Tuesday, April 3, 2012

「東電、福島の木くず拒否」の読売新聞報道日本語版に欠けていた情報

読売新聞オンラインに2012年4月3日付けで、「東電、福島の木くず拒否…積み上がり発火恐れも」という記事が出ていました。

同じトピックで英文記事が存在し、英語版の読売新聞であるYomiuri Dailyに4月4日付け記事として出ています。記事の3分の2ほどは、文章の順序が日本語と多少違うものの内容は同じものをカバーしています。ところが、英文記事の後半の3分の1に、日本語の記事にまったく存在しない内容が出ています。

福島第1原発事故から13ヶ月になろうとしている現在でも、事故当初の1、2ヶ月と同じように、英語と日本語で同じ新聞社でも出す情報が違う、ということをまだやっているのか、それとも読売新聞の紙面では英文記事と同じ内容が出ていたのか、不明です。

まず日本語記事

東京電力福島第一原発事故の影響でがれき処理が問題になる中、製材で発生する木くずでも、受け入れを巡り業者が苦境に立たされている。

 一部で高い濃度の放射性セシウムが検出されたこともあって、行き場を失った木くずは福島、栃木両県で計約2万5000トンに上る。業者は東電の火力発電所で燃料として使ってほしいと要請したが、東電は拒否。林野庁などは「風評被害をあおりかねない行為」として、近く東電に受け入れを要請する。

 「このままでは工場の操業がストップしてしまう。廃業に追い込まれる業者も出るだろう」。福島県内の製材業者など約200社で作る県木材協同組合連合会(福島市)の幹部は頭を抱える。

 悩みの種は、木を切り出し、製材する過程で剥がす樹皮。通常は、堆肥や家畜の寝床用に1トン1000円前後で引き取られる。

 だが、原発事故後の昨年8月、林野庁の調査で一部の樹皮から1キロ・グラム当たり最大約2700ベクレルの放射性セシウムを検出。その後は同200~300ベクレル程度に下がり、国の定める堆肥の基準(同400ベクレル)より低くなったが、それでも、毎月4000トン発生する樹皮のうち、引き取ってもらえるのは4分の1程度だ。

 連合会によると、現時点で計2万トンが業者の敷地内などに仮置きされている。圧縮しても高さ4~5メートルほどに積み上がり、発酵して発火する恐れもあるという。同様の問題は隣接する栃木県にも及び、3月時点で十数業者の抱える計約5000トンが処理できない状態だ。


そして、英文記事にだけ存在する箇所:

まず、「県木材協同組合連合会(福島市)の幹部」の方のお名前: ムナカタ・ヨシアキさん

そして、

The association came up with the idea of using the wood chips as fuel to generate thermal power. Chugoku Electric Power Co. began power generation by burning coal and wood biomass such as bark simultaneously in 2005. Since then, other utilities have followed suit and TEPCO had also planned to start from this fiscal year.

[県木材協同組合]連合会は木くずを火力発電の燃料として使うアイデアを思いついた。中国電力は2005年、石炭と木の皮などの木質バイオマスを同時に燃焼して発電を開始した。以来、他の電力会社も同調し、東電も本年度から同様に発電を開始する計画だった。

The association said it asked TEPCO to take the wood chips on four occasions between October and February, but the requests were declined.

連合会によると、昨年の10月から今年の2月にかけて4回、東電に木くずを受け入れるように要請したが、そのつど拒否された

TEPCO initially told the association that using the wood chips to generate thermal power is technically difficult. But the utility later changed its rationale, saying such a measure is difficult to be taken at the moment because burying ash that contains radioactive cesium requires consent from local residents.

東電の連合会に対する当初の説明は、木くずを火力発電に使うのは技術的に難しい、というものだった。しかし、その後、放射性セシウムを含む灰を埋め立てるのには地元住民の同意が必要であるため、そのようなことを行うのは現在は難しい、という理由に変わっている

According to the Forestry Agency, the density of radioactive cesium in ash from burned bark is about 30 times higher than that of bark before incineration. But the radiation level for the bark ash is expected to be less than 8,000 becquerels per kilo-gram--an allowable level for landfill.

林野庁によると、樹皮を燃やした灰に含まれる放射性セシウムの濃度は、燃焼前の樹皮に含まれる濃度の約30倍になる。しかし、樹皮を燃やした灰の放射能レベルは、処分場に埋め立てが可能なキロ当たり8000ベクレル以下になるものと予想される。

Officials of the Forestry Agency and the Natural Resources and Energy Agency view TEPCO's refusal as an act that goes against the purpose of the special law requiring the utility to cooperate in antiradiation measures. The agencies therefore plan to ask TEPCO to take in the bark, the sources said.

林野庁と資源エネルギー庁は、東電の拒絶を、東電が除染対策[だと思う]に協力することを求めた特別措置法の目的に反する行為だと見ている。関係者によると、両庁は東電に木くずを受け入れるよう要請する予定とのことである。

Meanwhile, a TEPCO spokesperson said the refusal is due to concern over a stable power supply.

一方、東電のスポークスマンは、木くずの拒否は安定電力供給についての懸念によるものだ、としている。

"If we don't have clear prospects for disposal of the [bark] ash, that would affect operations of our power stations," the spokesperson said.

樹皮からの灰の処分についてはっきりした目処が立たないと、発電所の運転に支障が出るからです。」

樹皮を燃やすとセシウム濃度が30倍になる、と日本語の記事に書けないのでしょうか?

読売の記事によると樹皮のセシウム量は一時より下がって「300ベクレル」ですが、これが灰になって濃度が30倍になるとすると、キロ当たり9000ベクレルとなり、環境省が勝手に全国基準にしてしまった通常埋め立て基準8000ベクレルを軽く超えます。

(ちょっと待った。下がって、と言うけれど、セシウム137の半減期は30年、1年で2700ベクレルのものが300ベクレルに下がるわけが無い。つまり、取ってくる場所が違っているだけでしょう。)

今年の3月27日に林野庁が発表した木質ペレットの燃焼試験結果では、広葉樹樹皮から作ったペレットのセシウム濃縮は20倍以下になっていますが、検体はわずか2検体。(ちなみに、他の木質ペレットの濃縮度は100倍から200倍、最高は243倍です。)読売が根拠とした林野庁の資料は、ざっと見た限りなのでまだ見つけていません。(ご存知の方お知らせください。)

ちなみに、林野庁のウェブサイトには、(樹皮の付いた)薪を燃やすとセシウム濃度が182倍になる、と書いてあります。林野庁では、8000ベクレルを超えないために、薪の放射性セシウム濃度をキロ当たり40ベクレル、としています。この濃縮度を福島の木くずに当てはめると、300ベクレルの182倍で5万4600ベクレルとなり、埋め立て不可能の濃度になります。今年の2月、福島産の薪を使っていた沖縄の飲食店で、使用後の灰からキロ当たり4万ベクレル近いセシウムが出ています。

また、放射性セシウムを含む灰を埋め立てるには地元の住民の同意が必要、と言うのも、書けないのでしょうか?英文の当該段落では、埋め立てるベクレル数は明示していません。

さて、この件では、東電がんばれ。木くずを引き受けるだけならともかく、火力発電所で焼却させられたら、付近の住民は堪ったものではありません。

とりあえず福島第1原発の敷地に仮置きするくらいは出来そうですが。

また、ツイートで出しましたが、読売英語記事を読んだ英語ブログ読者から、

細野が東京都知事を連れて、メガホンを持って東電本社に行き、「(木くずを)焼却して福島の復興を助けましょう!」と叫ぶパフォーマンスが見られるかね、まあ無理だろうが

とのコメント。(見たい。)

1 comment:

  1. > 細野が東京都知事を連れて、メガホンを持って東電本社に行き、「(木くずを)焼却して福島の復興を助けましょう!」と叫ぶパフォーマンスが見られるかね、まあ無理だろうが

    私もぜひ見たいです(笑)

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