と言えば東海地震」というように、学問とは無縁の情報が社会に流れることになったのです。

本来、学問には「反政府」などは存在しないのですが、私も政府の政策に反する研究は申請が通りませんでした。その時に、ある高級官僚が「武田先生、実際におやりになる研究は別にして、申請だけは政府に合わせておけば良いのですよ」とアドバイスをしてくれました。つまり、「ウソつき先生」がお金を取ることができるということです。

この「役に立つ研究」の被害者は、第一に日本の子供たち、第二に真面目な研究者、そして第三に国民でした。

日本の学問的研究のレベルは、「役に立つ研究」によって大きく後退し、将来に役立つ研究はほとんどすべてカットされました。なにしろ「現在、役に立つと考えられる研究」にお金がでるのですから、「どうなるか判らない」という研究(もともと研究の8割はどうなるか判りません)にはお金が出ません。

なにしろ申請書に欄のある「何の役に立つか」と「社会への波及効果」を書かないとお金が出ないのです。研究ですから何の役に立つかが最初から判るものは、ややレベルの低いものですから、結果的には研究のレベルはさがりました。当然、真面目な研究者は淘汰されます。

国民は口八丁手八丁の世間的に受けの良い「御用学者」や「ごますり学者」の研究のために税金を払うことになり、審査の機関などの天下り組織の人の人件費も負担することになります

さらに、今までは「均等」に分配していたのをいちいち審査するのですから、その事務量は膨大で、「役に立つ研究」というのをマスコミが騒ぎ始めた頃、役人は「これはよい、大幅に天下り先が増える」とほくそ笑んだでしょう。

そして、今回のような原発事故が起こると、御用学者は「国民を被曝させる」、「データを出さない」という政府の方針に従いますから、またここで国民が損害を受けることになります。

・・・・・・・・・

冷たく言えば、「研究とはなにか」、「何が将来の子供たちの日本に大切か」をよく考えなかった国民側にあるとも言えるのですが、福島原発事故が起こっても4500億円の原子力開発予算のことが報道もされず、お金も出ないのは、「役に立つ研究」によって日本の学問の中枢がすっかり「御用学者」で固められた結果です。

一つ一つの原発に反対することも大切ですが、それより、その根源にある「役に立つ研究」を撲滅しないと、セシウムの変化も解説されないことでわかるように、日本の将来はきわめて危ないのです。

(平成24年1月21日)

Thursday, January 19, 2012

ニューヨークタイムズ: 国会の福島事故調査委員会、原発事故に関する日本政府の説明に『異議あり』

国会の福島第1原発事故調査委員会が1月16日に本会合を開きました。それに関して、ニューヨークタイムズが記事を出しています。

12月19日に野田首相が「冷温停止状態」宣言なるものを出して世界に安全をアピールして以来、日本では原発関連の報道がめっきり減った気がしますが、ニューヨークタイムズ紙など海外の新聞は逆にこれをきっかけに、去年の4月半ばには興味を失っていた福島第1原発と日本の放射能汚染についての記事を出してきているような感があります。

国会の事故調査委員会は、先日中間報告をまとめた東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会とは別物です。後者は内閣官房に置かれている委員会です。

ニューヨークタイムズ紙記事原文、”Panel Challenges Japan’s Account of Nuclear Disaster” はこちら

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事故調査委員会が原発事故に関する日本政府の説明に『異議あり』」

記事:田淵広子
2012年1月15日

東京発――日本の国会が任命した有識者からなり、強い権限をもつ独立の調査委員会が、福島第一原発の事故原因に関する政府説明に異議を唱え、独自の原因究明に乗り出す。調査の対象には、3月の津波の前に地震によって原子炉がどの程度破壊された可能性があるかも含まれる。

この事故調査委員会は、今回の原子力災害の原因を調査するために超党派の議員によって設置されたもので、証人を召喚する権限をもつ。福島の原発事故は、10万人以上もの人々に避難を余儀なくし、広大な土地を数十年にわたって利用できなくした。また、政府の関心が原子力産業界の既得権益を守るほうに主に向かい、3基の原子炉のメルトダウンと大量の放射性物質の放出という事態をなぜ止められなかったかの解明がおろそかになっていると国民の批判を招いた。

事故原因をめぐっては、福島原発の運転者である東京電力や政府自身による調査も含めてこれまでに何度か調査が実施されているが、いずれも3月に東北地方の海岸を襲った津波の規模があまりに大きかったために原発の命綱である冷却装置が破壊されたことを原因としている。

しかし国の内外からは、東電が過去の津波の記録を十分に考慮していなかったのではないか、津波に襲われたにしてもそのあとで破壊を最小限に留めるために打つ手があったのではないかと、さらなる詳しい説明を求める批判の声があがっている。

解消しない疑問はもうひとつある。津波が来る前に地震によって原発にどの程度の損傷が生じていたかだ。地震で深刻な損傷が起きていた証拠が少しでも見つかれば、日本のほかの原子炉の安全性についても新たな疑問が投げかけられることになる。日本は地震大国であり、津波が起きる頻度はそれよりはるかに少ないからだ。

この新しい「東京電力福島原子力発電所事故調査委員会」が先月に発足してから初となるインタビューの中で、委員長の黒川清は聖域なき調査を実施すると明言した。

かつて東京大学医学部を牽引した一人であり、現在は政策研究大学院大学教授を務める黒川氏は、ノーベル賞受賞者の田中耕一をはじめとする著名人を委員として集めた。委員会は来週月曜日[1月16日]に初の本格的会合をもつ。

「日本が世界からの信頼を取り戻すには、完全に独立した調査が行なわれなければならない」と黒川氏は語った。地震による損傷を疑う声があることは認識しており、委員会は「この問題を精力的に調査する」、と黒川氏は言う。

「日本がどんな教訓を学ぶかは世界にとっても無関係ではない。こうした災害は再び起きてもおかしくないからだ」

黒川の委員会は、日本の原子力政策を公然と批判してきたメンバーが含まれていることで注目を集めている。たとえば地震学者の石橋克彦は、地殻変動の激しい日本で54基の原子炉をもつことの危険性を長年警告してきた。

また、委員の一人である田中三彦は、かつてバブコック日立社で原子力エンジニアとして働いた経験をもち、福島原発の原子炉は津波がなくても地震だけでメルトダウンを起こすほどの損傷を受けたと主張してきた。東京電力はその見方に異議を唱えている。田中氏は福島第一原発の原子炉の設計にかかわった人物でもある。

日本の国会が外部有識者を集めてこの種の委員会をつくるのも今回が初めてである。委員会は、与党である民主党と最大野党の自由民主党の双方の議員の後押しで生まれた。

「委員会が政治的圧力から本当に距離を置くことができれば、強力な存在になりうる」と指摘するのは、福島で住民とともに除染活動を進めてきた工学院大学客員教授の田尾陽一。「超党派の支援を受けているからといって、すべての意見を聞かなければならないわけではないことを、委員会ははっきりさせておく必要がある」

(写真キャプション)調査を率いる黒川清は、調査に聖域はないと誓った。

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(H/T 東京茶とら猫

福島県いわき市の一般ごみ、埼玉県で焼却され埋め立てられているらしい→(アップデート)いわき市一般ごみの焼却灰、埼玉で再焼却して再利用

(アップデート: 埋めているのか、リサイクルしているのか、両方なのか、不明。ごみ自体をどこで焼却しているのか、今ひとつ不明。)

(再度アップデート:@tsunamiwasteさんから)

によると、福島いわきの焼却炉で焼く→焼却灰を埼玉県寄居で二度焼きして再生砂にする→出荷という流れだそうです。12月末の時点で、まだストップかかってない
埋め立てではなく、なんと「再利用」でした。
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2011年3月11日以前からの契約で、現在も続いている模様。県も、埼玉環境整備センター(寄居町にある県営最終処分場)も「知らなかった」とのこと。

宮城県、岩手県の災害がれき - 主に津波によるがれきで、3月11日原発事故以来野外に保管、管理され、その間に福島第1原発事故による放射性物質が降下したため放射能汚染されたがれき - どころか、福島県内のごみが継続して県外にしっかり出ていた、現在も出続けている、ということは、驚きでした。

以下のブログポストからの抜粋でも分かるように、ごみ処理は責任があいまいになるようなシステムになってしまっているようです。

「滑川町 子どもを放射能から守る会」の、1月17日付けのポストより抜粋(強調は私です):

13日、寄居・深谷の放射能から子どもを守る会の方たちが企画する
「彩の国資源循環工場、埼玉環境センター見学会&懇親会」へ行ってきました。
瓦礫受け入れは何がどう問題なのか、あるいは問題はないのか。
事実を通して考えるために参加してきました。

寄居町内外の70名以上の人が参加し、関心の高さを示していました。

敷地は想像していたよりずっと広大でした。
施設の全体像を把握するのに時間がかかりました。

この敷地には、「彩の国資源循環工場」という民間8社のリサイクル施設と、「埼玉環境センター」という県の最終処分場が同居しています。

残念ながら今回は民間施設の工場内は見学できず、外の敷地を、長年この施設をめぐっての市民活動をされている方の説明をうけながら回って歩きました。

サッカー場として使われている広場は、埋立地跡だそうです。
(ちなみにドイツではゴミを埋めた地の上を子どもが遊ぶのはありえないそうです。)

現在埋め立て中の場所近くで、測定器3台を土の上に並べてみました。

ALOKA   0.14~0.15
Horiba     0.12
TERRA    0.19

いずれも高い値が計測されました。

ある会社が、311前からのいわき市との契約で、現在も引き続きいわき市から持ってきたゴミを燃やしているのだそうです。

それが判明したのも、市民の指摘があったからだそうで、センター側も県も把握していなかったという事実。

民間委託というのはシステムを複雑化させ、責任所在も雲の中へ。情報が隠されてしまうと思いました。

......

県知事がいくら町判断に委ねたといっても、民間企業と被災地自治体との直接契約にまで入り込めるのか?

県の設備はあくまで最終処分場である「県環境整備センター」のみ。
同じ敷地内で煙をあげている「彩の国資源循環工場」は民間8社。

責任の所在は?

また、地域には「協議会」が地区ごとに4つあるのだそうです。
市民の監視体制と話し合いの場があるのだそうですが、そこの方は来ていなかったようで、実際チェックできるのかどうかもわからない。


まさにこの民間委託を柱の一つとして、全国各地で災害がれき受け入れ、焼却、埋め立てが行われようとしています。

ポストでは民間業者は8社、とありましたが、その8社は次の通り(埼玉県「彩の国資源循環工場」ウェブサイトより):

種類概要事業者
サーマルリサイクル廃棄物から精製ガス・メタル・スラグなどに再資源化。
得られたガスを利用し発電。
オリックス資源循環(株)
(PFI事業者)
総合リサイクル20品目以上の廃棄物を受け入れ、総合リサイクルに取り組む。
肥料化、廃家電リサイクル、固形燃料製造など。 
(株)エコ計画
R P F製造リサイクル廃プラスチック処理施設と堆肥化施設を併設。
廃プラから固形燃料(R P F)、生ゴミ等から堆肥などを製造。
(株)環境サービス
生ゴミ・食品リサイクル食品残さ、刈草などの有機性廃棄物を原料に 自然発酵により堆肥を製造。食品リサイクル法100%対応。(株)アイルクリーンテック
蛍光管リサイクル蛍光管を、水銀、ガラス、金属などに再資源化。
ガラスは付加価値の高いガラス製品に再生。
(株)ウム・ヴェルト・ジャパン
建設廃棄物リサイクル建設現場、工事現場から排出される廃棄物から 再生骨材、再生土、ボードチップなどを製造。埼玉環境テック(株)
焼却灰リサイクル市町村や事業者から排出される焼却灰を原料に 路盤石などに利用される人工砂を製造。(株)埼玉ヤマゼン
汚泥等リサイクルし尿汚泥、動植物性残さなどを肥料にリサイクル。
高品位の有機質肥料を短期間で製造。
よりいコンポスト(株)

追加情報(@jerico4さんより):

いわき市の焼却灰をしているのは、この表の「埼玉ヤマゼン」だそうです。溶融炉で処分されるようで、キロ当たり1万ベクレルになっている可能性あり、とのこと。詳しくはこのブログ

ごみ自体をどこで焼却しているのかは、今ひとつ不明。

Tuesday, January 17, 2012

放射性ではない普通の塩化セシウムの毒性実験: ラットで体重1キロ当たり10ミリグラム以上で健康に影響

ツイッターでの@Ishikawakzさんのリンクから。

塩化セシウムをラットに90日間反復経口投与して毒性を調べた、三菱化学安全科学研究所の論文。コントロール群は投与0、実験群の最低投与量は体重一キロ当たり10ミリグラムですが、そのグループでも 「限局性の心筋変性の増強が雄で認められた」 とありました。50ミリグラム、250ミリグラム至っては、下の要約を見れば分かるとおり、内臓の多くが悪影響を受け、250ミリに至っては死ぬラットが出ています。

今回の福島第1原発で出たセシウム137は4658グラムと計算され、これが日本のみならず北半球にばら撒かれたわけですから、現在日本の環境中に存在する放射性セシウムは量的には実験で投与した塩化セシウムの量とは比べ物にもなりませんが、実験で投与した塩化セシウムと違って環境中のセシウム(おそらく塩化セシウムの形態)は放射性。

どなたか、同様の実験を、放射性の塩化セシウムでおやりになっていないでしょうか?

塩化セシウムのラットを用いる90日間反復経口投与毒性試験
Ninety-day Repeat Dose Oral Toxicity Test of Cesium chloride in Rats

要約

塩化セシウムは密度勾配遠心分離法の溶質1),分析用試薬,光電管,光学ガラス,pHメーター,ストロボ用2),電気泳動分析,ミクロ分析3)に用いられる.

今回,塩化セシウムを0,10,50および250 mg/kgの用量でSD系ラットの雌雄に90日間反復経口投与し,その毒性について検討した.対照群および250 mg/kg群については28日間回復群を設けた.

250mg/kg群では,易刺激性,痙攣と洗顔行動および痂皮,一過性の自発運動亢進等の症状が観察され,雄で死亡あるいは瀕死期解剖動物が発現した.体重と摂餌量の低値および摂水量の高値が認められた.血液学的検査で,赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値および平均赤血球血色素濃度の低値,網状赤血球率と血小板数の高値およびプロトロンビン時間の延長,活性化部分トロンボプラスチン時間の短縮,白血球数の高値と白血球百分比のリンパ球比の低値と分葉核好中球比の高値が認められた.血液生化学検査で,AST(GOT),ALT(GPT),アルカリフォスファターゼ,総ビリルビン,尿素窒素,クレアチニン,カルシウム,無機リンとナトリウムの高値およびグルコース,アルブミン,A/G比,カリウムとクロールの低値が認められた.尿検査で,尿比重,ナトリウムとカリウムの低値,尿沈渣中の白血球と小円形上皮細胞の高値,精子数の低値,尿潜血の増強,尿沈渣中の六角板状結晶の出現が認められた.器官重量で,胸腺,心臓,肝臓,脾臓および精巣上体の絶対重量の低値,脳,心臓,腎臓および副腎の相対重量の高値と胸腺,肝臓および精巣上体の相対重量の低値が認められた.剖検で,心臓の白色斑の増強,下顎リンパ節の腫大,胸腺の小型化,脾臓の褪色と腫大,腺胃壁の肥厚,小腸の膨満,肝臓の褐色化と褪色,腎臓の褪色,髄質外帯の褪色と表面顆粒状化,膀胱の結石,壁の肥厚,膨満と出血,尿管の拡張,精巣の腫大,小型化と軟化,精巣上体,前立腺および精嚢の小型化,副腎の腫大と白色化,皮膚の痂皮,びらん/潰瘍あるいは脱毛およびハーダー腺の褪色が認められた.病理組織学的検査では,限局性の心筋変性の増強,下顎リンパ節の形質細胞過形成,胸腺の萎縮の増強,脾臓の赤脾髄の萎縮と髄外造血の増強,骨髄の顆粒球系造血の亢進,肺の泡沫細胞集簇の増強,腺胃粘膜のびまん性過形成と水腫,腺胃粘膜の限局性炎症性細胞浸潤とびらんの増強,膵腺房細胞様細胞の出現,胃腺の拡張,十二指腸の粘膜上皮の肥大,下顎腺の腺房萎縮と導管上皮の顆粒の減少,舌下腺の腺房萎縮,肝臓の肝細胞萎縮と髄外造血,膵臓のびまん性の腺房萎縮,腎臓の好塩基性尿細管の増強,皮質遠位尿細管上皮の肥大,髄質外帯の空胞化および再生像を伴う遠位尿細管上皮の腫大,腎盂内結晶物,腎盂粘膜上皮の過形成および腎盂炎の増強,腎盂腎炎,尿管の拡張と粘膜上皮の過形成,膀胱の粘膜移行上皮の過形成と出血,精細管萎縮と精細管拡張,精巣上体の精子の減数,下垂体の中間葉細胞の肥大,甲状腺の濾胞拡張の増強,上皮小体の主細胞の肥大,副腎の髄外造血と束状帯細胞の肥大および球状帯細胞の脂肪滴増加,坐骨神経の変性の増強,皮膚の潰瘍,痂皮,びらんおよび限局性の炎症性細胞浸潤,大腿筋と外肋間筋の変性が,骨梁の減少,ハーダー腺の腺房細胞のびまん性肥大が認められた.

50 mg/kg群では,一般状態観察で易刺激性が認められ,雄で瀕死期解剖動物が発現した.また,摂水量の高値,網状赤血球率の高値,クレアチニンの高値,カリウムの低値,尿沈渣中の白血球と小円形上皮細胞の高値,尿潜血の増強,尿沈渣中の六角板状結晶の出現,肝臓の相対重量の低値,心臓の白色斑の増強,胸腺の小型化,腎盂内顆粒状物(結石),膀胱の結石,壁の肥厚と膨満,尿管の拡張,限局性の心筋変性の増強,骨髄の顆粒球系造血の亢進,髄質外帯の空胞化および再生像を伴う遠位尿細管上皮の腫大,腎盂内結晶物,腎盂粘膜上皮の過形成および腎盂炎の増強,尿管の拡張と粘膜上皮の過形成,膀胱の粘膜移行上皮の過形成,下垂体の中間葉細胞の肥大,副腎の球状帯細胞の脂肪滴増加,外肋間筋の変性およびハーダー腺の腺房細胞のびまん性肥大が認められた.

10 mg/kg群では,限局性の心筋変性の増強が雄で認められた

投与期間中に被験物質投与に起因すると考えられる上記変化は,投与を止めることにより概ね軽減あるいは回復していたが,一部の変化については28日間の休薬期間では十分な回復性がみられなかった.

以上の結果から,本試験条件下における塩化セシウムの無影響量(NOEL)は雄が10 mg/kg未満,雌が10 mg/kgと判断した.

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試験責任者: 須藤雅人
試験担当者: 岡部恵美,土谷 稔,岡崎欣正,豊田直人,高野克代,水嶋亜弥子,井澤 修,鈴木美江
(株)三菱化学安全科学研究所 鹿島研究所
〒314-0255 茨城県鹿島郡波崎町砂山14
Tel 0479-46-2871 Fax 0479-46-2874

論文全文はリンク先でどうぞ。

福島第1原発2号機の圧力容器下部温度、17日に急降下で現在マイナス6.3度

1月16日の午後5時時点で149度まで上昇して、17日になって突然急降下、午前11時現在マイナス6.3度の『氷温停止』。

もう笑うしかない「冷温停止状態」宣言。マイナス6.3度で確かに冷温ではあるものの、「安定して」冷却が行われているとはお世辞にも言いがたい状態。一体何を測っているのだか。

東京電力1月17日最新のプラントパラメターより。クリックで拡大します:

確か事故の初期にも、どこかの温度がマイナスになったのを見た覚えがあるのですが、いつ、どこのことだったか、まだ探していません。

Sunday, January 15, 2012

福島第1原発2号機の圧力容器下部温度、依然として摂氏100度超え、1月15日現在138度

1月13日に若干話題になった、福島第1原発2号機圧力容器下部の温度計の一つが突然100度以上に跳ね上がったと言うニュース、東電の「計器不良」というコメント以降ニュースには出てきていないようですが、1月12日に48度から102度に跳ね上がり、翌日の13日には116度。いったん48度程度に下がってから再び上昇して116度。

実は、それ以降、ほとんど下がっていません。1月14日には最高で142度、15日になっても138度を保っています。

これは「CRDハウジング上部温度」を測るための温度計で、1月12日の午後5時までは他の温度計と同傾向を示していますから、それまでは正常に作動していたと思われます。CRDはControl Rod、制御棒です。制御棒を入れる管の上部の温度を測っている温度計、というわけです。

東電が「計器不良」、「作業員のミス」、と発表するときは、まゆにつばしてよく見聞きしたほうがいいのは、昨年3月11日の事故発生以来、何度もあったことです。

最新プラントパラメター(1月16日発表分)から、2号機圧力容器の温度は以下の通り。グラフで、最近になって茶色に跳ね上がっているのが問題の「CRDハウジング上部温度」です。


これでどこが「冷温停止状態」だ、とおっしゃる向きには、いかにも政府・東電らしい答が用意されています。「冷温停止状態」を確かめるための温度を計測する場所は、「圧力容器下部」、上のチャートで緑色の線で表される温度なのです。この場所の温度は50度を切っています。従って、「冷温停止状態」には何の変わりもない、というわけです。

50度を示す温度計が誤動作してない保証は無いんですが、そのほかの温度計も同傾向を示しているのでまず大丈夫だろう、と言うのが政府・東電の分析です。それを言うならこの問題の箇所の温度計も1月12日までは同傾向を示していたんですが、「計器不良」の一言。

Saturday, January 14, 2012

南相馬のぬまゆさん(沼内恵美子さん)の症状は「ストレス原因の自己免疫疾患」?

先日、ジャーナリスト岩上安身さんが福島県南相馬市在住の”ぬまゆ”さんこと沼内恵美子さんをカメラインタビューなさいました。残念ながらビデオは一般無料公開ではありませんが、書き起こしをなさった方がいらっしゃり、内容を詳しく知ることが出来ました。

インタビューの後半部では、NHKのドキュメンタリーで一躍名を挙げた獨協大学准教授の木村真三さんが沼内さんの症状を解説しています。その部分を下にご紹介します。(リンクは書き起こしを掲載してまとめた掲示板の方が挿入されたようです。)

63:30~  木村真三氏へのインタビューに切り替わる

岩上氏:
沼内さんの場合は放射線によるものか、それともストレスによるものか、あるいは、その他の何かによるものなのか、どう思われますか。

木村:
まず考えられるのが、ストレスによる自己免疫系疾患http://www.yakuji.co.jp/entry9135.htmlが大きいのかなと考えられますね。
歯が抜ける、爪がはがれる、髪が抜け落ちるというのは、自己免疫疾患の炎症反応の一種であろうと。
で、紅斑も、それに付随するもので、皮膚の炎症が起きるから紅斑が広がっていくというように考えます。

その自己免疫系疾患の原因として考えられるのが、ストレスであろうと。
そのストレスというのが放射線に対する恐怖というのが、時間をおいて、すぐに出てこないわけですよね。

人間の体というのは、タイムラグをおいて、発症するまでの時間が極度のストレスを受けた後に出てくるわけです。

で、夏までの非常に強いストレスが、秋から季節変動によって出てきたというのは、季節変動によって出てくる可能性が十分あるというように考えますが、ストレスというのも原発事故に由来するわけですから、放射能でなくても原発事故の被害者であるわけです。
それは確かであろうと思います。

ただ個体差があります。
個体差によっては感受性が非常に強かったり、そういう場合には、このようなことが起きるかも知れない。
で、それが内部被曝による影響が強かったかもしれないし。

レントゲンとか、健康診断を受けたことがないような人ではないと思いますので、外部被曝は、ある程度まで被曝したことはあるとは思うのですが、それに何ら影響がなかったとしたら、何らかの内部被曝の影響があるのかもしれない。

南相馬でも、僕は3月28日に浪江町から相馬のほうに行くときに、国道6号線が使えないので、県道15号線だったかを通っていったんですが、そこでも分断されていたので、裏道を通ったときに、150マイクロシーベルトの場所があったわけですよ。

そういう地域に住んでいたとしたら、(沼内さんのような症状が出るということは)ありえるとは思います。
住んでいる場所によって、いちがいには言えないので分らないんですが。

ストレスが影響するというメカニズムまでは分らないと思うんですよ。

ただ、私や岩上さんは、非常にストレスに強いほうだと思うんですよ。
強い人間からは分らないんですよ。

ウサギだって、飼い主がいなくなれば淋しさで死んでしまうという話があるくらいですから、同じことが人間にあってもおかしくないわけじゃないですか。
それだけ、ストレスというのは大きいわけですよ。

特にストレスに対しては女性のほうが感受性が強いんですよね。
これは良い意味でも悪い意味でも感受性が強い。

その感受性のせいで、自己抑制がしにくいというのも女性の特徴なんです。
そういう特徴も含めた上で、ストレスというのは妥当なんではないかというふうに考えます。

岩上:
自己免疫疾患が起きると、歯とか爪とか、そういうものを(自分のものでありながら)異物として捉える、という、それについては。

木村:
免疫低下によって、感染症が拡大すると、やはり免疫が賦活化します。
賦活化すると、それが手当たり次第に攻撃を始めるわけです。

今まで自分の体として認識していたものが、認識しなくなって、これを外敵と認識してしまう可能性が高いわけですよね。

そういう自己免疫系疾患というのは、たとえばリウマチであったり、IgA(アイ・ジー・エイ)腎症、http://www.nanbyou.or.jp/entry/41※イムノ・グロブリンAという抗体があるんですが、扁桃体で作られるもので、それが大量にできると今度は腎臓を攻撃するんです。

そのように自己免疫系疾患が出てきたり、さまざまな病気が出てくるんですよ。

※イムノ・グロブリン(Immuno globulin=免疫グロブリン)
http://kotobank.jp/word/%E5%85%8D%E7%96%AB%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%B3+%28immunoglobulin%3A+Ig%29

ですから、ストレスによって今度は腎臓病にもなってしまうという、さまざまな病気があってもおかしくないわけですよ。

炎症反応が出てきている、ということなので、自己免疫系疾患の可能性が高いな、と踏んだわけです。

沼内さんは女性、女性はストレスに感受性が高く自己抑制がしにくい、そのため夏までのストレスが(どういうわけか)自己免疫疾患を引き起こし、その結果秋以降歯、爪、髪などが抜け落ちる。放射線の影響である可能性も無いわけではないが、まずは自己免疫疾患だろう。

素人(私)の誤解を承知で敢えて要約すると、こんなところでしょうか。

(実際のビデオは上掲の掲示板のポストに情報が出ています。沼内さんは闊達な方ですね。声もドスが効いている、低音のアルト。落ち着いた話し方です。)

Friday, January 13, 2012

ロイター(英語)記事全訳: 「フランスの原発付近で子どもの白血病発病率が2倍、調査で判明」

最初に英語のロイター記事を読み、その後で出たロイター日本の翻訳記事を読んで、あれ、何かごそっと抜けている、と思ったらツイッターの読者の方々からも同じ指摘。そこで、元の英語記事を訳してみました。

ロイターの日本語の記事からあからさまに抜けているのは、原発の立地、出力による白血病の発症の変化は無かった、ということと、ドイツで2007年に発表された同様の調査の結果ですが、そのほかにも細部がぼろぼろ落ちています。しかもロイターの訳者が統計用語を知らなかったことによると思われる誤訳つき。英語の記事を要約しただけ、と言うことなのでしょうが、ちょっと残念。

ウオールストリートジャーナルがヨウ素剤配布の記事でやったような、故意とも思える日本語記事からの情報欠落よりは若干ましでしょうか。

英語版ロイター通信2012年1月11日付け記事

記事:ミュリエル・ボセリ

1月11日パリ発(ロイター)-フランスの原発付近に住む子どもの白血病発病率はフランス国内のほかの地域の2倍であることが、健康と原子力安全に関するフランスの専門家による調査で明らかになった。

この調査結果は近々『国際がん雑誌(International Journal of Cancer)』に発表される予定だが、白血病(血液がんの一種)の高い発病率と原発近くに住むこととの間に因果関係を立証するまでには至っていない。

フランスは30年前から原子力発電を利用しており、電力の75パーセントを58基の原子炉でまかなうという、原子力への依存度が世界で最も高い国である。

フランスの保健研究機関、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)が実施したこの調査によれば、フランス国内の19箇所の原発で、半径5km圏内に住む15歳未満の子ども14人が2002年から2007年までの間に白血病の診断を受けている。

国内の他地域で同時期に白血病と診断されたのは合計2,753件であり、それと比べると原発付近の発病率は2倍に達する。

「この結果は徹底的に検証されていますし、統計的にも有意です」と、原子力安全に関するフランスの研究機関、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)で疫学研究所長を務めるドミニク・ローリエは言う。

INSERMはIRSNと共同で1990年から類似の調査を行なってきたが、原発付近の子どもの白血病発病率が高い事実を確認したことはこれまで一度もない。

「とはいえ、私たちが扱っているのは非常に小さい数字なので、結果は細心の注意を払って分析する必要があります」と、今回の調査の共同研究者の一人でもあるローリエは指摘する。

ローリエによれば、原発の立地が海のそばでも川のそばでも、また原発の出力がどれくらいであっても、発病のリスクに違いがないことを今回の調査結果は示している。

IRSNは、原発付近で確認された白血病の原因をもっと詳しく調べるべきだと提言するとともに、国際的な研究協力を開始したいとの意向を明らかにした。

「白血病は珍しい病気なので、もっと大規模な調査をすればより安定した結果が得られると思います」とローリエは語る。

昨年発表されたイギリスの35年に及ぶ調査では、原発付近の子どもの白血病発病リスクが高いとの証拠は得られなかった。

環境放射線の医学的側面に関する委員会(COMARE)の研究者チームが実施したこの調査からは、1696年から2004年までの間に原発から半径5km(3.1マイル)圏内の子どもが白血病を発症した例は20件しか確認されていない。

この発病率は、原発のない地域とほぼ同じであると研究者たちは述べている。

子どもが血液がんを発病するリスクと、原発付近に住むこととの間に、何らかの関連がないかどうかを調べる研究は世界中で行われてきた。

2007年に発表されたドイツの研究は、原発付近でリスクが大幅に高まることを示していた。しかしこの調査結果は、1990年から2005年までドイツ北部のクリュンメル原発付近で白血病が多発した原因不明の事例の影響を受けているのではないか、と英COMAREの研究チームは指摘する。

クリュンメル原発を除けば、ドイツの原発付近で子どもの白血病リスクが高いことを示す証拠は「きわめて薄弱だ」と同チームは語る。

(記事:ミュリエル・ボセル、編集:アレクサンドリア・セージおよびトム・ピアース)

(H/T東京茶とら猫


日本語版ロイターに出た記事

[パリ 11日 ロイター] 原子力発電所の近くに住むフランスの子どもたちは、白血病の発病率が通常の2倍であることが、同国の専門家の調査結果で明らかとなった。近くがん専門誌「International Journal of Cancer」に掲載される。

フランスの国立保健医学研究所(INSERM)が、2002―07年に国内の原発19カ所の5キロ圏内に住む15歳未満の子どもを調査したところ、14人が白血病と診断された。これは他の地域と比べて2倍の発病率だった。

共同で調査を行ったフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)のドミニク・ローリエ氏は、この結果を統計的に重要だとした上で、さらに慎重な分析が必要だと指摘。また同氏は、多国間で大規模な共同調査を行えば、より確かな結果が得られるだろうと述べた。

フランスはエネルギーの原発依存度が最も高く、58基の原子力発電所を有しており、電力の75%を原発でまかなっている。

一方、昨年発表された英国の35年に及ぶ調査では、原発の近くに住む子どもにおける白血病の発病率は高いとの証拠は得られていない。

「統計的に重要」、は誤訳。原文は、”statistically significant”、統計上有意、という意味です。英語という言語だけ齧っていても意味がない好例。

Thursday, January 12, 2012

ほとんど誰も注目しなかった福島第2原発の記事:保安院、東電に東日本大震災で破損した機器などの復旧計画を策定し提出するよう求める

え、破損した機器?

共同ニュースが2012年1月11日付けで出した下記のニュースを記事にしたところは、ざっと全国紙のアーカイブを見たところではどこも無く、毎日新聞の英語版が翌日の12日に共同ニュース記事として掲載していましたが日本語版には無し。

経済産業省原子力安全・保安院は11日、昨年12月に「原子力緊急事態宣言」が解除された福島第2原発について、東京電力に、東日本大震災で破損した機器などの復旧計画を策定して月内をめどに報告するよう指示した。運転再開ではなく、安定した冷却状態を保つためとしている。

 保安院によると、同原発は安定した冷温停止の状態にあるが、津波被害を受けた非常用発電機や使用済み燃料プールの複数ある冷却設備の一部が使えない状態。建屋の扉にも津波で破損した後、鉄板などで応急措置をしただけのものがある。計画にはこうした機器や設備の補修などが盛り込まれる見通し。

  保安院原子力防災課の松岡建志(まつおか・けんじ)課長は記者会見で「冷温停止の状態をより着実にし、安全が確保されることを期待している」と指摘。その上で「再稼働できるレベルにまで復旧を求めるものではない」と強調した。福島県や地元自治体にも、運転再開に向けた動きではないことを説明したという。

朝日新聞は時事通信の記事として2行ほどの記事を出していましたが、その後自社記事に差し替えています:

経済産業省原子力安全・保安院は11日、東京電力福島第二原発の復旧計画を作成し、提出するよう東電に指示した。保安院は「(今回の指示は)冷温停止を着実に維持するためのもので、再稼働を目標にした指示ではない」としている。

 第二原発1~4号機は大震災発生時に自動停止した。外部からの電源は確保されていたが、1、2、4号機は炉を冷やす設備が津波で流された。昨年3月15日までに機器の交換や仮設ケーブルを敷くことで冷却機能を回復させ、炉内の温度が100度以下になる冷温停止になった。

 保安院の指示は、国の原子力災害対策本部が昨年12月26日に同原発の原子力緊急事態宣言を解除したのに伴うもの。未復旧となっている一部の非常用ディーゼル発電機や核燃料プール冷却設備の復旧や仮設ケーブルの補強などを盛り込み今月中の提出を求めている。

つまり、今回の指示は原子力緊急事態宣言を解除したためで、冷温停止を着実にするためのものである、ということですが、多少の疑問が出ます。

原子力緊急事態宣言を解除するまで復旧作業ができないなどということはありうるのでしょうか?

復旧が求められている機器をこの2つの記事から拾うと、

  • 非常用ディーゼル発電機の復旧

  • 核燃料プール冷却設備の復旧

  • 仮設ケーブルの補強

  • 建屋の扉

核燃料プール冷却設備の復旧を除いては、いつでも出来そうな作業のように思えます。

保安院が(表向きに)東電に対して出した書類はこれ。実際にどこをどう直すのか、という具体的なことは一切言っていません。文書の2ページ目は以下の通り:

1.福島第二原子力発電所の一部については、仮設設備となっており、これらの設備について適切な維持管理を行うこと。また、計画的に仮設設備の依存度を下げること。

2.残留熱除去系の一部等の安全設備が復旧していないことから、それらが復旧するまでの間、状況に応じて適切な維持管理を行うこと。また、自然災害等に備えて、更なる安全確保に万全を期すこと。

3.作業員の安全を含め安全管理を徹底すること。

4.冷温停止に至るまでに、通常時とは異なる圧力・温度等の履歴があったことを踏まえ、施設に対するこれらの影響を検討すること。

具体的な話は、「残留熱除去系の一部等の安全設備」ということだけです

一連の形式としては、まず官邸から原子力安全委員会に対して、東京電力福島第二原子力発電所に係る原子力緊急事態解除宣言を解除する件について意見を求め、数日後検討後委員会はOKを出し、官邸は経済産業省・保安院に東電に指示を出すよう要請、保安院が東電に指示をだす、という、平安時代の奏上のようなことをやっています。

日本の会社に勤めたことのある方ならお分かりになるでしょうが、実際はこれはおそらく全く逆で、東電がここを修理したい、と保安院と以前から相談しており、保安院もおそらく以前から原子力安全委員会と話をしており、それが大体纏まった時点で保安院が形式を整えるために経済産業省を通じて官邸に上げ、官邸は形式を整えるために原子力安全委員会に諮り、委員会は数日資料などを手元において形式を整えた後、よろしいでしょう、と官邸に答え、OKが保安院に行き、東電にOKが行く。あくまで私の想像ですが。

実際の修理箇所はさてどこなのか。この保安院の指示に先立つこと2日の1月9日、岩上安身さんのIWJ大阪のUTREAMチャンネルで、専門家を招いた市民の勉強会をやっていましたが、その中で東大の井野博満名誉教授が、福島第2原発の格納容器は壊れており、東電、保安院はこれを修理したがっている、と発言されていました。津波ではなくおそらく地震で壊れた、とのこと。

これでしょうか、修理の実体は?

修理の箇所として、特別に政府の指示が必要な箇所が公文書に明記されているとは思えないため、勝手に深読みしています。

原子力安全委員会の12月26日の定例会議の資料をちょっと読んで見ることにします。

Tuesday, January 10, 2012

セシウムという物質はどのような物質なのか

セシウムという物質は、福島第1原発事故以来、放射性物質として放射能が注目されていますが、放射性でない、安定型のセシウムも天然に存在します。下にお出ししたのは、以前に院長先生ブログに出ていたビデオです。

セシウムの投入で、水の入った水槽が爆発します。


院長先生ブログからのビデオ解説:

・アルカリ金属には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム の6種類がある
・全て柔らかい金属で、ナイフで切ることができる。
・最初のカットは、リチウム。ナイフで切るとメタル色がみえる。空気と反応して徐々に黒くなる
・ナトリウムも切ることができるが、リチウムよりも早く黒くなる
・カリウムを切ると、すぐに変色してしまって、メタル色を見ることはできない。
・周期表の下になるに従って、空気との反応スピードが速くなる。
・最後の水槽への投入は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムの順。最後水槽が爆発するのは、セシウムを投入したとき。


元素周期表の一番左の列にある物質(第一族元素)、

リチウム (Li)
ナトリウム (Na)
カリウム (K)
ルビジウム (Rb)
セシウム (Cs)
フランシウム (Fr)

はアルカリ金属。ウィキペディア解説より抜粋しますと、

アルカリ金属は、比較的融点も低く、比較的軟らかく軽い金属である。Li、Na、Kは比重が1以下で水に浮く。いずれも反応性は高く、周期表の周期が大きくなるほど、結晶エネルギー(解離エンタルピー)が低減するため、激しく反応する傾向が見られる。

いずれのアルカリ金属元素単体も水、あるいは空気中の酸素と反応する為に、それらを避けるためにミネラルオイルの中に保存される。オイルを拭って放置すると自然発火することもあるので取り扱いは考慮する必要がある(危険物3類)。

放射性であろうとなかろうと、このような物質が体内に取り込まれ、無事で済むとはとても思えません。

しかし、日本保健物理学会は「セシウムには化学毒性がありません」と言います。

このページにある千葉在住の40歳の女性の質問は、

セシウムは体内でカリウムと同位体で、その挙動は筋肉や臓器にいき100日程で排出するとの事ですが、心筋に重金属がたまり放射性物質を出す場合、どのような症状が起こりうるのか知りたいのです。下記PDFをご覧頂くと、これからの日常をグラフで表されていると思います。http://www.icrp.org/docs/P111(Special%20Free%20Release).pdf
例え10Bq/1日でも、上記表ですと体内に1400Bqのセシウムを体内にずっと取り込み続ける様になる訳ですけれども、特に心筋は代謝しづらいのではないでしょうか。そしてそこで放射能を出し続ける訳ですが、その場合重金属としても放射性物質としても働く訳ですから、非常に毒性が高い物となるのではないでしょうか。どうか、ご見解をお聞かせ下さいませ。

それに対する日本保健物理学会の2011年12月1日付けの答は、

セシウムがカリウムと挙動が類似しているのは、同じアルカリ金属類に属する元素であるためです。

セシウムの化学的毒性はほとんどありませんし、純粋なセシウム137の10000 Bqの重量は、わずか0.003μg程度です。人体は数mgの放射性でない安定なセシウム133を保有しており(参考1)、この程度の量のセシウム量では “化学的毒性”は認められないと考えられます。

お示しいただいた、資料(ICRP Publication 111)の21ページのFig.2.2をご覧になっての質問かと存じます。継続的に摂取した場合は、排出の割合と摂取の割合により平衡になる量でほぼ一定となるため、ご覧になったグラフのように、10 Bq/dayの場合は、約1400Bq程度で一定となっています。

被ばく評価をする際は、各臓器・組織ごとに等価線量を評価いたしますが、ICRP等では、心筋と他の筋肉を別に評価するようには勧告しておりません

特に心筋で代謝しづらいのかどうかはわかりかねますが、1400 Bq程度のセシウム137が常時体内に存在していたとしても、既に人体に含まれている安定なセシウム量を考えると、人体への影響は無視できる程度と考えます。

(参考1)
John Emsley, “Nature’s Building Blocks: An A-Z Guide to the Elements,” Oxford University Press(2011): 山崎 昶 訳, 『元素の百科事典』, 丸善(2003), pp.265-270

どうやら、心筋についてはICRPで別に評価するように勧告していないからしないし、分からない、でも量が少ないので人体への害はないだろう、という見解のようです。

国、学会、専門家総出で、影響は無い、との国民への説得は続きます。

Friday, January 6, 2012

デルテ・ジーデントプフ博士: 「日本国民はシステマティックに騙されている」

ドイツTAZ紙に2011年12月26日に掲載された記事を、”Carnard Plus”ブログさんがドイツ語から日本語に訳して掲載されています。

長い記事ですが、医療、健康以外の話題(前半)で興味深い箇所の抜粋をお出ししてみます。後半は、現地の人々の健康被害について詳細な記載があります。全訳はぜひ”Carnard Plus”ブログでお読みください。

日本政府の対応について: チェルノブイリから学んでいない。世界各国の政府も黙認。(外圧に期待するだけ無駄です。)

「一番ひどいのは、責任者達がチェルノブイリから何一つ学んでいないことです。チェルノブイリ事故よりもさらに規模の大きい福島原発事故に対する対応ぶりには、私は茫然自失としています。日本政府が避難地区を事故に見合った範囲に拡大しなかったこと、女性や子供達を即座に安全な南部に避難させなかったことに対しては、ただただやり場のない怒りを感じるだけです。そうした適切な措置を取る代わりに、国民はシステマティックに騙されてきました。実際の危険に関する情報は伝えられない、あるいは伝えられても誤った情報である。なんという無責任でしょう。これから日本の方々を襲おうとしている健康問題は想像を絶します。しかも政治と原子力産業はそのことを黙認しているのです! 世界中で!

原発被害は増大する:

汚染地域の住民達は 1986年から現在までチェルノブイリ事故と共に生活してきているのです。事故による被害は収束するということを知りません。自然災害と違って、原発事故の被害は時間の経過と共に減少していく代わりに増大していくのです。しかもその期間は今後少なくとも300年間にも及びます。

この「300年」という数字は、環境的半減期についての論文の主張とも一致します。

ベラルーシの高度汚染はモスクワの汚染を避けるための人工降雨のためだった:

チェルノブイリ事故による汚染地域の大部分はベラルーシーにあるのです。当時のソ連邦に降下した放射性物質の70%が当時の旧ソ連ベラルーシー共和国に降り注ぎ、国土のおよそ四分の一が放射能汚染されました。ベラルーシーの国境は原子炉から約15キロの距離にあります。

それだけではありません。事故後、風向きが変わって放射能雲がモスクワに向かい始めたとき、ヨウ化銀を用いた人工雨によって、大急ぎで放射性物質のベラルーシー領域への降下が促進されたのでした。もちろん住民には何も知らされませんでした。五月初旬のよく晴れた日、突然空からべとべとした黄色い雨が落ちて来たと人々は語ります。 このことは長年の間住民に明らかにされず、ただ移住が行われ、指令が出され、人々をなだめすかせるようなことが行われただけでした。計測器は厳重に禁止されていました

移住するのに10年かかった:

ゴメルとモギリョフ両地方は大きな面積が放射能汚染され、約百万人が移住させられましたが、移住を実行するためにはまず大きな都市や区域に家々を建設しなければなりませんでした。ミンスク(ベラルーシー首都)周辺には大きな街が建てられました。新しい住居に移住できるようになるまで、多くの人々は十年間も汚染地域に住み続けなければなりませんでした

金の切れ目が原発事故の終息、『博物館』化:

...おそらく国家予算の半分はチェルノブイリ事故処理のために消えていったと思われます。

とうとうある時期、ソ連時代のような比較的気前の良い措置を実施し続けることは望まれなくなり、また続けることも不可能になったのです。ルカシェンコ大統領がチェルノブイリ事故は収束したものであり、博物館に収めるべき過去の出来事であると発表したのはそのためです。放射能汚染されていたベラルーシーの地域はすべて安全になったと公式表明されました。

...被害者達は幼稚園や学校給食が無料だったり、子供達は特別のヴィタミン剤や保養を受けることも出来ました。保養こそ今でも年に一度受けることが出来ますが、その他の措置はすべて打ち切られてしまいました。ヴィタミンたっぷりの給食もです。被害者達は今でも証明書を所持していて私達に見せてくれますが、実際には価値がなくなってしまったわけです。事故当時の請求権はすべて廃止されてしまったのです。

当ブログでも記事をお出ししましたが、日本では既に原発事故博物館の話があります。移住、避難どころか、福島県の警戒区域内にも住民を返そうという政府の計画は既に動いています。

ああ、事故は日本では終わったんでしたね、野田首相。

Thursday, January 5, 2012

ゲストポスト: 「原発事故、放射能汚染を親しい人と語れない」

当ブログの読者の「ネクタリーナ」さんが、私の英語ブログの海外読者の人たちに是非知らせて欲しい、と寄せてくださった文章があります。それを英語に訳してブログに出したのですが、真っ先に付いたコメントが、「日本語ブログにこれを出せ、同じようにつらい思いをしている人を沢山知っている」、というものでした。それ以降付いたコメントも、自分も同じ経験をしている、周囲の人に言っても誰も取り合ってくれない。そして、「彼女のために、彼女と同じような人々のために、祈っている」。

ネクタリーナさんの了承を得て、原文の日本語の文章を掲載します。

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わたしは四国出身、愛知県在住の専業主婦。夫婦二人暮しです。 
2011年はこれまでの人生観が一変してしまいました。 
原発事故前は、趣味の物づくり・海歩きを楽しんでいました。 
それが3月11日以降、まったく趣味を楽しむ気になれません。 
いつまで健康で生きられるか、明日また何かが起こるのではないかと怯えているからです。 
 
【悲しかったこと】 
●価値観が同じで信頼し合い、仲の良かった夫が変わってしまった。 
原発関連の話をすると、顔色が変わり険悪な雰囲気になります。 
大喧嘩になった時に聞くと「知りたくない、仕事ができなくなるから」と言います。 
夫は仕事を最大限の力でやる人なので、精神的に耐えられないのでしょう。 
恐ろしい情報を知っても夫には話せないので、こっそり泣いて凌ぎます。 

古米などの安全な食品を備蓄をしようとすると、とても嫌がります。 
夫は現在流通している食品は安全だと思っているので、わたしが異常に見えるようです。 
喧嘩になるのが嫌なので、食費が足りなければ自分の貯金で買うようになりました。 
 
夫は汚染瓦礫の広域処理に賛成しています。その理由は「他県で協力しないと被災地だけ 
では処理できないから」です。放射能汚染されているということは考えていないようです。 
わたしはどう考えても間違っていると思うし、情けなくて涙が出ました。 
 
夫は食べ物・飲み物を全く気にしません。 
わたしは必死で食品の安全性を確認したりして調達しているので悲しいです。 
 
 
●故郷の母に汚染食品の危険性を話しても、理解してもらえません。 
わたしのことを「神経質すぎる、めんどくさい」と言います。 
娘よりテレビを信じているので、頭が変になったと思っているようです。 
 

●福島の友人に何度も福島を離れるよう言ったが、聞いてもらえなかった。 
彼はまだ若く独身で健康なので移住可能だと思うが、故郷・家族と離れたくないとのこと。 
考え方が大きく異なってしまった気がして、何を話せば良いかわからず疎遠になってしまった。 
 
 
●妹のこと。 
妹は結婚5年目にして、原発事故の少し前に子供が授かっていました。 
妊娠中、食べ物に気をつけること・マスクをすることなど注意したかった。 
でも妹は原発事故のことは全く気にしてなかったので、わたしが真実を告げることで 
ショックを受けて子供に影響があるかもしれないと思い、結局言えませんでした。 
本当のことを黙っている自分は卑怯者ではないか、とずっと苦しかったです。 
無事に赤ちゃんが産まれたら、プレゼントしようとテディベアを買いました。  
ベアに赤ちゃんを守ってくれるよう毎日お願いしました。 
 
でも7ヶ月目でお腹の中で急に動かなくなり、死産をしなければならなくなりました。 
高齢出産でもあるので、放射能が原因とは限らないということは知っています。
でも、安心して子供を産むことが出来ない国なんて絶対におかしいと思います。 
 
その後、妹から「体が回復したので仕事に復帰した」と連絡が来ました。 
過去よりも未来が大事だと思い、勇気を出して食べ物に気をつけるよう言ってみました。 
それ以来、妹からの連絡は途絶えました。 
母と同じようにおかしくなったと思ったのか、またはショックを受けたのかもしれません。 
結局わかってもらえなかったけど、自分のしたことは後悔していません。 
 
【うれしかったこと】 
●身内・友人にひとりも理解者がなく、ひとりぼっちだったわたし。 
恐ろしいニュースばかりで、事故当時は毎日ひとりで泣いているばかりでした。 
よく見ていた同じ趣味のブログの中で、ひとりだけ原発の記事を書いている人がいた。 
思い切って記事にコメントしたりメールしたりすると、すぐに意気投合して 
その人とその友人と3人で共同で反原発ブログを立ち上げた。 
原発事故後、初めての同志・仲間が出来ました。 
 
仲間の勧めでツイッターを始め、そこでまた何人かの同志に出会った。 
更に勧められてmixiを始め、またたくさんの同志に出会えた。 
今はその仲間達といっしょに脱原発活動をさせてもらっています。 
事故後、ネットでたくさんの同志と繋がれたことが一番うれしかったことです。 
 
【怖いこと】 
●これまでの人生で日本は安全で良い国だと信じてきました。 
それが幻想だったことを知り、とてもショックを受けています。 
原発事故の現状を、東電・メディアなどと共に隠蔽したり嘘で固めています。 
すぐに危険を知らせれば、被曝することのなかった多くの人がいます。 
いまだに福島の子供・妊婦さんは高濃度汚染地帯で暮らしています。 
 
政府は放射能汚染された被災地の瓦礫を全国にばら撒こうとしています。 
市町村の役所の人たちのほとんどは、放射能に関する知識がありません。 
政府は「痛み分け」という言葉で騙して受け入れさせようとしています。 
 
食品の放射能検査をほとんどすることもなく、全国に流通させています。 
安全とする基準値が高く設定されたまま、学校給食にも使われています。 
せめて産地で選ぼうとしても、偽装されていることも多いのです。 
買い物に行くのが怖いです、どれが食べられる物かわからないです。 
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わたしは勇気も行動力も賢い頭もないけれど、妹と産まれてこれなかった赤ちゃんのために 
政府と東電に「一矢報いたい」のです。どんなに些細なことでも。 
 
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海外の皆様へ 
日本からの放射能が海を、そして世界の国々までも汚染してしまいました。 
この事実を知った日本人たちは、とてもショックを受けています。 
とりかえしのつかない酷いことをしてしまいました。
本当に申し訳ありません・・・。

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ネクタリーナさんはこの文にもあるとおり、ネットを通じて知り合った仲間とブログを立ち上げました。こちらです

ネットと、東大の児玉龍彦教授のおかげで、昔からの良い言葉を再認識しました。

「得手に帆揚げて」、または「追手に帆掛けて」

何が自分の得手、追手なのか、実際このような事故でもないと発見できなかったかもしれません。

Tuesday, January 3, 2012

日経新聞;「原発事故を風化させないためにも博物館を」

今日見た記事の中で一番違和感のあったのはこれ。「風化」?まだ事故は続いていると妄想していたんですが。それともこれは、箱物を作ってゼネコンに仕事をまわすという従来の日本の「復興」パターンを踏んでいるにしか過ぎないのでしょうか。

それとも、チェルノブイリは(実際に)事故を収束させてから博物館を作るまで数年以上掛かっている、日本はその上を行こう、とでも言うのでしょうか?つまり、事故も終わってないうちに速攻で博物館を作ってしまう。ソ連に勝ったぞ、とでも。

話に噛んでいるのは福島大学だそうです。

博物館設立は子供たちのためでもあるそうです。

日本の学校授業では原子力発電所の問題について十分教えられていなかった。ところが原発事故で最も被害を受けたのは、放射線の影響が出やすいとされる子ど もたち。特に低レベル放射線量の発がんリスクは未解明な点が多い。福島県の子どもたちは自ら知識を身につけてリスクを理解し居住する「覚悟」が求められ る

リスクを理解したとして、居住しない選択は子どもたちにはどうやらないようです。(あっても子どもが一人で脱出できるわけでもありませんが。)この日経の記者が覚悟して福島で居住なさって、お手本をお示しになってはいかがでしょう。幼稚園児、小学生、中高生に覚悟を求めるのではなく。

日経新聞2012年1月4日記事:

原発事故の博物館を(震災取材ブログ)

東京電力福島第1原子力発電所の事故から9カ月あまり。福島県内で事故に関する資料を集めた博物館の設立を求める声が出ている。原発事故の経緯や写真、住民避難の資料などを集めた博物館で、事故の教訓を風化させないようするのが狙いだ。

博物館の設立に向けて動いているのは、福島大学を中心に構成するベラルーシ・ウクライナ福島調査団。調査団は2011年11月に旧ソ連のチェルノブイリ原子力発電所周辺に足を運び、地域住民による放射能対策や事故を起こした原発本体を視察した。その中でウクライナにあるチェルノブイリ博物館を訪れた。調査団のメンバーである桜の聖母短期大学(福島市)の二瓶由美子准教授は「原発事故の実態を詳しく知ることができる」と話す。

 チェルノブイリ博物館の設立は1990年代。当初は、事故直後の消火活動に携わった作業員を讃(たた)えるメモリアルとして設立されたという。その後、収束作業に使った道具や現場を撮影した写真、原発の模型なども展示。広島や長崎に落ちた原子力爆弾による被害や世界にある原子力発電所の状況なども説明し、人類と原子力とのかかわりも分かる。

福島第1原発の事故を受けて、博物館内には福島に向けたメッセージも掲げられた。天井につり下げた桜の枝に垂れ幕がかかり、日本語で「私達(たち)はあなたと共にいる。傷が癒(いや)されるように祈りを捧(ささ)げている。諦(あきら)めないで!」などと書かれている。

二瓶准教授は「過去を語ることは現在と未来を見つめること」と話す。博物館は歴史を記録するという役割だけでなく、教育としての効果も期待できる。「子供や学生が学んでいくことで、自ら判断して取り組む力がつく」(同准教授)。

 日本の学校授業では原子力発電所の問題について十分教えられていなかった。ところが原発事故で最も被害を受けたのは、放射線の影響が出やすいとされる子どもたち。特に低レベル放射線量の発がんリスクは未解明な点が多い。福島県の子どもたちは自ら知識を身につけてリスクを理解し居住する「覚悟」が求められる。

 博物館設立の中心的な役割を担うのが、福島大が震災後に設立した「うつくしまふくしま未来支援センター」だ。福島大学の清水修二副学長は「国や地方自治体、東京電力にも資料の提供を呼びかけていきたい」と話す。原発事故では多くの周辺住民は避難を求められた。自治体が避難時に作成した資料などはすでに散逸する恐れがある。「なるべく早く立ち上げたい」(清水副学長)。

 日本では事故に関する博物館の重要性は最近ようやく認識されたばかり。事故を忘れ去りたい加害者(企業)などの配慮から思うように進まないケースが多いからだ。1985年に起きた日航機の墜落事故でも設立に20年近くかった。福島県民がかかえる苦労を人類が2度と経験しないためにも博物館の意義は大きい。(竹下敦宣)

博物館の重要性は認識されたばかり??博物館を作るという行為そのものが事故を風化させる、過去のものとして扱うことだと思いますが、福島第1原発の溶けた燃料デブリが一体どこにあるのかも分かっていない状態で博物館を作ってしまおうというのですから、日本はたいしたものです。

Sunday, January 1, 2012

2012年の年頭のご挨拶

新年、あけましておめでとうございます。

なにがめでたいかな、とも考えましたが、こういう時はというか、こういう時こそ、昔からの形式を重視することにしました。そこで、

本年もよろしくお願いいたします。

3月11日の震災、原発事故発生以来、細々と書いていた金融ブログが災害ブログになってしまいました。最初は日本と外国の情報のギャップに驚いてそれを埋めるべく始めたのですが、そのうちにどこからお探しになったのか、ブログをお読みくださる方々、ツイッターでフォローして下さる方々、また、寄付をお送りくださった方々、ご支援どうもありがとうございました。

年頭から憚られますが、残念ながら事故は確実に第2段階、被害拡散時期になっているような気がします。それというのも、その根本原因はもともとの福島第1原発事故がどのようにして発生し、事故が拡大したか、という肝心な事を一般の人々が把握できていないことにあるからです。事故の実態が分からずに被害の実態の把握が出来るはずがない、というのが私の個人的な感想です。事故はもうおきてしまったのだからしょうがない、という意見には私は組しません。

日本語ブログであまり昨年中書かなかったのが福島原発の状態。英語ブログは事故の初期からそちらが主でしたが、日本語ブログでは昨年の半ば以降さほど書いていませんでした。(ほとんど読者がいなかった3月4月は結構書いていたんですが。)これは後悔しています。日本で3号機の爆発ビデオを見たことがない人が結構多いのに驚き、11月(だったと思います)にリンクした1号機内部の映像やCryptomeの原発を撮影した巨大写真を見て、「え、原発事故って終わったんじゃなかったの?」という驚きのコメントが多かったのにも驚きました。

年末には3号機が3月14日、15日の2日にわたって2度爆発していた、という情報が入りました。年末・新年早々には、原発の原子炉建屋に取り付けてある、万が一の事故のときに圧力が逃げるように設置されているブローアウトパネルが、2号機を除いてすべて溶接で閉じられていた、という未確認情報。しかも、それを命じたのは保安院。本来の役目を果たせるようになっていれば、建屋が爆発しなくて済んだ可能性があるということになります。

今年は、やっとぼろぼろ出てくるようになった事故初期の情報にも注目して、何があったのか、これからどうすれば良いのかの判断が出来るような情報を少しでも探してお出ししたいと思っています。