Wednesday, June 27, 2012

またも伝言ゲーム?:「4号機タービン建屋南側の土壌改良作業写真」→「4号機原子炉建屋南西側の土壌はこれ以上建物の重量を支えられない証拠」


東電6月26日発表「写真でお示しする福島第一原子力発電所の現状」の中に、4号機南側の土壌改良作業の写真が2枚出ています。これが、「4号機建屋の土壌があまりにやわらかく建物の重量に耐えられないのだ」ということになって、英語サイトに載って広まっているようです。それが日本語で紹介され、4号機原子炉建屋が傾いている証拠だ、という印象になっています。

ああまたか。伝言ゲーム。

今回の伝言ゲームも過去のものと同じく、元ネタは日本(東電資料)、これを見て適当に判断して適当に訳した英語が出、それが広まり、その英語が日本に逆輸入されて日本語で紹介される、というパターンを踏襲しています。放っておこうとも思いましたが、特に4号機に関しては(証拠のあるなしにほとんどかかわらず)全世界で「懸念」がいろいろな形で表明されて広まっており、これ以上不必要な煽りはいらない、と思いなおしてポストを出すことにしました。

まず東電の6月26日の資料、「写真でお示しする福島第一原子力発電所の現状」から、⑥と番号の振られた土壌改良作業の写真(資料8ページ目):



これが英語サイトにでて、しかもそこには説明がついており、

『4号機建屋の南西側で土壌改良を行っている。これは使用済み燃料を取り出すための原子炉建屋のカバーの建設のためだと思われるが、地面がカバー構造物の重さにこれ以上耐えられないことを示している。』

ということになっています。

しかし、この写真をよく見ると、おなじみの4号機建屋の水色の壁はまったく見えません。南面、西面を問わず、これが原子炉建屋付近で撮影したものなら、建屋の壁がどこかに写っているはずです。実際、資料には4号機原子炉建屋の写真も入っていますが、土壌改良作業の写真とはどうみても同じ場所ではありません。下の写真は4号機原子炉建屋を南西側から撮影したものです。


そこで、資料をめくって見ると、2ページ目に撮影箇所が番号を振って明示されています。4号機周辺の写真撮影箇所は④、⑤、⑥.このうち④と⑤は原子炉建屋の南西コーナーと西側ですが、土壌改良の写真を撮影した箇所は⑥で、そこが原子炉建屋ではないことが分かります。


⑥は、4号機タービン建屋の南側です

この資料ならびに4号機以外の作業場を含む大判の写真は東電サイトでご覧になれます。

4号機原子炉建屋を覆うことになる鉄筋構造物は燃料取り出し用のクレーンの取り付けに耐えうる強度が必要となるため、1号機のように合成布のカバーをかけるだけの構造物とはわけが違います。土壌改良を行う場所には現在何も建造物が建っていません。そのようなところに原子炉建屋と同じ高さの鉄筋構造物(高さ地上53メートル)を建設するのに、地面の上にさっと建てられるわけもありません。基礎工事は原子炉建屋と同様とまでは行かなくても、入念に行うのが当たり前でしょう。

更に、4号機原子炉建屋前の地面についてですが、原子炉建屋は地下2階まであるのをお忘れなく。地面と同じレベルは建屋地上1階部分。この下に、2階分の鉄筋建造物が埋まっており、その下に更に基礎のコンクリートが8メートル近くあります。

そんな瑣末なことはどうでもいい、というコメントはよく英語ブログに寄せられます。どっちにしたって4号機は傾いている、東電は嘘をつくので信用できない、というのがほとんどワンパターンのコメントです。

私は、瑣末なことを適当に放棄、無視してきた結果が、日本の沿岸にぐるりと原子炉が54基も建設されてしまったことであり、いつの間にか国の借金が国内総生産の230パーセントという、返済ほとんど不能の金額に膨れ上がっていたことでもあると思っています。

東電はどこで作業を行っているのか、どのような構造物を作っていてどのようなスペックなのか、瑣末な、具体的な情報を積み重ねて把握することで、4号機が倒れたら世界が終焉する、というような漠然とした不安を解消できる方もいらっしゃるかと思います。漠然とした不安が具体的な危惧に変わるだけかもしれませんが、何がなんだか分からない不安に煽られるよりはましだと個人的には思います。

東電やもうすぐ東電を実質的に握る予定の政府が、福島第1原発の収束作業で何をどうやって行っているのか、ただでさえ情報は少ないのです。現段階では、福島第1原発の情報を出すのは残念ながら東電だけに限られています。「東電は嘘をつく」、という理由だけでその情報を誤解、曲解して結果的に誤報を流しても、得られるものがあるとは思えません。

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